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PrototypeForce  作者:
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PM7:09 南校舎分階段 半沢吉明


「……っ!よし!」

走りながら、持ってきた銃をベルトの隙間に挿す

ひとまず教室からは脱出できた

後方から追いかけてくる足音が聞こえるが、この距離ならまだ大丈夫

あとは一階まで分階段を下って、南口から外へ―――

「ん?」

何の、音だ?

階段を下り始めると同時に、下の階から響いてくる機械音

この音は、以前どこかで……

「なっ!」

二階の階段と廊下の間に、見慣れない壁が出来ている

「防火シャッター……教員権限の証明証を持ってるのか?!」

慌てて一階まで降りるが、やはり既に防火シャッターは下りきってしまっている

教員権限の証明証の矯正ロックは非常口にも有効、防火シャッター横の扉も例外ではない

となると残された逃走経路は……一、二階間の踊り場の窓三枚のみ

急いで階段を駆け上がる

三、四階階段の踊り場で方向転換をした時、あの少女はまだ教室を出るか出ないかという程度だった

開錠、窓を開けて、外へ飛び降りる一連の動作

若干窓の位置が高く抜けづらいが、ギリギリ間に合わないこともない

足音が近づく、鍵は開いた、窓も開いた

アルミサッシに手を掛けて、勢いをつけてそのまま外へ―――



―――窓の外

広がっていたのは、いつもの景色ではなく

真っ暗な闇

日没のそれとは違う、暖かみの無い、重く、果てしなく深い闇

ただの光の有無だけではない、まるで世界そのものが無くなってしまったかのような、どこまでも混沌とした―――



「っ?!」

咄嗟に身を引いたのと、頭のすぐ上を何かが通過するのは、ほぼ同時だった

転げ落ちる体を、手をついてどうにか立て直す

今のは……っ

「随分と、カンが良いんですね」

「!」

背後からの声に、咄嗟に振り返るまもなく突き飛ばされる

「がぁっ!」

うつ伏せに倒れたせいで、肺の中の空気が一気に押し出された

痛い

起き上がろうとする間もなく両手を背中の後ろに捻り上げられ、そのまま組み敷かれる

首元に何か冷たいものが当たる感触

「あまり誇れることではないんですが、実は私、射撃があまり得意な方ではなくて……こういったものも携帯しているんですよ」

咳き込みながら、横目で二階に続く階段を見る

先ほど頭の上を通り抜けたであろう二、三の鉄針が、階段に深々と突き刺さっていた

あのまま身を乗り出していれば、頭や胸に刺さっていたかもしれない

僕を、殺すつもりだったのか

「今の……君は、能力者か」

「ご明察ですね、その通りです。そういう貴方は、どうやら無能力者のようですが」

ぎり、と

捻られた腕にかかる力が、さらに強くなる

痛い

「っ……」

「動かないで下さい。折角拾った命を、無駄にすることはありません」

命を拾った?

冗談じゃない

命を拾われたんだ、他人の手で殺される為に

僕の不幸も今まで大したものだとは思ってきたけれど、ここまで来ると皮肉ることすら出来やしない

痛い

死ぬのか

行方不明事件の十九件目の被害者として、死ぬのか

僕はここで、殺されるのか

冗談じゃない

自分が運命に抗えない事を、僕は知っている

だからこそ、大きな流れに逆らわないよう、当たり障りのないように生きてきたつもりだ

でも、こんなのは

自分の人生の終わりでさえ、誰かの都合で決められるなんて

こんなのは、いくらなんでも

「……冗談じゃない」

「え?」

冷たい声

まるで最後の懺悔を、聞き流すために聞いているような、そんな声

冗談じゃない

「僕にはまだ……やらなきゃならない事があるんだ」

「……しなければならない、事」

「ああそうさ……お前なんかから見れば、笑っちゃうくらい小さなことだろうけど……」

冗談じゃない

僕はまだあの日の決着を、これっぽっちも着けられちゃいないのに

「僕にとっては、一生をかけてでも、やらなければならない事なんだ」

こんなところで死んでいられないんだ

僕は

あの日のことを、僕はまだ―――


「……間違っています」

「……え?」

先程よりも、いくらか鋭さの無い声で、少女が呟いた

心なしか、ほんの少しだが、腕を捻る力も弱まった気がする

「人を殺めることは、間違っています。違いますか」

何を、いきなり

「……いや」

「どんな理由があろうと、どんな思いがあろうと、人の命を奪うことは、人として、最も恥ずべき行為です。違いますか」

「……いや」

さっきから、何を

何を言っているんだ、彼女は

「物事の善悪の判断ができていても、それを行動で示さないことは、人を殺めることと同様に、恥ずべき行為です」

「……ああ」

首元の冷たい感触が離れてゆく

腰の拳銃が抜き取られ、今度は頭に硬いものが当たる感触

「半沢吉明、今から貴方を―――」

ああ、死んだな

結局、僕の人生はこんなものか

流されるように生きて、誰かの都合で死んで

たった一つ、心に決めた事さえも叶えられずに

まぁいいか、捨て台詞くらいは残してやった

案外それだけでも、幸せだったりするのかな―――

「―――『食人事件』の重要参考人として、逮捕拘留します」

「……え?」

真っ暗な校舎の中

銃声が鳴った

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