↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イベリス (Iberis)    作者: Naoko
3部 ベラ
PR
60/101

          6話 準備

 アリアは、出発する準備をして、イベリスが来るのを待っていた。

ところが到着したイベリスは、出発は明日だと言う。

「これ以上待てませんわ!」とアリアは言った。


 彼は、ラーウスの奥地へ入るのは簡単ではないと言い、旅の行程を説明する。

アリアはそれを聞きながら、

「そんなことはどうでもいいから早く行きましょう」と言いたかった。


 イベリスは、アリアがイライラしてる様子なので、

「姫様、どこでも同じですが、

知らないの土地の奥地に入るのには、十分の準備が必要なのです」と言う。

アリアは、

「エルナトへ行った時は、そんなに難しくなかったでしょう」と不服そうだ。

「それはエルナトだったからです。

あそこへは道路が通っていたので車で行けましたが、我々が行く村へは徒歩で行くしかないのです」

「徒歩!?」


 「しかも、ケフェルト村へ行く道は岩場を通らなければなりません」

「何時間ぐらい歩くのですか?」

「ラーウス人の足で、二日かかります」

「二日も!?」

「それでもいい方ですよ。もっと遠い村もありますから」

「乗り物はないのですか?」

「疲れたらロバに乗ってもいいですが、慣れてなければ長くは乗れないでしょう。

歩く方が楽です」とイベリスは付け加えた。


 「キラルは狙われることが多いので、彼女の家族のいる村も、簡単には行けない所にあります。

道も、一列に並んで行く細さです。

馬も入れません。すれ違うのに、ロバが精一杯です」


 アリアは、ラーウスのインフラ整備について、以前に説明してもらっていたのを思いだした。

ラーウスの人々は、歩いて行き来する。

主要幹線道路に沿った小さな町には車でいけても、それから奥へは歩いて行かねばならないのだ。


 道路は、収穫された薬草を運んだり、地方の町へ物資を届けるぐらいしか使わないので、舗装されていない。

首都のサライは、薬草の積み出しのための貿易の街で、商店街も閑散としていて、

そんな所へ人々が行くのは、必要がある時だけなのだ。

それはラーウス全体が、隠れ要塞の作りになっていたからだった。



 「奥地に入るのに許可がいるのですか?」

従者のユリアンが聞いた。

「許可はいりません。

外国人で、ラーウスの奥地へ入りたがる人はいないからです。

彼らは、サライに住んでいるだけです」

それを聞いたアリアは、顔を明るくした。


 「フロースはサライにいるのかもしれないわ!」

「彼女がサライにいるのであれば、当の昔に、こちらにその情報が入っているはずです」

イベリスがきっぱりと言うので、アリアは肩を落とす

「そうね、そうよね・・・」


 「地図を得るのには許可が必要なので、それは取ってあります。

それから、後で服が届きますので、明日はそれを着て下さい」

アリアは、自分の服装を見て言った。

「わたしの服は、何かおかしいの?」


 イベリスは、初歩的なことだとでも言うように説明する。

「姫様の格好は、まるでジャングル探検でも楽しもうとするかのようです。

その服では、現地の人たちは、好感を持たないでしょう。

むしろ、姫様のお二人の従者たちの方が無難です」


 アリアは、ユリアンとフィアマを見る。

今まで、彼らの服はセンスが無いと思っていたのだけれど、そうでもなかったということだ。



 イベリスは、二人の従者を褒めた後で、言いにくいことを告げる。

つまり、従者たちを連れて行けないのだ。


 彼らは難色を示すのだけれど、

現地人でなければ足手まといになるし、アリアを守るのは、自分でだけで十分だと説明する。

ただでさえ目立つこの一行は、人数を減らさなければならない。

しかも長期になるので、物資を運ぶポーターも雇わねばならず、

収穫時期に入った今は、どこも人手不足で、捜すだけでも大変なのだ。


 それにキラルは、余計な人間がいれば、会いたがらないかもしれない。

それはアリアにとって、最も避けたいことだった。

それでも二人は納得しないので、

イベリスは、フィアマだけでも連れて行くことを同意する。


 「地下鉄に乗って行けるような所ではないということね」とアリアは言った。

それに対してイベリスは、にっこりと笑って答える。

「分かっていただけて安心しました」



 イベリスの説明も終わり、これでラーウスへ行ける心構えもできたと思ったアリアは、

「ベラって、どんな人なのかしら」と聞いた。


 「キラルの弟子としか分かっていません」

「それだけ? 何か他に情報はないの?」


 「キラルの再来と言われているほどですから、かなりの薬草の知識と行動力があるのでしょう。

きっと幼い頃から、野山を駆け巡って生きてきたのだと思います。

彼女は無口で、『キラルからの伝言です』と言って、それを伝えるだけだそうです。

密猟問題に係わっていたので、自分を知られないようにしているようですね。

お互いを良く知っているラーウス人でさえ、

彼女の居場所を突き止めるのは難しいと言っているくらいですから」


 アリアは、ふーっと長い息を吐きながら、

「ベラが、フロースのことを何か知っているといいのだけれど」と言った。

「彼女がフロースを匿っている可能性はありますが、

まあ、会ってみないと分かりませんね。

実際、キラルに会えるかどうかも分からないのですし」


 「え? 分からないの? これからキラルの住んでいる村へ行くのでしょう?」

「キラルに会うのは簡単ではないのです。

わたしもあまり会ったことはありませんし、それは帝国の姫であっても同じです。

帝国の権威は、ここでは通用しません。

もしキラルが拒否すれば、それまでで、ベラは、なおさら、わたしたちに会おうとしないでしょう」

それを聞いたアリアは、かなり落胆してしまった。


 イベリスは、彼女を慰めるように言う。

「とにかく、できることをしましょう。

それにキラルは、姫様が、村へ行こうとしているのを、すでに知っていると思いますよ。

彼女の情報網はかなりのものですからね」


 アリアはそれを聞いて驚き、目を輝かせて言う。

「ではベラに会わなくても、キラルに会えれば、フロースのことを聞けるかもしれないのね?」


 イベリスは、笑顔を見せただけで、それには答えなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。