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星々の旅々ーThe stars of Shitoraー  作者: レモンパンチ
第1章 旅の始まり
26/31

第26話 三次試験

窓の外に広がる全面緑の惑星。一言で表すなら植物の星だろう。

自転がゆっくりと回るも緑以外の色が見つからない。やがて宇宙船は大気圏を突入し、熱を帯びて空の上に降り立つ。


『ピンポンパンポンニャ。ええ、二次試験を合格の皆様にお知らせニャ。次の三次試験のために宇宙船ホームに30分までに集まるニャ。遅れたら失格扱いになるから気おつけるニャ』


フリュルの放送が終わると通路から足音がぞろぞろと聞こえてくる。


「僕達も行きましょうか」


チェックメイトに追い詰められたボードに齧り付くシトラ。それを見たゼナはシトラの頭の上に乗る。


〈負けですから早く行きましょう〉


「待って。ここから大逆転できる方法を考えてるから」


〈三次試験、失格になりたいんですか?〉


「……前から思ってたんだけどいつ試験終わるの?」


一次、二次、三次……あと何回やれば開拓者になれるのだろう。このまま百まで続いたら阿鼻叫喚する自信がある。


「平均ですが四、五回だそうです。あくまでですが」


モルフは眼鏡を懐にしまい、強面になるも笑顔は忘れない。


「へぇ、よく知ってるね」


開拓者(セトラス)になるために色々調べましたから。でも知識をつけたところで、シトラが助けてくれなかったら死んでましたけどね」


自動ドアを開けてモルフはこちらを見る。


「この恩は必ず返します。だから死なないでください」


そう言ってモルフは宇宙船のホームに向かって行った。少ししてチェスボードを片付けるとゼナが話しかけてくる。


〈恩返し、使えますね〉


「ゼナ、恩返しはものじゃないから。間違ってもそれだけは利用しないで」


〈ならどうして助けたんですか? 偽善ですか? お人好しですか?〉


「私は努力してる人に手を貸すだけ。別に誰にでも優しくするわけじゃない」


私だって選ぶ権利はある。怠けてる、努力しない、他人任せ、人を利用する奴は悲惨であっても助ける義理はない。

モルフはそれらに該当せず必死に生きて開拓者になろうとしていたから助けたまでだ。


「行こっか」


今は同じ目標があっても試験が終われば目的の違う他人同士。私は旅をしたくて、モルフは考古学者になりたくて、結末を辿れば道別れだ。

ちょっと悲しい気持ちもあるけど、良かったと思う気持ちもある。だって一人で旅をしたいし、誰かに縛られるのは性に合わないから。


「げっ」「なっ」


ドアが開いた瞬間、目の前に一番会いたくない奴がゴミを見るような目で視線を合わせた。


「どうしてパスタ女がここにいるのかな?」


「それはこっちのセリフですわ。何であなたが向かい側の部屋から出てくるんですの?」


この大型宇宙船は旅行用の宇宙船である。そのため一人でも多く客を乗せるため、空いた部分は全て部屋にして対面部屋になっているのだ。

そしてたまに対面でばったり出くわし、運命の出会いなんてこともあったりなかったり……


「あの時の恨み晴らしてやる」


「あら、氷漬けになりかけた芋女に言われても威厳がないですわ」


「へ、その口へし折ってやるよ」


修羅場、いや戦場。視線が殺気に変わり銃口が互いの頭に向こうとした時だ。構えていた銃が突如として消え、代わりに大男の茶髪おっさんが現れる。


「いま殺し合うと困るんだよねぇ。三次試験が始まってからならおじさんおっけーよ」


茶髪のおっさんはシトラ達に銃を返して、ニッコリと微笑む。シトラは視線をおっさんに向けて口を開いた。


「あなた誰?」


「俺かい? まぁフライングだがいいか」


乱れた髪を整えて茶髪おっさんは決めポーズをキメる。


「俺は三次試験の審査員を務めるグラハムだ。ちなみに好きなものは酒と胸と尻のデカい女。以後よろしく」


最低発言をかましてグラハムはシトラ達をチラッと見て顔を横に振る。どこを見て横に振ったのか、意識したら負けだろう。


「早く来いよ。でなきゃ失格になっちまうからな」


シトラと金髪少女は睨み合いつつもホームに向かう。二人は良くも悪くもオーラが際立って目立ってしまう。試験に咲く二輪の花として、触ったら死ぬ棘のある花として……



◆◆◆◆



ホームは二次試験を合格した者達で埋まっていた。といっても二次試験の数万人と比べて三十人に減っている。あの迷宮にほとんど飲み込まれたのだろう。

しかし、それを乗り越えたということは精神と能力が桁違いの強者だらけだ。


「ああ、二次試験合格の皆さん。俺が三次試験の審査員グラハムだ。今から三次試験の説明をよく聞けよ」


だるそうにグラハムは欠伸をする。審査員として自覚がなさそうだが、合格者達は誰も口を挟まない。二次試験の二の舞にならないようにか、彼が相当の実力者なのか、合格するため密かに爪を研いでいるのか、それぞれの思惑が交差する。


「今から降り立つのは惑星プラトンって星だ。またの名を『生きる星』つう別名が付いてる。まぁ油断しないようにな」


惑星プラトン。植物が蔓延る世界として有名な星だ。豊かな動植物に自然と一体になれて心が洗われる。また、新たな創薬や未知の動物の発見でも有名だ。

だが、決して欲張って隙をみせてはいけない。悪意も善意も意思も全て飲み込まれてしまう。惑星プラトンは常に生きているのだから。


「時間は明日の日の出が上がるまでだ。それまで君達にはある物を取ってきて宇宙船に戻ってきてもらう。今から画像を携帯に送るから確認してくれ」


ピコンと音が鳴ってシトラはメールを確認する。葉も茎も花弁も全身白い綺麗な花だ。


「じゃあ本題に入るぞ。その画像の花、白夜花を持ってきたら三次試験は合格だ。でも持ってくるだけなら簡単だろ? そこで俺は一つ妙案を思いついた」


酒便を懐から取り出し、ゴクリと飲み込む。

酒飲みの妙案はろくな事がないが、マシなもので頼むと彼ら彼女らは祈った。


「今からくじを一人一つ引いてもらう。で、それに書いてある同じ数字の奴とチームを組んでくれ。あと誰かとくじの交換をしてチームの入れ替えはなしだ。それとくじを取る順番は誰からでもいいぞ」


グラハムはくじ引きの箱を用意する。合格者達は一列に並び、各々くじを引いていく。シトラも同じようにくじを引き、『3』と書かれた紙を持って呼ぶ。


「3の数字の人いますか?」


するとこちらに大柄のモフモフが向かってくる。そして見覚えのある顔に私は思わず目を見開いた。


「モルフだったんだ」


「はい。シトラが同じチームでよかったです。知らない人と組むの不安でしたから」


「私も私も。いや〜知り合いと組めて安心したよ」


見知らぬ他人と組んでギスギスしたら合格できないかもだからね。一人でも知り合いがいたら安心感が半端ない。


「どうやら三人一組なようですね」


モルフが周りを見回し、シトラも同様に見回す。三人一組がそれぞれ何か話し合う姿を見て私は頷いた。


「みたいだね。じゃあ残り一人と仲良く白夜花探しに行こ!」


「そうですね」


コツコツと二人の背後から足音が迫り止まった。もう一人の仲間かなと思い私は振り返るとそこにいたのは……


「な、なんで」


3の紙を持った金髪少女が眉を限界まで曲げて歯を露骨に見せた。


「あなたとチームなんで最悪ですわ」


「それはこっちのセリフだぁ!」


怒りが引き金となり互いに殺意を向けて銃を構える。そして前触れなく周りを巻き込んで彼女達は怒り収まるまで銃を撃ち続けた。


「いいのかニャ?」


どこからともなくフルニャがグラハムの背後に現れる。彼ら彼女らがシトラ達に釘付けるなる中、グラハムはフッと笑い酒瓶を呷った。


「別にいいさ。三次試験は説明した時点で始まってる。まぁ最後まで聞かないやつは知らないがな」


グラハムは子供の喧嘩を見るように笑う。


「ええー皆さん、最後に重要なこと説明するぞ。いま組んでもらったチームで白夜花を最低一つ取ってきてもらう。但しチームの誰かが一人でも死んだらそいつらは不合格だ。だが、他チームを殺して奪うなら別に構わん」


シトラ達の銃撃が止み、顔の熱が全て引いて一言口にする。


「「は?」」


グラハムはニヤリと口の端を上げる。まるでシトラ達が同じチームになるのを知っていたように、敵対している者同士がチーム内で争うのを楽しむように、この悪意に満ちた試験をどう突破するのかを期待するように。


「では俺から最後に一言。決して一人で行動しないように、な」


彼の言葉と同時に三次試験が始まった。

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