竜の獣人に逃げられました
今日は初めての外出をしていた。
外出先は私が召喚された神殿だ。
初日は落ち着いて見る心の余裕は無かったが、改めて建物を巡回していると、柱の一つでさえ繊細な装飾が埋め込まれていて煌びやかな建物だった。
ガラス張りの空間に差し込む日差しが明るく、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
ここは王宮からも近い場所にあり、静かな時間を過ごせるスポットとして王宮住まいの者から人気がある場所だとシャルトさんから聞き、二人で来てみたのだ。
外の庭園に繋がる日陰に、丸いテーブル一つとそれを囲むように椅子が三つ並んだものが、三箇所に置かれていた。ここは休憩スペースになっているようだ。
一番奥の一箇所は既に先客の男性が一人で座って読書をしているようだったので、一番手前のテーブルの椅子にシャルトさんと座ることにした。
一番奥の席で本を読んでいる男性の耳が見えた。
人間よりも細長く尖っていることから、恐らく獣人なのだろうと思った。
髪が邪魔をして顔は見えないが、きっとイケメンなのだろうと察しが付いた。
そして、本を読んでいる姿が眩しいほどに美しくて、つい無意識に見つめてしまっていた。
そんなサラは気付かない。
サラの熱い視線が自分の肩口から後ろに向いていることに、シャルトが薄暗い感情を抱いていることに。
ふと、本を読んでいた男性は視線を感じたのか、顔を上げてサラを視界に入れた。
私は本を読んでいた男性と目が合った。
………き、綺麗すぎる!!!!?!!
シャルトさんも綺麗だけど、また別の系統の綺麗さだわ!!
艶がある深い青色の緩く巻かれた長髪、黄色と緑色が混ざり合った宝石のように潤んだ瞳。
距離がある場所からでも分かるほどに異次元のイケメンオーラを放っていた。
彼から視線を逸らせないまま見惚れていると、私の近くの空中にまた突然文字が表示される。
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ポケメン対象【竜の獣人】20歳
知力:89
経済力:75
健康:50
性欲:96
得意技:ピアノ
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出たこれぇぇえええええええ!!
知力も経済力も高い!!
せ、性欲は……み、見てないわよ!?
96なんて見てない、見てない、見てない!!!
遠くから知らない人に、穴が開くほど見られていたことが落ち着かなかったのか、彼は私から視線を逸らして本を閉じた。
そのまま本を片手に持って席を立ち、庭園の方へ歩いて行ってしまった。
彼が歩いて行く後ろ姿を視線で追いながら、まだ私の脳内は『96』の文字が浮かんでいて、知らぬ間に顔を赤くしていた。
「…サラ?さっきから僕以外の男をそんなに赤らめた顔で見ないで下さい!…僕を見て下さい。」
シャルトさんの声ではっと我に返る。
目の前のシャルトさんの瞳が寂しげに揺れていた。
そんな顔をさせていたことに罪悪感を覚えた。
「ご、ごめんなさい…。えっと、その…。」
性欲96に赤面してたなんて言えないいいい!
どうしよう、赤面した理由をどう説明したらいいの?!?!
歯切れが悪い私を見て、シャルトさんの表情に陰りが差した。
「…………。サラ、今日はもう王宮へ帰りましょう。」
普段より低いシャルトさんの声が聞こえ、手首を掴まれた。
そのまま勢いよく立たされて、スタスタと早足で歩く彼に引き摺られるようにして王宮へ帰ることになった。




