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星々の旅々ーThe stars of Shitoraー  作者: レモンパンチ
第1章 旅の始まり
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第17話 二次試験

「見えた。あれが迷宮の星オグドルVIII」


窓の外に広がる青と分厚い灰色の雲に覆われた惑星。緑豊かな故郷の星と違って素朴な星といった印象だ。


「シトラ達、準備はいい?」


「もちろん。ゼナもばっちりだよね」


〈そうですね。ご主人がポップコーンをまだ食べてる点を除けば準備バッチリです〉


頬張ったポップコーンをジュースと一緒に胃袋に押し流し、わざとらしく咳払いする。


「いや〜映画面白かったなぁ。旅のお供に二三枚買ってもいいかも」


「悪くないと思う。でも傑作映画は中々巡り会えないからひたすら映画を見て探すといい」


「へぇー今見た映画以外で面白いのある?」


「私はあんまり映画詳しくない。師匠なら分かると思うけど。あ、でも映画が盛んな惑星知ってる」


「どんな惑星?」


「惑星イヴロス。旅人達からは芸術の星って言われてる。あとは……『始まりの星』だったかな。惑星名は忘れたけど今見た映画はその星の産物」


「ふむふむ、じゃあ旅先で行くならそこがいいかも」


「いいと思う。あとそろそろ着陸する」


開けた岩肌の峠に降り立つ宇宙船。周りは四角いボックスのテントが建て並んで、如何にも調査中の拠点地だと思わせる雰囲気だ。


「二次試験はあの洞窟の奥。何かあればメール送って。すぐ迎えに行くから」


「分かった。ここまで色々とありがとう、ココナ」


「礼を言うなら私。シトラのおかげで私は自分を見つけることが出来た。ありがとう」


私は宇宙船から降りて別れを告げる。名残惜しいそうに宇宙船はゆっくりと空に上って消えていった。


「さて。頑張りますか」


宇宙船を手に入れるために、渇望する好奇心を満たすために、そして旅人さんにもう一度会うために、私は進む。


〈ご主人、この洞窟の奥に大多数の生体反応があります〉


ゼナのレーダーに映ったのは万を超える生体反応。シトラと同じ一次試験を突破した実力者達がそこにいた。石の大扉と大きな空洞に様々な異種族が自分の得物を磨いていて緊迫した空気が漂っている。

筋肉隆々の巨漢、硬い鱗を持つ男性、機械男性や翼を持つ女性等、見れば見るほど少女であるシトラがこの場所にいるのが場違いにも見える。

そのせいかシトラに視線が集まるのも無理はなかった。


(結構見られてるなぁ)


視線を無視するのに慣れているシトラだが、流石に舌をなめずりして見る目は不愉快に感じる。

危害を加えてくるならそれ相応の対応をするまでと、いつでも撃てるよう警戒体勢に入ろうとした時だ。

一瞬だけ銃に目を向けると前にモフっと柔らかい何かに当たる。例えるなら高級羽毛布団にぶつかった感触。

ついその感触に手が伸びてしまう。


「ああん?」


羽毛布団の上から低い唸り声が聞こえる。シトラは目線を上げると犬耳のついた狼顔の獣人がこちらを睨んで見ていた。


「どけ。殺すぞ」


毛が一気に膨らみ私は押し出される。触り心地よかったのに相手はあまり好意的じゃないみたいだ。

他に話しかけれそうな人がいないか探すが、全員ピリピリして話しかけれそうになかった。

しばらくして静寂に終わりを告げる声が近づいてくる。


「えぇ、お集まりの皆さん。こんにちはこんばんは初めましてだニャ」


頭上にふよふよと浮かぶちゃぶ台みたいな浮遊船が降りてくる。猫耳に二つの尾、ヒューマンと獣人を半分に足した黒髪女性がニッコリと新たな挑戦者を歓迎する。


「みゃはヒューマンと獣人のハーフ、そして開拓者の猫又フリュルだニャ。フリュルって呼んで構わないニャ。今回はみゃが二次試験の審査員を務めさせていただくニャよ」


能天気か破天荒か張り詰めた空気を一掃する。

明るい穏やかなオーラに和む者が続出する中、フリュルは笑顔を絶やさず二次試験の説明をしようとした時だ。


「ふざけんな! なんで半端者のてめぇに審査されなきゃならねぇんだ!」


トラの大男が怒りを拳にこめて突き上げる。彼は異種族の血が混じらない純血の獣人だった。種族の誇りを持ち、己が最強と疑わない高潔な存在と自負している。

その傲慢で異種族を見下し、特に獣人ハーフは虫唾が走るほど穢れたものとして見ている。

それに感化されるように審査員に不満を持つ輩が一人また一人と叫んだ。


「高みの見物したいだけだろ!?」「不正してるくせに!」「親しい奴ばっか合格させてる!」「開拓者(セトラス)なんて所詮お飾りだ!」


溜まった鬱憤を晴らす如く奇声を上げる。止まらない連鎖にフリュルは口端を下げた。


「うるせぇな」


途端、浮遊船から彼女の姿が消えて叫び声がポツポツと消えていく。やがてざわめきが訪れると浮遊船に彼女が現れて顔面膨らみ流血するトラの大男を掲げた。


「コイツみたいになりたくないなら黙れ」


彼ら彼女らは黙り頷くことしか出来なかった。

するとフリュルは笑顔に戻り、トラの大男を投げ捨てて話を再開する。


「さてさて、試験の話を再開するニャ! ルールは至極簡単。石扉の向こうにある迷宮から日没までに出口に向かうニャ。でも普通にゴールしたらつまらないニャ。そこで! 迷宮内にある宝箱の中身を最低一つ持ってくることニャ」


宝箱の中身はそれぞれで、何があるか開けてみなければ分からないとフリュルは説明する。


「もちろん、交渉したり、奪ったり、盗んだり、やり方は縛らないニャ。でも何も持ってこなかったり、偽物や宝箱に入っていないものを持ってきたら即失格ニャ。それと一つにつき一人しか合格出来ないから注意ニャ」


彼女の悪意と善意が挑戦者達の思考を狂わせる。


「あと裏ルールとしてみゃを倒せば二次試験合格ニャ。無謀な挑戦者、是非待っているニャ」


闘争に飢えた猫はエアボクシングでいつでも来いと挑発する。


「ではくれぐれも自身の能力を過信せず頑張るニャ!」


合図とともに彼ら彼女らの二次試験が始まった。

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