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星々の旅々ーThe stars of Shitoraー  作者: レモンパンチ
第1章 旅の始まり
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第14話 勇気

「いやはや、まさか馬鹿弟子相手に勝つとは」


賞賛する拍手で勝者を称える眼鏡ハンサムことオズマが二人に近づく。


「なかなか見応えのある試合でした。でも本来の試験内容と違うのは審査員として失格ですね」


その笑顔に底知れない何かが潜んでいた。シトラは警戒し、ココナは無気力に包まれる。


「本来であれば正規の試験をもう一度受けてもらうのですが、この殺戮兵器に勝った点で大目に見ましょう」


ココナを担ぎ、崩さぬ口元にシトラは恐怖を覚えた。


「シトラさんには次の試験を受けてもらいたいのですが、少々手間が増えたの客室で待っていてください」


オズマはその場を去ろうとする。だがその歩みを止めなければ後悔するとシトラは思った。


「待ってください。ココナをどうするんですか?」


オズマは歩みを止めてにっこりと告げる。


「処分します。この兵器の利用価値はなくなりました」


「……! なんで」


「ああ、シトラさんが勝っても負けても同じ結果になります。ですので気を落とさずに」


「違う! 私が聞きたいのはなんで処分するのかってこと!」


「先ほど言ったはずです。利用価値がなくなったと。元々戦争に使われた兵器にある実用化のために生かしていたのですが、結局それは失敗に終わってしまいました」


商売とは価値がなければ転がっている石と同じだ。たとえ宝石であろうと誰もが価値がないと思えばなんら石と変わらない。


「では私はこれで」


「待ってよ。利用価値がないからって捨てるのおかしくない?」


「私はココナに二つの利用価値を見出していました。一つ目は開拓者として私の依頼をこなすこと。二つ目は受けた依頼を破らないことです」


「二つ破っただけで……」


「たかが二つと思わないでください。信用のない人間を抱えるというのはいつ爆発するか分からない爆弾を持っているのと同義です。それに嘘をつくこの子をシトラさんは信用できますか?」


「……」


「信用とは時にお金よりも勝ります。シトラさんも相手が信用に値するか慧眼を磨いてください」


シトラは顔に下を向けたまま何も言わない。オズマは最後に営業スマイルでもう会うこともない少女に背を向けた。


「……待ってよ」


オズマは後ろを振り返る。


「すみませんが処分は決定事項です。ですが不満があるなら聞きます」


言い負かしならオズマの十八番(おはこ)だ。何がきても論する自負があった。


「確かにココナは信用できない。だって嘘ばっかりつかれたから。でも……信頼はできるよ」


その言葉にオズマは意表を突かれた。


「試合中楽しそうだったから。機械でもあんな笑顔を維持するの無理だよ普通。そんな狂戦士がもう嘘つきたくないって泣きそうに言うんだから信じる他ないじゃん」


「シトラさん、この子は表情をじざ」


「だいたい二つだけってなんなの!? 価値がなくなったから捨てる? 違うでしょ! 価値がなくなっても別の価値を見出せばいいじゃん!」


怒りという名の優しさがぐったりと鉄の塊と化していたココナに火が点る。


「価値価値価値! 目の前にある価値に縛られて視野狭くなってるでしょ!」


先ほど笑顔だったオズマの顔が見たこともない真顔に切り替わる。


「シトラさん、私はどうやらあなたを過大評価していたようです」


温厚な空気が殺気に包まれて冷たく帯びる。

逆鱗に触れたと言うべきか。それとも別のなにかか。


「試験なんでどうでもいい。今ここであなたを処分いたしましょう」


恐怖という名の魔王。逆らったのは間違いだと後悔しても遅い。万全でないシトラはオズマの振り上げた拳を避ける余裕はなかった。


「ま、待って!」


が、オズマから離れてシトラを庇う一人の機械少女がいた。


「シトラは何も悪くない! 私が全部独断でやったこと! だから処分するなら私だけでお願い!」


面と面で逆らったのは初めてだった。

逃げたい気持ちでいっぱいなのに信じてくれたシトラの気持ちを踏みにじりたくなかった。


「お願い! シトラだけは……シトラだけは見逃して!」


感じたことのない気持ちがいくつも込み上げて混ざり合う。今の自分が何者なのか分からない。けれど一つだけ分かることがある。シトラを守りたい。ただその一点だけだ。


「ごめん、シトラ。嘘ばっかついて。こんな私を信じてくれて本当に嬉しかった」


「……ココナ」


「私のこと忘れないで。あなたの思い出になりたいから」


機械少女は飛び切りの笑顔で笑った。涙を流せないことが心残りだがそれでも彼女の思い出として残せるなら本望だった。


「ではお望み通りに」


ココナは目を必死に瞑る。痛覚はないがオズマに握られたら豆腐のように握り潰されて意識がショートするのは間違いない。けど一向に来ることはなく、恐る恐る片目を開けると計ったようにポンと頭を乗せた。


「成長しましたね、馬鹿弟子」


それは子が育つのを見届ける親の温もりだった。想定外の状況に訳が分からず全身硬直してロード中になってしまう。


「シトラさん、私はあなたを過大評価していました。ですが訂正します。あなたは私が思うよりも最高のお人好しです」


もちろんシトラも豆鉄砲をくらい目が点にになる。


「え、わ、私達を処分するんじゃ?」


「あー処分は嘘です。初めて嘘をつきましたが、これほど大変だとは馬鹿弟子の苦労が身に染みました」


「「……は?」」


「いやはや、シトラさんの言葉で初心を思い出しました。価値を見出す……つまるところ付加価値。当たり前すぎて忘れていた自分に処罰を与えたいくらいです」


オズマを最大の賞賛をシトラ達に浴びせる。


「ありがとう。そして一次試験合格おめでとうシトラさん。あなたは私に『勇気』を示すだけでなく、馬鹿弟子に勇気を与えたこと心から感服いたします」


どうやらオズマに試されていたようだ。

それが分かった時、シトラ達が会場を赤裸々に叫んだのは言うまでもない。

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