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隣の恋  作者: Kiroe
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3/6

どんどん縮まる距離

第三話とつにゅーー

クラス替えから一ヶ月が経った。


新学期の緊張もすっかり解けて、私と隣の瀬戸君は、毎日当たり前のように言葉を交わすようになっていた。

前の席の美緒が「朱莉ー!」と全力で振り返って喋りかけてくるおかげで、自然と3人で話す時間が長くなる。


瀬戸君は、話してみると本当に面白い人だった。

遠くから見ていた時はクールなのかなと思っていたけれど、言葉のテンポが良くて、私がちょっとしたミスをするたびに、すかさずクスッと笑えるツッコミを入れてくる。


「あ、間違えた」

「一ノ瀬さん、そこボールペンで書くとこじゃないでしょ。修正テープ使う?」

「うん、貸して……。あ、ありがとう」

「はい。一ノ瀬さんって、たまにこういう細かいところで抜けてるよね」

「う……ただの押し間違いだし」


そんな、本当にちょっとしたやり取り。

プリントを配る時に1枚多く回してしまったり、消しゴムを机の端に置き忘れて落としそうになったり。そんな私の小さな隙を、瀬戸君は見逃さずに拾ってくれる。


めんどくさがり屋な口調のくせに、私がノートを書き写すのが遅れていると、さりげなく自分のノートが見えやすいように位置をずらしてくれたりもする。


ある日の休み時間、美緒が他の席の友達のところへ行って不在のとき。

私は授業の予習をしようとして、教科書のページが上手く開けずにパタパタと指を滑らせていた。


「貸してみ」


隣からすっと手が伸びてきて、瀬戸君が私の教科書を引き寄せた。

彼が器用に目的のページをパッと開いて、私の前に戻してくれる。


「ほら。一ノ瀬さん、手際悪すぎ(笑)」

「悪くないよ、ページがくっついてただけだもん」


いつも通りの言い訳を返しながら、教科書を受け取る。その時、瀬戸君の指先がほんの少しだけ触れた。

その瞬間、なんだか胸の奥がそわそわして、妙に落ち着かない気分になった。


(な、なんか今、変な感じがしたような……。気のせい、気のせい。瀬戸君にペースを乱されてるだけ)


これが恋の始まりだなんて、この時の私はこれっぽっちも気づいていなかった。


そんなある日の放課後。

めずらしく美緒が先に帰ってしまい、私と瀬戸君は2人で帰りの支度をしていた。


「あ、引っかかった……」


カバンのチャックを閉めようとした時、内側の生地を少しだけ噛んでしまった。

無理に引っ張ろうとする私を見て、瀬戸君が「あー、待って、そのまま引くと破れる」と言いながら、手元にすっと手を伸ばしてきた。


「ちょっと貸して。……ほら、こうやって斜めに引けば取れるから」


いつもより少しだけ近い距離。カバンを直す彼の綺麗な横顔が間近に見えて、私は思わず小さく息を呑む。


「はい、どうぞ」

「あ……ありがと、瀬戸君……」


直してもらったカバンを受け取る。

その瞬間、心臓の奥がトクンと妙に大きく跳ねた。


「じゃ、俺、部活行くから。また明日な、一ノ瀬さん」

「うん、また明日……」


手を振りながら教室を出ていく瀬戸君の後ろ姿を、私はしばらくぽかんと見送っていた。


(……何だろ、今の)


胸の奥のそわそわが、彼がいなくなった教室でもまだ消えない。

恋の自覚なんて、まだまだずっと先。だけど、毎日並ぶ半径50センチの距離は、静かに、だけど確実に私の日常を侵食し始めていた。

どうでしたか書いてる私がキュンキュンしちゃう

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