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婚約破棄から…てか婚約破棄されない。これでは、私のハッピーエンドは?え、道連れって?  作者: 安藤昌益


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手枷足枷?

“なんでこうなっているの?”ルシアは混乱していた。

 手枷足枷されて、馬車の中にいた。“無実の罪で、…ついに”と思いたかったが、隣にやはり手枷足枷されたルイスがいたから、“そんなわけないか。”

「そろそろ手枷足枷を外しましょうか?もう王都を出ましたから。」

 向かい側に座る若い男の士官が、申し訳なさそうに言った。

「郊外に出て、完全に人目のないところで外してくれ。それまでは、このままの方がよい。」

 ルイスが、その提案を断った。

“何言ってるのよ、この馬鹿!”とルシアは心の中で抗議した。

「そうですね。」

“こら、あっさり引き下がるな!”心の中で、また叫んだ。

「ルシア。悪いが、キツいだろうが、もう少し我慢していておくれ。あくまでも、本当に罰を受けたと、国中に思わせないといけないからね、一応。」

 ルイスが、ルシアの方に、心配そうな顔を向けた。“それは、自分だけしてろー!でも、臭わないわよね?”

 その日、ルイスとの生活を始めてから、既に1か月近くたっていた、国王フェリペ9世が久しぶりに、公の場に姿を現した。議会の開催だった。三部会が、国民議会、貴族・僧侶議会の二院制となり、同格となってのスタートだった。国民議会といっても、国民の一部の有産階級だけしか選挙権のないものだし、国民議会が、可決しても貴族議会が否決すれば、法案は通らないし、さらに、国王勅撰議員からなる枢密院が設けられ、隠然とした権限が与えられているから、三部会時代からの進歩は微妙なものでしかないし、中には退歩だ、との非難もあるくらいだった。その反面、貴族議会にも、枢密院にも市民代表が勅撰の形で議員として入っている、少数だが。

「姑息な改革だ!」

との批判があるが、その通りだった。王太子ルイスの執政は、万事が万事、このように姑息だった。祖父、父よりは前進幅が大きいが、時代の動きから見ると、やはり姑息だ、とやはり非難されている。

 二人は、国王の前に手を取り合って進んでいた。

 私的には、ルイスとの生活が始まってからも何度か会っているが、公式の場で挨拶をするのは、卒業式後は初めてだった。もちろん、彼女の身分、長男の婚約者であるから、幼い頃から会っている。“ルイスが、一番親しい男なのよね、困ったことに。”ということを思い出させられた。穏やかな表情しか記憶にないが、今日はひきつったような顔だった。公式の場だし、国王陛下だって緊張するわよね、と彼女は気にしてはいなかった。“ルイスが、婚約破棄したことを知った時は、どんな顔をしたんだっけ?”そんなことも考えた。その辺りの記述も描写も記憶にない。形式な挨拶の言葉の後、突然、後ろから衛兵に押さえられた。ルシアは慌てたが、ルイスが、心配するなと告げたが、あれよあれよという間に、手枷をはめられてしまった。“どういうことよ!”と国王の方向を睨みつけてしまった。立ちあがった国王は、

「レムス王国が、カルタゴ王国と同盟を結んだぞ。お前の失態だ。妻とともに、辺境で謹慎を申しつける!ゴール公爵、王太子夫妻の謹慎地とするため、お前の領地の一部を没収する。二人の様子を、毎日、わしに伝えに来い!この二人を引っ立てろ!」

“まだ、結婚式してないから、妻ではありませんわー!引っ立てるのはこの人だけにして下さい~!”と心の奥底では叫んでいたが、転生後、18年以上の自己鍛錬の結果か、背筋を伸ばして、堂々とした態度で王太子と並んで歩んでしまっていた。

「さすがに公爵家の令嬢。王太子妃として、恥ずかしくない態度。」

 色々な感情、意図が錯綜しながら、あちこちで囁かれていた。

「王太子様が、どうしても婚約破棄は嫌だ、妻にすると言ってきかなかったとか。」

「あら、ルシア様が王太子様以外とは、絶対結婚しない、自害すると泣いて迫った、と聞きましたけど、私は。」

“誰だー、そんなデマを!私はそんなことしてもいないし、言ってもいないー!”

 これも、心の中で叫んでいた。

 唖然としている間に、地下牢に連れて行かれてしまった。足枷までつけられて放り込まれた。まさに、その言葉どおりの地下牢だった。湿って、汚れた土壁、お世辞にも清潔とは言えない状態、ジメジメとした感じ。謹慎地への馬車の準備ができるまでの間だということだった。実際、2時間いただけだった。その間に、“もよおしたくなったのよね。あんなところでは、そうなりますわよ!絶対!”と自己正当化を心の中でしていた。

「絶対、こんな地下牢、廃止いたしましょう!文明国に相応しくはありませんわ!」

 苦しみをそらすために唐突に言ったりした。

「そうだね。君の提案だと、明記するようにしておこう、議会にだすときには。」

 ルイスは、戸惑いながらも、面白そうに笑って答えた。しかし、すぐに我慢の限界が近いことを感じた。ルシアはルイスの方に顔を向けると、

「ルイス様!後ろを向いてて下さいまし!耳も鼻も塞いで。」

 恐ろしい形相で命じた。はじめは何ごとかと思ったが、すぐに、“非情にも”察してしまった。

「分かったよ。でも、目的の物はそこの桶だよ。叫んでも、しばらくは誰も来ないと思うよ。それから、手枷されてるから、耳も鼻も塞げないよ。」

 “え、え~?そうだわ。手枷で手がつかえない。足枷で動けない。ドレスをたくし上げられない、下の下着を下ろせない。それに…。”

“思い出したくない!”足枷だけ外されて地下牢の外に出た時の彼女は憔悴しきっていた。

 馬車の前で足枷を、またはめられた。

「そろそろ郊外ですし、妃様も…あちらの方が。」

 やはり向かい側に座る若い女士官が言った。

「そろそろいいかな。大丈夫かい、ルシア?また?」

「また?あ~?」

 ルシアは、黒いオーラを覆わせるような表情を向けた。“これ以上口を滑らすと殺されかねないな。”ルイスも慌てて、

「お願いだ。ルシアから外してあげてくれないか?」

 結局、あの桶で、やはり手枷足枷で身動きがままならないルイスの器用な手伝いで、緊急事態を何とか回避できたのである。

“忘れたい、忘れさせたい。なかったことよ。そうよ!なかったことなのよ。”

 心の中で、呪いの呪文のように繰り返していた。




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