第七話 莉央の昔話
莉央は隣に座る蓮を見た。
自分とは、ずいぶん違う人間だと思った。だからこそ、こうして一緒にいられるのかもしれなかった。
「そっちは? 龍山来たのはペーパーテストだろ?」
ひとしきり自分の昔話をした蓮が、今度は莉央に話を振った。
蓮は、一般受験という言葉を知らなかった。そういう文化圏の外から来た人間だからだ。高校も大学も、競技の実績を評価されて進学してきた。学力試験を突破するために受験勉強をするというのは、彼にとっては少し縁遠い世界の話だった。
「そう。一般。勉強して入った」
「受験生してたんだ?」
「一応、受験生してた。でも、正直、すごい勉強してたかは怪しい。受験に関係ないプログラミングばっかりやってたから」
莉央は苦笑した。
受験生だったのは間違いない。試験に必要な勉強も、それなりにはしていた。ただ、机に向かっている時間の大半を受験対策に費やしていたかと聞かれると、答えに困る。気がつけばプログラムを書き、気になったことを試し、動作を確かめている。彼女にとっては、そちらの方がよほど夢中になれることだった。
「一応で龍山に受かるんだから頭良いな」
「いや、そういう話でもないかもね」
蓮は感心したように言ったが、莉央としては素直に受け取れなかった。本人の感覚では、受験勉強を頑張ったというより、好きなことに時間を使いながら、必要な試験をどうにか通過したという方が近い。
「あとは、通信高校だったからね。進学校みたいな空気じゃなかったし。通信の高校生が自作のソフトを持ち寄る発表会みたいなのがあって、そこでウチの教授にスカウトされたの」
「スカウト?」
「うちに来ないか?って」
「なら、推薦?」
「うんうん。別に進学校でもない通信高校でしょ? 推薦の枠なんて用意できなかったみたいで。後日、教授が学校に来て、直接謝られたよ。すまん、枠がないからペーパーテストで入ってくれ。君なら出来るって」
当時のことを思い出したのか、莉央は少し呆れたように笑った。
発表会で彼女の作ったソフトに目を留めた教授は、龍山大学に来ないかと声をかけてくれた。
ところが、いざ入試の話になると、学校推薦の枠がなかった。結局、後になって教授から直接、一般受験を勧められることになったのだ。
推薦で入れるように手配するのではなく、試験を受けて合格してくれと言う。スカウトという言葉から想像する展開とは、いささか違っていた。
「マジか。それで受かるのは凄いな」
「悪い人ではないんだけどね。研究にしか興味がないからおおらか過ぎるのよ」
莉央は、教授を擁護するように付け加えた。
研究者としては優秀なのだろう。少なくとも、発表会で高校生の作品を見て、その先にある可能性を見抜く程度には。だが、入試制度や高校側との調整まで細やかに気を配るタイプではなかったらしい。
もっとも、莉央自身はそのことをさほど気にしていなかった。特別扱いを受けるより、試験を受けて入る方が、彼女にとっては分かりやすかったのかもしれない。
「コロナ禍で通信っていうのは、かえって良かったのかもな」
「それはあるかもね。スクーリングも本格的に始まったのは二年からだったし」
感染症の流行によって学校生活が大きく変わった時期だったが、通信制高校に通っていた莉央にとっては、通学を前提としない学習環境がかえって都合よく働いた面もあった。
もともと、集団生活に強いこだわりがあるわけではない。自分のペースで勉強し、興味のあるプログラミングに時間を使える環境は、彼女に合っていた。
蓮は相槌を打ちながら、隣の莉央を眺めていた。
こうして話していると、同じ大学に通っていても、二人がそこにたどり着くまでの道筋はずいぶん違う。蓮は競技に打ち込み、その実績を足がかりに大学へ進んだ。莉央は好きなことに没頭し、そこで偶然、大学の研究者に見いだされた。
どちらも、自分の得意なものを手がかりに進んできたという点では、似ているのかもしれなかった。
「時間がたくさんあったから、自作でソフト作ってネットで販売したり、ネットでフリーランスみたいな仕事を受注して小遣い稼いだり出来たのが良かった」
莉央にとって、通信制高校の自由な時間は、単なる余暇ではなかった。
自作のソフトウェアをネットで販売し、個人で請け負える仕事を探しては、ちょっとした収入を得ていた。大きな利益を狙うというより、自分の作ったものが誰かの役に立ち、その対価が入ってくることが面白かったのだ。
くだらないソフトでも、安ければ買う人はいる。百円のソフトを百五十人に売れば、手数料を差し引いても一万円程度にはなる。そんな小さな商売を積み重ねながら、莉央は日本国内だけでなく、英語圏のユーザーも相手にしていた。ニッチな需要を見つけ、そこに向けたソフトを作る。プログラミングの腕だけでなく、何を作れば誰が買ってくれるのかを考える経験にもなった。
その中で一番売れたのが、日本に旅行に来るムスリム向けのソフトだった。日本食の写真を撮ると、ハラルに準拠した食べ物かどうかを判定するというものだ。旅行者が食事を選ぶ際の助けになるように考えた、実用性のあるアプリだった。
もちろん、写真だけで原材料や調理工程まで確実に判定できるわけではない。それでも、見た目から候補を絞り込めるだけでも、慣れない土地で食事を探す人には需要があったのだろう。
「スクーリングが始まって、友達も出来た。通信だから校則もなくて、好きな服着て髪を染めたり自由に出来たのが良かった」
莉央は、当時を懐かしむように話した。
通信制高校に通い始めてから、少しずつ同年代の友人もできた。毎日決まった時間に登校し、同じ制服を着て、同じ集団の中で過ごす。そうした学校生活とは違った距離感が、彼女には心地よかったのかもしれない。
「派手な髪は高校から?」
「高校から。一番派手な時はピンクにしたり、ね」
今の明るい髪色も、莉央にとっては特別なことではないらしい。蓮は彼女の頭をちらりと見て、なるほどというように頷いた。
「中学は?」
何気ない質問だった。
けれど、莉央の表情には、ほんのわずかな変化があった。さっきまでの軽い調子が、少しだけ薄れる。
「あんまり通ってないんだよね。中一で事故に遭って、入院して転院してリハビリしてたら中三の年になってたから。一応、中学受験して私立に入学してたんだけど、父親が死んで学費を納めてなかったらしくて除籍になってた」
事故に遭ったのは中学一年生のときだった。
入院し、転院し、長いリハビリを続けているうちに、同級生たちは中学三年生になる年を迎えていた。莉央にとって、その二年間は学校生活の空白というより、病院とリハビリ施設で過ごした時間だった。
父親が亡くなったことで、在籍していた私立中学の学費も納められなくなったらしい。気がついたときには、学校とのつながりまで失われていた。
「除籍?」
蓮が聞き返した。
「そう。中学除籍。危うく最終学歴が中除になるところだった。聞いた事ないでしょ? 中除」
莉央は、冗談っぽく言った。
「ただ、受験してたのは私じゃなかったからね。正直、入学した時の学校は学校名も覚えてない。その頃になると、殆どリョウが表にいたから」
最後の言葉だけが、それまでの話とは異質な響きを帯びていた。
莉央にとって、中学受験も、私立中学への入学も、自分自身の経験としては遠いものだった。書類の上では確かに彼女が入学していたのだろう。けれど、その頃に学校へ通い、周囲の人間と関わり、日々を過ごしていたのは、ほとんどリョウだった。
莉央は、膝の上で組んでいた手をほどいた。指先を見つめたまま、しばらく言葉を探していた。
「あの日、夏になる直前の時期。父親の様子は明らかにおかしかった。目付きがおかしいのは数年前からだったけど、いよいよ何かが決まっていた。それでリョウを呼びつけた」
莉央の声は淡々としていた。まるで、ずっと昔に読んだ本のあらすじを説明するような口調だった。
それでも、彼女の視線は遠くを向いていた。目の前のテラスでは学生たちが笑い合っている。平穏な午後の光景と、これから語られる出来事のあいだには、ひどく大きな隔たりがあった。
「私の体の操縦桿はリョウが握っていたんだけど、私はリョウに話しかけた。明らかに様子がおかしいから行かないでくれって。そしたらリョウは『大丈夫。安心して』と私に言って、そのまま父について行ってしまった」
蓮は口を挟まず、莉央の話を聞いていた。
リョウが身体を動かし、莉央はその内側から状況を見ている。彼女の説明に従えば、ある時から二人はそうして暮らしてきたのだという。
「私は何度も止めた。明らかにおかしい様子の父親だったから。山にでも連れて行かれてナイフで刺殺されるんじゃないかってくらいの雰囲気で、多分、リョウの方がそれを近くで感じてたと思う。父がおかしい。殺されるかもしれない。って言っても、リョウは『分かってる』って私に微笑むだけだった。分かってるなら逃げなきゃ。と言う私に対して『大丈夫。あなたは私が守るから』と」
莉央はそこで一度、言葉を切った。
その台詞を口にするときだけ、声にわずかな変化があった。
リョウは、いつもそう言っていたのだろう。大丈夫。あなたは私が守るから。
それは、父親に怯える莉央が欲しかった言葉であり、彼女の代わりに恐怖と向き合う存在が与えてくれた約束だった。
そして、その約束は、最後まで破られなかった。
「脳の中で会話が出来るのか?」
蓮が尋ねた。
「そう。あの時期の私は殆どの時間を脳の奥で過ごしていて、リョウだけが私の話し相手だった。多重人格の症状で、彼女は私の弱い部分を切り離し、父が私達に求める理想の姿を投影したヒーローだった」
莉央は、自分の中にいたもう一人の自分について語った。
父親の期待に応え、将棋で勝ち続け、恐怖にも動じない少女。聖川広司が娘に求めた理想を体現する存在でありながら、同時に、莉央自身を守るために生まれた存在でもあった。
その二つの役割は、矛盾しているようでいて、莉央の中では一つにつながっていた。
父親が望む完璧な娘になれば、父親を満足させられる。父親を満足させられれば、自分が傷つけられることもない。幼い莉央がそうした理屈を意識していたかは分からない。ただ、彼女の語るリョウは、父親の理想と自分自身の願いを、一つの人格の中に抱えていた。
「リョウは殺される事がわかっていて、ついて行ったのか?」
蓮の問いに、莉央は小さく頷いた。
「そう。彼女は何が起きるか分かっていた。私達の父親の、聖川広司の弱さに気付いていた。だから、聖川が自殺をするとすれば一人で死ぬ勇気はない。だから、私達も殺すつもりだと分かっていたし、殺すとしても刃物で直接刺すような度胸はない。だから、車で事故を起こすつもりだろうって。凄い分かりやすかった」
父親の弱さを見抜いていたという言葉に、莉央は何のためらいも見せなかった。
父親は将棋の天才だった。盤上では誰も思いつかないような手を指し、常識を裏切り、勝負の流れを一変させることができた。けれど、盤を離れた彼は、自分の人生を立て直すことさえできなかった。
莉央にとって、父親の狂気は突然現れたものではない。酒に溺れ、生活が崩れ、目付きが変わっていく様子を、彼女たちは何年も見てきたのだ。
「車に乗り込むと、どうするか作戦会議をした。もし、父親が断崖から飛び降りたら人格を変えるつもりだった。私が泳ぐのが好きで小学校のプールの時間に入れ替わるせいで、リョウの人格は泳いだ事がなかったから」
莉央は、まるで当日の行動計画を読み上げるように話した。
断崖から飛び降りた場合は、自分に身体を交代する。泳ぐことができるのは莉央で、リョウにはその経験がない。幼い二人は、そんな具体的な違いまで考えていたのだという。
死を前提にした作戦会議。その言葉の異様さに比べて、莉央の口調はあまりにも平静だった。
「何かに激突する時はハンドルを切って避けよう。シートベルトを外せばブレーキペダルが踏めるけど、それをするとエアバッグやシートベルトが効かなくて却って自分の死亡率が上がるからやめようって事も話し合った。そもそも、私たちはどっちもブレーキが右か左か分からなかったから、確率の低いことはやめようって。だから、ハンドルを切って助かろうって話し合った」
蓮は、思わず眉を寄せた。
中学一年生の少女たちが、父親の車の中で、衝突したときにどうすれば生き残れるかを話し合っていた。
それは、無邪気な子供の冒険談とはまるで違う。自分たちを殺そうとしているかもしれない父親と同じ車に乗りながら、どうすれば生きて帰れるかを考えなければならなかったのだ。
「『ハンドルを切るタイミングは任せて』ってリョウが言い、そのまま操縦桿を握ってた。『もし失敗したのは痛いのは私だけだからこのまま私が身体を預かるね。貴方は絶対に守るから』って」
莉央は、ほんの少しだけ口元を緩めた。
リョウは、自分が死ぬかもしれないことを理解していた。それでも、莉央を守ると約束した。自分が身体を動かし続ける限り、少なくとも莉央は父親の恐怖に直接さらされずに済む。そう考えていたのかもしれない。
莉央にとってリョウは、単に将棋の才能を持った別の人格ではなかった。
彼女が恐怖に押しつぶされそうになったとき、代わりに前へ出てくれる存在だった。父親の前でも怯まず、危険を見極め、最悪の事態に備えることができる。自分にはない強さを持った、理想の友達だった。
「カッコいいなリョウちゃん。まだ、中一だろ?」
蓮は、率直にそう言った。
感傷に浸るでもなく、悲劇を美談に仕立てるでもない。ただ、リョウという少女の行動に対して、素直に感心したのだろう。
莉央は少しだけ目を伏せた。
「多重人格で作られる人格に性別や年齢の縛りは無いみたい。大人の男性の人格が現れる小さな女の子だっている。彼女は一応、私達の身体の年齢と同じ中学一年生って事にしてたけど、もしかしたらもっと年齢が高かったのかもしれない。リョウは聖川広司が産んだ将棋モンスターだったけど、私が私を守ってくれる理想の友達を具現化した姿でもあったって訳」
父親が生み出した怪物と、自分を守るために生まれた友達。
その二つの説明は、莉央の中ではどちらも真実だった。
リョウは父親の才能を受け継ぎ、父親の期待を一身に背負っていた。けれど、莉央から見れば、彼女は父親のためだけに存在していたわけではない。自分を守り、恐怖を引き受け、最後には自分の命まで守ろうとした存在でもあった。
莉央はそのことを、誇らしげに語るわけでも、悲しげに嘆くわけでもなかった。ただ、そういう存在だったのだと説明していた。
「それで、私達の父親が選んだのはトラックだった。対向車線に巨大なトラックが見えた時、父親の手が震え出したの」
莉央の声が、ほんのわずかに低くなった。
その瞬間の光景は、今でも鮮明に残っているのだろう。対向車線から迫る巨大な車体。ハンドルを握る父親の手の震え。死を決意したはずの人間が、実際に死を目の前にして恐怖に支配されていく姿。
「私は脳内でリョウに止めて!って叫んだ。でも、リョウは動かなかった。父親がハンドルを右に切って車を対向車線のトラックの目の前に飛び出させるのを何もせずに見てたのよ」
蓮の表情から、先ほどまでの軽さが消えていた。
莉央は、自分の声が震えていないことを確かめるように、一度だけ息を吸った。
父親がハンドルを切る。車が対向車線へ飛び出す。衝突までの時間は、ほんのわずかだったはずだ。
それなのに、莉央の説明では、その短い時間の中に、いくつもの判断が存在していた。
「そして、死を覚悟して目を閉じた父親を確認すると、リョウはハンドルに手を伸ばして思い切り左に回した。私たちの乗ってる車は右半分がペシャンコに潰れて父親が即死し、私達も無事ではなかったけど、命だけは守り切れた」
莉央は、そこで一度言葉を切った。
テラスを吹き抜ける風が、彼女の明るい髪を揺らした。蓮は何も言わず、隣に座っていた。先ほどから、彼は一度も話を遮っていない。
「そのあと、私とリョウは真っ暗な闇の中に居た」
事故の直後のことだった。
莉央の声は変わらず落ち着いていたが、言葉を選ぶように、ゆっくりと話し始めた。
「リョウは全身に傷を負ってて死にそうになっていた。リョウの姿が見える訳じゃ無いんだけど、そこに居て、傷ついてるのが分かるっていう感覚。夢を見ているのに近いかもしれない」
実際に目で見た光景ではない。音や匂いがあったのかも、莉央にはよく分からない。ただ、真っ暗な闇の中に自分とリョウがいて、リョウがひどい傷を負っていることだけは、はっきりと感じ取れたのだという。
身体の感覚とは違う、もっと曖昧で、それでいて疑いようのない感覚。夢の中で誰かの存在を確信するのに似ていたのかもしれない。
「彼女はそれでもなお『大丈夫、貴方のことは私が守ったから』と言ってくれた」
莉央は、わずかに目を伏せた。
あれほどの事故に遭ったあとでさえ、リョウは自分のことよりも莉央を気にかけていた。自分がどれほど傷ついているかではなく、莉央を守れたことを伝えようとしていたのだ。
「あの時にハンドルをすぐに切らなかったのは何故? と聞くとリョウは『それだけが生き残る最善手だったから』と答えた。『貴方のタイミングだと頓死してたわ』と笑っていた」
将棋の言葉だった。
最善手。頓死。
死が迫る瞬間でさえ、リョウは自分たちが生き残るための手順を、将棋のように考えていたのだろうか。
莉央には、その判断のすべてを理解することはできなかった。けれど、リョウがハンドルを切るタイミングを見極めていたことだけは分かっていた。早すぎても、遅すぎてもいけなかった。父親の動きを見届け、衝突の直前に動かなければならなかった。
そしてリョウは、その判断を自分の手柄として誇ることもなかった。いつものように、少し得意げに笑ってみせただけだった。
「『限界が来たみたい。私はここでおしまい。貴方に身体を返すわ』とリョウが言った」
莉央の声が、ほんの少しだけ細くなった。
それまで、リョウはずっと莉央の前に立っていた。父親の期待を背負い、恐怖を引き受け、危険が迫れば代わりに判断を下してくれた。莉央が自分ではできないことを、彼女は何でもできるように見えた。
そのリョウが、もう終わりだと言ったのだ。
「私はなんて言っていいのか分からなかった。『ありがとう。楽しかったわ』と言う彼女に待って。行かないで。一人にしないでと泣きつき、リョウの方は『もう一人でも大丈夫。悪魔は私が倒したから』と言って、姿を消した」
「次に私の意識が戻った時、季節が変わって秋になっていた。丁度、九年前の今頃に私は目を覚ました。三ヶ月くらい眠っていたみたい」
話し終えた莉央は、ゆっくりと息を吐いた。
「蓮」
莉央は恋人の名前を呼んだ。
そこで一度、言葉を切る。小さく息を吸い、吐き出すまでのわずかな間に、何かを決意するように唇を引き結んだ。
「聖川広司を殺したのは私達なのよ」
震える声だった。
「莉央」
蓮もまた、恋人の名前を呼び返した。
「俺は、莉央とリョウのしたことを誇りに思うよ」
蓮はまっすぐに莉央を見て、いつものように迷いなく言った。
「リョウに会えるなら、ありがとうって伝えたいな。莉央を守ってくれて、本当にありがとうってさ」




