第十四話 動き出す女神達
とある二人の女神は悩んでいた。
「…なぁ、クラリスは…」
「…分かってる、あの子は戦いには参加させない…」
アグニフェルの言葉に、レクサは力強く答える。戦いとは、いずれ訪れるであろう人と魔王の戦いに加えて、女神と女神の戦いがある。
「取り敢えず、“人魔大戦”はどうなるか分からないが、ザディアとの戦いは恐らくこちらが勝つ…と思う」
断言出来ないのは、魔導の女神:フィーレアの権能を破壊した手段がどうしても分からないからだ。フィーレアが油断してやられたという可能性はほぼない筈だ。
フィーレアの権能は自身が知っている事象の操作。つまり、フィーレアですら知らない謎の力をザディアは隠し持っている可能性が高いということで…その可能性がある以上、確実に勝てるとは断言するのは難しい。
そもそも、フィーレアの権能が使えない現状、ザディアの破壊の力に対抗するのは厳しい。と、普通は思うが、アグニフェルにはとある秘策がある。それが明らかになるのはもう少し先の話なのだが…
「もうすぐフィーレアも目を覚ますだろうし…」
権能が破壊された影響で、しばらく意識を失っていたフィーレアだったが、今は呼吸が安定し、いつ目が覚めてもおかしくない。
そうして、二人は長い廊下を歩いていき…クラリスの部屋の前に辿り着く。
「おい、クラリス…返事がねぇな…」
「…部屋の中には…というより、聖都内からクラリスの気配が感じられない…」
二人はまさか…という顔をして、扉を無理矢理開けて入ると、そこには開けっ放しになったテラスと、そのテラスのテーブルには紙が置かれていた。
「『姉さんを連れて帰る』…ったく、あの馬鹿ッ!!」
アグニフェルは壁に拳を怒りに任せて打ち付け、粉々に破壊する。
「…ちょっと?私が支えにする壁を壊して減らさないでくれる?」
冷や汗を浮かべて壁にもたれ掛かっている女性は、引き攣った笑顔をしてアグニフェルに話しかけた。




