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隣の恋  作者: Kiroe
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初めての笑顔

第2話スターート

「一ノ瀬さん、隣、よろしくね」


そう言って、くしゃりと屈託のない笑顔を浮かべた瀬戸君――いや、前の席の美緒に言わせれば『奏多君』は、私に軽く手を振ると、また前のめりになって美緒との会話に戻っていった。


「っていうか瀬戸さ、そこ私の席のはずだったんだけど! 先生の 座席表の書き間違いじゃないの?」

「いや、そんなわけないじゃん。現実を受け止めろよ美緒」

「やだー! 私、朱莉の隣が良かった! ね、瀬戸、ちょっと私と席換わってよ!」

「断るわ。俺だってここ(一番後ろ)が気に入ってんの」


美緒の無茶苦茶な要求を、瀬戸君は片手でひらひらとあしらいながら、楽しそうにケラケラと笑っている。

美緒は「ちぇーっ、ケチ!」とわざとらしく唇を尖らせると、ガタガタと自分の椅子を180度回転させて、私の机に肘をついた。


完全に、私たちの席を自分のテリトリーにするつもりのようだ。

でも、そのおかげで、私の隣の瀬戸君も自然とこちらの輪に入り込む形になる。


「でもさー、一ノ瀬さん」


不意に、隣から声をかけられた。

ビクッとしてそちらを向くと、瀬戸君が頬杖をつきながら、その綺麗な二重の目で私をじっと見つめていた。


「岡田の相手、1年の時からずっとやってたの? 正直、めっちゃ大変だったでしょ」

「ぶっ! ちょっと瀬戸、本人の前でなんてこと言うのよ!」

「いや、だって事実じゃん。な、一ノ瀬さん?」


瀬戸君は、美緒の抗議を器用にスルーしながら、私に向かって悪ガキみたいに片目を瞑ってみせる。

その仕草があまりにも自然で、そしてやっぱり、噂通り顔が整っていて不覚にもドキッとしてしまう。


けれど、それ以上に。


「あ……ううん、大変っていうか、美緒はいつも賑やかで楽しいよ」

「ほら見たことか! 朱莉は私の最高の理解者なの!」

「へえ、一ノ瀬さんって聖母の生まれ変わりか何かなの? 俺だったら3日でエネルギー切れ起こす自信あるわ」


瀬戸君のその絶妙な返しに、私は思わず「ふふっ」と吹き出してしまった。


1年の時、廊下で見かけていた彼は、いつもお洒落な男の子たちに囲まれていて、どこか遠い存在に見えた。女の子たちから「かわいい」と言われるのも納得の、小動物みたいな愛らしさ。

でも、こうして実際に隣の席で話してみると、彼の言葉はどれもテンポが良くて、クスッと笑えるユーモアに溢れている。


(かわいい顔して、めちゃくちゃ面白い人なんだ……)


「あ、一ノ瀬さん笑った」


瀬戸君が、私の顔を覗き込むようにして嬉しそうに目を細めた。


「よかった。さっきまで顔ガチガチだったから、俺、嫌われてんのかと思ったわ」

「えっ!? ち、違うの、それは……っ」

「ああ、分かった。岡田のパワーに圧倒されてただけか」

「ちょっと、私をオバケみたいに言わないで!」


美緒のツッコミに、瀬戸君がまた声を上げて笑う。

心臓が、今日何度目か分からない大きな音を立てていた。

それは緊張のせいなのか、それとも別の何かのせいなのか、今の私にはまだ分からなかったけれど。


ただ一つだけ確かなのは、これから始まる学校生活が、私の予想を遥かに超えて、とんでもなく騒がしくて、眩しいものになりそうだということだけだった。

第二話どうでしたか奏多君がかわいいですね

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