整理整頓
「このままではいけないわ!」
王都の王太子邸の一室で、ルシアは頭を抱えていた。一応、本を広げていたが、本は見ていなかった。ルイスは、朝、ルシアの剣の練習相手になってから、政務のため王宮に行っていた。
剣も、銃もサバイバルのために学んだのである。ルイスから、婚約破棄を言い渡されてからに備えてのことだった。それが、今、彼の妻として生活しているのである。彼によって、彼のペースで外堀、内堀を埋められているように思えてならなかった。
「状況を整理しましょう。まずは、整理・整頓してから…。それ、一番苦手なのよね。でも、そんなこと言ってられない。まずは戦略を立てなければ、戦術もないし、そのためには正確な情報が必要性だもの。」
”そもそも、何で私は婚約破棄されるんだったけ。王太子が、イザベルと恋仲になったせいよね。だから、彼女を虐めたことを弾劾されて、追放刑を言い渡される、だったわ。虐めてはいないから、無実の罪よね。でも、そんなことで追放刑なんかないわよね、普通は。判決も、婚約破棄も王太子の一存でできないわよね。森で彷徨っていたところを、近衛騎士に助けられて…、彼は私に同情して追ってきたのよね、そして一目惚れ。そして、アンダルシア公のところで保護されて、彼にも一目惚れされ、それから、レムス王国に落ち延びて、アンダルシア公に届けられてレムス国王に対面、一目惚れされるのよね。魔王、勇者、賢者もありだけど、ここではそれはなしといったところかな。まあ、ともあれ、あんな弾劾は同情されるわよね。アンダルシア公は、私を何故、レムス国王に。ああ、代々私の家は、レムス国王と関係が深かったからね。“
“それから、レムス王国とコリントスは、戦争をを始めるのよね。どういう理由で、始めたんだっけ?え~と、そうだ、国内の不満をそらすためだったわね?あの二人、滅茶苦茶していたから…、ん、滅茶苦茶?う~ん、ルイスは酒浸り、イザベルは贅沢し放題で、財政破綻、国民に重税、国民からは怨嗟の声。自分のお気に入りを貴族に取り立てて、本来の貴族を追放、投獄、処刑、はては、父国王まで暗殺して…、酷い奴らね…、酒浸りくらいで?贅沢といっても、宝石とか豪華なドレス、珍味…だった?”そのくらいで、重税、国民は貧困にとなるだろうか。とにかく、戦いはルシア側の連戦連勝。まあ、国内にはアンダルシア公を中心とした反乱軍、精鋭揃いのレムス王国軍、カルタゴもアテナイ、スパルタも加わっている。近衛部隊、国王の親衛隊も、彼女を愛する近衛騎士の活躍で、半ばが反ルイス側になっているでのだから、勝てるはずはない、ルイスは。そして、ルイスは敗北、断頭台で処刑されて目出度し、目出度しである。考えて見ると、首をひねるところは多い。悪党コンビ、取り巻きを貴族にということが暴政の一つということになっているが、体制固めとしては当然のことだ。“う~ん。取り敢えず、現状把握に移ろう。私が、婚約破棄されないで、王太子妃になっているわけだから…、結婚式はまだだけど。”
婚約破棄されなかった。しかし、“婚約破棄されるりっばな理由はあったわけね。”
レムス王国のカルタゴとの同盟締結の噂は、既に流れていた。これに対する怒りの声は、コリントス国内で高まっていた。カルタゴは、和平を締結したとはいえ仇敵であり、今回の和平条約についても反対の声は強かった。アンダルシア公などは、“屈辱的な条約だ。”“王太子は、勝利を生かす術を知らなすぎる!”と非難をしきりにしている。そのカルタゴとレムス王国は手を結んだのだ。しかも、コリントスは、レムス王国の自国優先の行動に長年にわたって振りまわされてきたが、見捨てることなく支援し続けてきた。レムスが悲願としている豊かなシチリア地方・アッカド地方領有のためには、コリントス側の利益をも抑えて、協力してきたのである。それなのに、コリントスの仇敵と手を結ぶのだから、コリントス国民にとっては怒りのが当然である。当然、そのレムス王国と関係が深く、両国の同盟政策を推進してきたゴール家への風当たりは強い。ゴール公爵は守旧派の渠魁であることもあり、アンダルシア公を、中心に攻撃が激しくなっている。その矛先はルシアにも向けられている、“アンダルシア公め~!あんたは一体なんなのよ~!”
こうなってくると、今さら婚約破棄されても、ハッピーエンドは迎えられそうにない。ルイス王太子に頼るしかないようにも思えてきた。
“しかしよ。”と彼女は、思った。“この国って、フランス革命直前に似ているわよね。財政難で、国内対立は激しくなるようだし、カルタゴ、レムスと戦争になりそうだし。そして、アンダルシア公が改革派、革命派と協力して反乱?形は少し違うけれど、王太子ルイスは破滅?まさか、婚約破棄されなかったから、私とイザベルとのバッドエンドが入れ替わった?大して魅力もない王太子妃なんてどころか、バッドエンドなんて!馬鹿ルイスが、婚約破棄しないから~。こうなったのは、私が子供の頃、運命を話したから?何しているのよ、過去のわたし~!”彼女は髪をかき乱していた。
「私が、改革派、革命派にイザベルとともにいたのだろうか?改革、革命派にいることがバッドエンドということか?」
「どうしたのですか?」
ルイスが慌てて目を開けると、心配そうに見つめる側近の若者の顔があった。
「うたた寝していたか。寝言でも言ったかね?気にしないでくれたまえ。」
極力笑顔で返した。改めて、机の上の書類をよみはじめるルイスだった。




