12
AM0:00 警察庁公正保安部特別高等警察班班長室 青葉瞳
もしこの世界に悪魔がいるとするなら、何色の服を着ているのだろうか
悪魔らしい暗色、大抵は黒色に落ち着くのが相場だ
だが私はあえて、白という選択肢を選んでみる
理由?
簡単だ
今目の前に、白い服を着た悪魔が座っている
「いつにもまして可愛らしい表情だね、何かいいことでもあったのかい?」
薄暗い電灯
ブラインドの上がった窓
壁一面に敷き詰められた本棚には、無地の背表紙の本が大小様々に収まっている
「……逆神結保安官に関することです」
相変わらず私に背を向けたまま座る男を、私は心底嫌っている
それこそかつての人類が、怪異や悪魔を恐れ、忌み嫌ったように
「へぇ、『帽子ちゃん』が自分から他人に関心を持つなんてねぇ」
針金細工のように華奢な体躯が、ほんの僅かに揺れている
笑っているのか
気に入らない
「今回『食人事件』発生区画内の学園調査に、彼女が独断で介入してきたことについて、今後の処遇を伺うために参りました」
「食人……ああ、そうか。『帽子ちゃん』と彼女は、別ルートで同じ事件を調べていたんだっけ」
そうだねぇ、と
まるで右足と左足、どちらから踏み出すかを決め倦ねているかのような軽さで彼は言う
「別にいいんじゃないかな、不問ってことで」
「……」
予想はしていた
彼の措置は寛大であり常に良心的
保安部ではまるで聖人の話でもするかのように彼を称える者が多い
だからこそ
「彼女の介入は捜査に対する熱意の表れでもあるし、巻き込まれてしまった少年には悪いけれど、手がかりは十二分に掴めたからね」
私は彼を忌み嫌う
その建前の裏に、一体どれだけの人間を犠牲にしてきたのか
「……失礼します」
踵を返して、扉に手を掛ける
「『帽子ちゃん』」
「……何でしょう」
くぐもった声
また笑っている
今度は声を上げて
一体何がそんなに可笑しい
「彼女が『第二能力保有者』であるから、『研究対象として取っておく価値が有る』と言ったほうが、君には納得できるかな?」
「……ッ」
扉を開く
眩しい廊下の照明
気に入らない
一体何がそんなに可笑しい
一体何が―――




