第十三話 クラリスの思い出②
クラリスちゃんが、動きます…
あの日から、私はザディア姉さんの後をついて周るようになった。
「今日はどこ行くの?」
「…何処だっていいだろ…」
「ザディア、小さい子にそういう言い方は良くない」
むすっとした顔でそう言ったのは、剣の女神であるレクサ姉さんだった。
「あ?別に私はコイツにどこに行くとか教えてやる義理なんてねぇだろうが…」
「…ハァ…また変な喋り方してる。女の子なんだからもうちょっと…」
「今はそんな事どうでもいいだろうがッ!!」
ザディア姉さんとレクサ姉さんはあまり仲が良くない…レクサ姉さんはただ心配なだけで、嫌っている訳じゃないんだと思うけど。ザディア姉さんはそういうのを鬱陶しいというか苦手そうに…
「いちいち五月蝿えんだよッ!!」
「まだ話は…ハァ」
レクサ姉さんを押し退けて走り出すザディア姉さんを私は急いで追いかける。
「まっ、待ってよ」
「ついてくんじゃねぇ…鬱陶しい」
「あうぅ…」
「な、泣くなよ…ハァ…私が悪かったよ、勝手について来い」
そう言われ、私は服の袖で涙を拭いながら、ザディア姉さんの後をてくてくとついて行く…そうして、あたりが暗くなった頃。
「ふわぁ…」
「…」
そこには、暗闇の中、薄く綺麗な光を放つ湖があった。周りには発光する虫などが飛び回ったり木の枝に止まっていたりと、とても幻想的な光景だった。
感極まっている私の頭を、ザディア姉さんは優しく撫でていた…
現在…
どうにかして、ザディア姉さんを助けないと…このままじゃ、何もかも手遅れになっちゃう。
「それだけは…駄目…」
ザディア姉さんは本気だ、何をするか分からない…もし取り返しのつかない事をしてしまったら、レクシア様は例え自分の創造した娘だろうときっと…だけど。
「今ならまだ、結界の破壊とフィーレア姉さんを傷つけただけで殺してはない…きっとレクシア様も許してくれるよね…」
レクシア様は、誰かを何の理由もなく傷つける事が一番嫌いな事は小さい時から言われてる。
だけど、ザディア姉さんはフィーレア姉さんを傷つけてしまっている…もう、なんの罰もないという状況には持っていけないけど、フィーレア姉さんから許しの言葉さえ貰えれば酷い事はされないはず。
だけど、ザディア姉さんが誰かを殺してしまったら…そのラインだけは絶対に超えさせちゃいけない。
「なんの理由もなく、ザディア姉さんがそんな事をするとは思えないけど…」
ザディア姉さんはちょっと乱暴な所があるけど、本当はとっても優しくて、他の女神達の事を大切に思ってるのはみんな知ってる。
ザディア姉さんが会議室に現れた時、レクサ姉さんは剣の柄に手をかけていたけど、指先が震えてた。レクサ姉さんが本気を出せばザディア姉さんに勝ち目はなかった…それなのに動かなかった。
アグニフェル姉さんは動いていたけど、あの動きからして倒そうとしていたのではなく、捕まえようとしていたのを私は知ってる。
ザディア姉さんが家族ごっこって言った時、みんな辛そうな顔をしてた。だって、みんなは本当にザディア姉さんの事をまだ“家族”だって思ってたから…でも。
「…私は、嘘だって知ってるから…姉さん」
誰に言うでもなく、そう呟いて私は部屋の窓から飛び出した。




