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星々の旅々ーThe stars of Shitoraー  作者: レモンパンチ
第1章 旅の始まり
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第15話 次なる試験

「死にたい。今すぐ死にたい」


ソファの横で顔を隠すココナを尻目にオズマは和気あいあいと口の端を上げる。

あのあとシトラ達は客室に移動してオズマとココナの馴れ初め話を小一時間聞いていた。


「ココナと最初会った時は狂犬そのものでしたよ。もう手が付けられなくてどう教育してやろうとヤケになってましたね」


相槌を打ちつつテーブルに差し出された客人用の紅茶と菓子を嗜むシトラ。ちなみに銀河系最大企業の出す菓子は最高級に美味い。


「それから……」


「オズマさん、そろそろ次の試験の話してくれませんか?」


口を尖らせ子供みたく不服そうにする。最初会った時と比べてクールで出来る大人のイメージがココナを語る度、親戚のおじちゃんみたく少しずつ瓦解していく。


「もっと話したいのですが」


「そこにいる機械少女の身が持たないと思いますよ?」


ビリビリと変な音を立てるココナ。手当されているはずなのに大丈夫だろうか。


「分かりました。名残惜しいですが次の試験の詳細をお話します」


部屋が薄暗くなるとテーブルに上に立体映像が映し出される。


「二次試験の会場は惑星オグドルVIIIになります。古代の遺跡が多数残る興味深い惑星となっています」


画面を切り替え別の写真映像が映し出す。


「またの名を『迷宮の星』。数々の調査隊が命を落とした危険な星でした。私たち開拓者が何年もかけてようやく降り立つことが出来るようなり、今では一つの試験会場として使っています」


オズマは「ですが」と続けて話す。


「未だ危険が潜んでいますので、命の保証はありません。命欲しさに辞退するのも決して恥ずべきことではありません」


オズマは最後に問いかける。受けるか受けないかを。


「受けます。死にそうになったらすぐリタイアしますけど」


「いいお考えです。二次試験は72時間後に行われますので、それまでにオグドルVIIIに向かってください」


「それなんですけど私、宇宙船なくて……」


「大丈夫です。オグドルVIII行きの大型宇宙船に乗れば12時間程度で着きます」


「えーと、手持ちが心許なくってその」


「それでしたらココナに送ってもらうのはどうでしょうか?」


「いいんですか? 審査員がそんなことして」


「試験ではないので問題ありません。それにココナはあなたと沢山お話したいようですから」


オズマは立ち上がり、客室のドアに近づく。


「試験会場は他言無用でお願いします。誰かに口外してしまったら失格となるので注意してください。では私は仕事があるのでまた」


二人の邪魔をしないため早々立ち去る。いらない配慮にシトラ達は微妙な雰囲気に苛まれた。


「えーと、ココナの好きな食べ物は?」


シトラが何も考えず出た言葉がそれだった。


「……メルトル製の純銀オイル」


「あ、うん。それって私食べれるかな?」


「……ぷっ、ふふふ、機械少女用のオイルをヒューマンが食べたら死んじゃう」


「あ、ははは」


乾いた笑いしか出なくてむず痒い。けど気分は悪くない。


「シトラ、どうして開拓者になろうと思ったの?」


ココナは一度断ったのになぜ気を変えたのか純粋に疑問に思った。


「旅をするためだよ。宇宙船買うお金なくて開拓者なれば色々手っ取り早く手に入ると思ったの」


「動機が不純」


「悪かったね、お金にがめつくて」


「ううん、そんなことない。ちゃんと自分を持っている証拠。私より全然凄い」


「そうかな? じゃあ逆に聞くけどココナはどうして開拓者になったの?」


彼女は視線をチラッと向けて再びソファの肘掛に視線を移す。


「死ぬため。兵器として改造された私は日常の中で生きる意味がない。だから戦場の次に近い死の場所を選んだ」


「けど受かってしまった?」


「そう。開拓者になった私を師匠は価値を与えてくれた。師匠の命令通り機械少女として依頼をこなした。感情のない私にピッタリな職場だった」


彼女はゆっくりと立ち上がりソファに座る。


「でも師匠は哀れんだ。当時の私は分からなかった。けど今になって分かった。師匠は私に生きる喜びを教えたかったんだと思う」


もしそうだとしたらオズマも飛んだお人好しだ。だが事実、彼は貧しい星々を何度も救った救済者とオルバスが言っていた。その実績はコスモス・フロンティアの探索機の事業を任されるほどだから。


「あんまり暗い話すると相手に気を遣わせる。だからこれで終わり」


相手を知るというのはより親密な関係になる行程だ。シトラも敢えて追求することなく、お菓子を頬張り無言を貫いた。

間違えてもお菓子が美味しくて途中から聞き耳を立てた訳ではない。


「私はココナの過去にこれっぽちも興味ない」


「分かってる。シトラは家族でも師匠でも仲間でも伴侶でもない他人だから」


「……? 他人じゃないけど?」


「え?」


「少なくとも友達になれると思ったよ」


「……友達」


錆びて動くことがなかった歯車が僅かに動いた気がした。


「友達ってなに?」


「うーん、対等な関係じゃないかな」


「対等? それってどういったものなの?」


「えーと、それは……」


「教えて、シトラ。知ってること全部」


「ちょ」


ああ、またこの感情。心の底から湧いてくる高揚感にきっとシトラは迷いなくこう答えるだろう。『好奇心』と。


「近い! 離れろ!」


「うぎゃ?!」


ヒューマンとは思えない脚力で仰け反るココナを尻目に物理的にも心理的にも距離を取るシトラであった。

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