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星々の旅々ーThe stars of Shitoraー  作者: レモンパンチ
第1章 旅の始まり
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第27話 霧の中で

「シトラさん、そろそろ腹を割って話した方が」


巨体に見合わない素振りでモルフは金髪少女を優しく見つめる。モルフがさん付けするくらいチームはギスギスだ。二人は一向に顔を合わせないどころか、敵意剥き出しで五メートルほど距離を取っている。


「やだね。パスタ女と話しても絶対ろくな会話にならない」


「私も同じ意見ですわ」


今、二人が殺し合っていないのは試験が不合格になるためだ。こんな状態で未知の森林を通って危険極まりないが、三人は何やかんや優秀なこともあり難なく突き進んでいる。ある意味、幸運とも言えよう。


「な、名前くらいは紹介した方が」


「嫌だ」「嫌ですわ」


モルフの耳が垂れてしょんぼり顔になる。


〈スミマセン。オ嬢様ハ人ト付キ合イガ苦手デシテ〉


モルフの近くにフクロウ探索機がモルフにしか聞こえない程度で音量を下げる。


「き、金髪少女さんの探索機も喋るんですね」


〈モ? ソチラノ探索機モ会話スルンデスカ?〉


〈はい。ご主人をサポートしています〉


二機と一人で話し合う。不思議な関係だが嫌悪な雰囲気はそこにない。


〈探索機フォル、デス。ヨロシクオ願イシマス〉


〈同じく探索機ゼナです。お互い主人のサポート苦労しますね〉


〈オ嬢様ノサポートニ苦ハアリマセン。面倒ト思ウコトハアリマスガ〉


「……あれ? 僕、仲間はずれ?」


〈いいえ、モルフが二人の仲を取り持つ必要があります。ゼナとフォルが対話を持ち込むので、あとは任せます〉


〈意見ニ同意。私達ガ何トカシテミマス。アトハモルフ頑張ッテクダサイ〉


「僕そんな大役務まる器じゃないですが。というか絶対責任の押し付けですよね?」


二機は何も言わず二人の方に飛んでいく。モルフは心の中でため息をつくも覚悟を決める。

少しの間、何か会話したあとシトラと金髪少女は睨み合いながら口を開いた。


「……シトラ」


「……ミラですわ」


二人はそれ以上何も言わない。いったい何を話したのか気になるが、それを聞く前に出番だと言わんばかりに探索機がモルフを見つめる。

しかし、モルフは女の心が分からない。男で種族も違うため心も形も異なるからだ。

だが、漢を見せるなら今しかない。


「えーと、二人とも美少女で可愛いですね」


「ふーん、モルフは私とパスタ女のどっちが可愛いの?」


「そ、それは……」


「そうですわね。優劣をつけるならそれも必要ですわね」


地雷を踏んだ。しかも特大で食らえば死ぬレベルの。どっちを選んでも死。かといって曖昧にすればどちらかの弾丸が額に撃ち込まれる。

モルフは冷や汗が止まらなくなり、捻り出した言葉を口にした。


「びゃ、白夜花を飾ればより可愛くなると思います」


言葉を変えれば白夜花を先に取った方が可愛いと言い換えていいだろう。つまるところモルフは保留にしたのだ。または首を締めたと言ってもいいだろう。


「先に取ってきた方が勝ちってことね」


「望むところですわ。もちろん私が勝つのを信じていますわよね? モ・ル・フ」


「はぁ? 私の方でしょ。ねぇ、モルフ?」


傍から見たら美少女二人に囲まれた羨ましい光景だが、当の本人からしてみれば修羅場そのものだ。可愛いは正義。その正義が不幸にならなければだが。



◇◇◇◇



シトラ達から離れて数キロメートルの森林地帯。三人の男女チームが生い茂る森林を進んでいた。


「マジで木、木、木ばっかだな!」


一角の青肌男が感情任せに剣を振るう。残りの二人は同情も仲間意識もない。それも仕方ないだろう。突発的にくじでチームを組まされ、今日初めて顔合わせたのだ。

目標は同じでも敵であることに変わりない。

ヒューマンの男性は痰を吐いて呟いた。


「なんでチーム組まなきゃならないんだ」


「それはこっちのセリフですけど?」


赤肌の女性が怪訝な態度で遠くを見る。

残念ながらこのチームは破綻していた。きっかけがあれば一瞬で瓦解してしまうほどに。


「ふん。可愛げのねぇ異種女が。あーあ、出来ればあの美少女二人のいるチームがよかったなぁ」


ヒューマン男性が思い浮かべたのは銀髪少女と金髪少女だ。その彼女達は宇宙船で目に留まるほど派手に暴れたが、一部の者達には可憐に映ったのだ。それも美がつくほどの少女に。


「あのじゃじゃ馬達のこと? あの二人がいるチームはさぞかしい苦労するでしょうね」


ここにモルフがいたら全く持ってその通りであるとそう叫んでいただろう。


「苦労を差し引いてもあの可愛さは目の保養になる。異種女じゃ分からんだろうな」


「ヒューマンの貞操は分からないわ。それより白夜花を見つけてくれない?」


「ふん。言われなくても見つけてやる。だが、この試験が終わったら覚悟してとけよ」


緑一面に広がる草花を掻き分けて白夜花を探す。だが、それらしい花が見つからず、霧深い奥地に入り込んでいく。


「おーい、先いくなよ」


我先にと先頭を走る青肌男に声をかける。返事は返ってこない。さっきまで大声で喚いていたはずなのに今は静けさが漂っている。


「ヒューマン野郎、青男の足を止めてくれない?」


「命令されなくても止めるつうの」


ヒューマン男性は早足で追いかける。が、いくら追いかけても追いつけず、歩くが走るに変わり青肌男の輪郭を掴もうとする。


「おい足が───」


肩に手を置こうとすると輪郭は解けて霧の中に消えていった。ヒューマンの男性は頭の中が真っ白に染まる。青肌男はどこにいったのか。思考を巡らせて結論を出す前に異種女の意見を聞こうと振り返る。


「異種女、お前の意見……どこいった」


霧の中で一人佇むヒューマンの男性。二人がいることによって多少安心感があったのは間違いない。だが、孤独と未知の生み出す感覚が徐々に男性へと牙を剥き始める。


「っち。探すしかないか」


突っ立っているだけでは現状を解決できないことを知っている。だからこそ行動を起こすべきだと結論付けた。けれど行動が無謀か勇気に変わるかは人によって変わる。しかし、残念ながら男性は前者を引いてしまったが。


「うん?」


男性が気づいた時には遅かった。霧に包まれた森林の中、悲鳴も影も失って地面に沈み込んでいった。

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