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PrototypeForce  作者:
12/17

10

PM4:30 自宅 向島ゆき


最近、うちの娘の様子がおかしい

「んー……こんなものかなー……」

うっすらと開いた扉の隙間から見えるのは、ベッドまで広がった何かの部品やケーブル、大量のダンボールとビニール袋、放り出された教科書類

中央の回転椅子に陣取る娘は、いつものようにドライバーやらニッパーやらを取っ替え引っ替えし、何かを弄りまわしている

窓を開けていない、ということは、今のところハンダごてを使う予定はないらしい

いたって普通の女子高生の部屋

しかし最近、やはりどうも様子が違うのだ

例えば洋服

以前までなら、普段着はおろか、制服ですらその辺に脱ぎ捨ててあるのが普通であった

別にそれを悪いと咎めるつもりもなかったし、実際一度も咎めたことはない

健全な女子学生であるならば、それくらいのことは普通であろう

しかしここ最近の愛娘の部屋はどうだ

雑巾や手拭いこそ散乱しているものの、その中に袖を通すものは一枚たりとも見当たらない

また、クローゼットと姿見の周りだけは、おかしなことに溢れかえった物の侵食を受け付けないのだ

ほんの数ヶ月前までは、シャツがアイスピックで天井に串刺しにされていたというのに

ここ最近では、とうとう下着類を自分で買いに行くようになる始末

最初にそんなことを言い出した時には、悪い病気にかかったのではないかと、人間ドックに連れて行こうとさえしたりもした

『お母さんの方がいいセンスしてるでしょ。任せるよ』とは、もう二度と言ってくれないのだろうか

他にも気付かないうちにシャンプーの種類が増えていたり、可愛げのあるハンカチがこっそり干されていたり、夜更かしの回数が極端に減っていたり……

そして何より不可解なのが―――

「……そろそろ来てもいい頃なんだけどなー、一体どこに仕掛けたんだろう、吉明の奴……」

『ヨシアキ』という謎の単語を頻繁に発するようになったこと

思えばこの言葉を口にし始めてから、娘の様子がおかしくなり始めたようなのだ

『ヨシアキ』

これは一体、何を意味しているの?

この先娘は、一体どうなってしまうの―――?

「……なーにをくねくねしてるの、人の部屋の前で」

「……え?」

目を開けると、なんと私の娘が、私の前に立っているではないか

きっと今に彼女はこう言うのだ

『今まで隠してきたけど、実は私、私じゃないの』

『本物の私はもういないわ。こんな狭い世界とはおさらばして、もっと広い世界を見て回ってるの』

『今の私はただの代用品。残念だけど、偽物なのよ』

「あああなんてことをっ!!」

「……はい?」

私としたことが、娘の前でこうも取り乱すなんて

「おほン……ねェあられさん。ちょっとお話があるのだけれど、イイかしら……?」

「……なんだか昨日も一昨日もその前も、その芝居がかった口調と咳払いを聞いた覚えが……」

「あああ何てこと!母さんとはもう話もしたくないってことなの?!そうなのね!」

「……なんだかそんな調子で、結局毎回話をしていないような……」

「今まで嫌々私に話しかけていたの?御免なさい、そうとも知らずに私ったら……今までさぞ辛かったでしょう、苦しかったでしょう」

「……」

「こんな母さんをどうか許してね。ううん許してくれなんておこがましいことは言わないわ、どうか母さんを殴って頂戴。強く殴って、たくさん殴って。なんなら蹴ってくれても構わないわ!ああでもどうしましょう、殴ったら手が痛くなるし、蹴ったら足が痛くなってしまうわよね。待ってて、今からお父さんの部屋に行って、乗馬用の鞭を……………

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