第十九話 斬り開かれる道
〜人魔大戦〜
「防衛師団、私のサポートを」
レディアスは“刃のない”大剣を両手で地面に突き刺し、それを中心に無数の魔法陣を展開する。それに続いて防衛師団も自身の剣を地面へ突き刺す。すると、防衛師団の魔力がレディアスに収束しだす。
「〈絶対守護領域〉を展開…」
無数の魔法陣が一つになり、この荒野一帯を包み込むように半透明のドームが形成され、範囲内にいるほぼ全員に薄っすらとだが、青色のオーラを纏わせる。
〈絶対守護領域〉とは、一定範囲内にいる味方への支援だ。効果としては、支援対象へ使用者と同等の防御力の付与、そして受けるダメージと状態異常を全て使用者へ変更するという極めてシンプルなものだ。
しかし、通常の者ならばこの魔法でこの規模では使わない。理由は単純、使用者への負担が大きすぎるからだ。支援者がダメージを受ける程、使用者へダメージがいく。今、レディアスが支援している者は一万を超えるほどの人数だ。その規模の人数のダメージを一心に受けたら普通であれば死んでしまうだろう。
たとえダメージを防げる程の防御力を持っていたとしても、相手が毒や麻痺などの状態異常系の攻撃をした場合、その効果が使用者に襲いかかる。
だが、レディアスが握っている大剣がそのデメリットを克服する。
【守剣:セイ・レーン】
この剣の特徴として…
・この剣には刃がないこと
・この剣ではどんな威力で攻撃したとしても、相手には絶対にダメージを与えられない
・単純に防御力が増加する
・この剣を地面に刺して静止している間、装備者は如何なる状態異常を無効化する
この4つの特徴を持っており、まるでレディアスの為だけに存在しているかのような武器だ。
元々、レディアスは高い防御力を持っていたのだが、状態異常を防ぐ手段がなく、騎士団内では落ちぶれていた。それを少し可哀想に思ったレクシア様が自ら作って渡した物だ。
尚、刃がなく攻撃によるダメージがない事に疑問を持ち、レクシア様にそれとなく聞いた時…
『守剣は守護者であって、命を奪う略奪者ではない……………
やっぱり今の忘れて、ちょっと恥ずかしいから』
頬をポリポリと掻きながら恥ずかしそうにしているレクシア様は割とレアなので、瞬く間に噂が広まり騎士の殆どがレクシア様の作った武器を欲しがってしまった…
だが、レクシア様が自らの手で作った者は神器になる訳で、流石に全員に持たせるのはどうなのか?という事で、神器(レクシア様お手製)は師団長のみに渡される事になった。
他の師団長もそれなりの神器を与えられている。レディアスは自分だけに与えられたこの武器をとても気に入っていた…
〜神話大戦〜
「では、やります…」
剣の女神であるレクサは、この場に居る誰よりも前にいた…否、この場にいる味方全員がレクサからかなりの距離をとっている。
レクサは自身の神器である鍔から先のない剣を左手で握り、右後ろに水平にして下げ、振り抜く体制を維持している。
「〈武装開放〉」
その言葉と同時に、その神器の鍔のすぐ上に魔法陣が展開される。
「〈絶剣:ナノマレコード〉」
レクサが一歩踏み出して剣を振るう瞬間、まるで激流のように大量の刀身だけとなった刃が魔法陣から放出される。その荒れ狂う刃は大地と空を覆い隠す程の魔物へ牙を向く。
魔物達を右から左へと飲み込み、空に群がる強靭な鱗を持つ【竜】を解体し、竜の牙さえへし折る硬さを誇る亀型の魔物【グランドタートル】を喰らい、防御魔法を展開していた【リッチ】を塵に帰し、物理攻撃が効かない筈の【ゴースト】を無慈悲に屠られる。
ゴブリン、オーク、オーガ、その他の魔物達も例外なく刃の奔流に呑まれ、その身を喰らわれていく。
レクサがその剣を振りきった後には、地面を抉りとった斬撃の跡と目指すべき魔王城のみが残った。
【絶剣:ナノマレコード】
それは、刀身を持ち、刀身を持たない一振りの剣。
その刀身は存在し、存在しない…
その斬撃は実体を持ち、実体はない…
それは“斬る”という事象そのもの…
あらゆる者を穿ち、概念すらも斬り刻む…
………要するに、斬れないものは無い(例外あり)
…レクシア様は指パッチンで無効化できる←例外




