第十六話 フィクサー
「姉さん、答えて…本当はこんな事したくないんでしょっ!!」
「っ…お前には関係ねぇッ!!“天界”で大人しくしてろッ!!」
「姉さんっ!!」
クラリスは決して諦めない。自分の最愛の姉が何故こんな事をするのか、姉が折れるまで何度でも問いかける…つもりだった。
背中に何かが突き刺され、鋭い痛みと熱がクラリスに伝わる。
「クヒヒっ」
「…え?」
「…っ!?クラリスッ!!」
背後に突如現れた人物…ラディスは不気味に嗤い、クラリスを蹴飛ばすようにして突き刺した剣を引き抜く。
(体が…動、かない…何で?)
「クヒヒっ、いいねぇ…この力ぁ、この神様は色んな武器が使えるんだぁ…ヒヒヒっ〈神殺しの毒〉を塗っておいたから、もうじき死ぬけどぉ…可哀想だから僕が止めをさし…」
「…消えろ」
ラディスがクラリスへとどめを刺す為に剣を振り上げた…その瞬間、空間を破壊して一気に距離を詰めたザディアに触れられて…ラディスの上半身が消し飛んだ。
「クラリス…クラリスっ!!」
「あ、うぅ…ご、めんな、さい…姉さん…」
クラリスの呼吸がどんどん浅く、心臓の鼓動が弱々しくなっていく…
「駄目だ駄目だっ、死ぬな!!“話が違うッ!!”待ってくれ、お願いだ…私を置いて逝かないでくれっ…」
クラリスは、自身を涙ながらに抱き締めている姉であるザディアの頬を撫でて…優しく微笑みながらその瞳を閉じた。
「ごめん…なさい…」
「あ、あぁ…」
ドゴオオォンッ!!!!!と、突如としてザディア達がいる魔王城の壁が爆破され、そこから3人の女神が現れた。
「クラリスッ!!…テメェ、一体何しやがった!!」
「…アグニフェル、落ち着いて…少なくともザディアがやった訳じゃない。それに…“泣いてる”」
そう言って、レクサはアグニフェルを宥める。
「嫌だ、嫌だ…起きてくれ…」と言ってクラリスを腕に抱きながら揺する…放心状態のザディアと、下半身だけとなった死体を見て、アグニフェルはザディアに対する怒りを収める。
「…これは…神殺しの毒ね、〈多重展開〉〈完全治癒:パーフェクトヒール〉…暫くはこれで大丈夫ね」
最後の人物…魔導の女神:フィーレアは治癒魔法を何重にも施す…次第にクラリスの呼吸と鼓動も安定していく。
「…ザディア、“今ならまだ”戻れるわよ…」
「…駄目なんだ…」
「…何があったのか知らないけど…私達は貴方達を倒して全てを終わらせるわ…」
フィーレアはそう言い残し、魔王城から4人の女神が去った…
「…おい、約束が違うぞ…」
『約束は守っているぞ?“私は”女神に一切の手出しをしないとな…?』
「っ!?ふざけ…」
『ククク…次からは気をつけよう…』
フィーレア達が去った大広間では、巨大な黒い結晶が脈動していた。




