第十二話 クラリスの思い出➀
…貴方には、絶対に忘れたくない大切な思い出がありますか?
それは、ある遠い昔のこと…
私…クラリスは、原初の女神の気まぐれで生まれた。
「は〜い、みんな注目っ!!」
他の女神へ私を紹介する為に、天界に作られた草原へレクシア様に手を引かれて連れて来られた。
「ほら、自己紹介して?」
「え、えっと…その…く、クラリしゅっ」
レクシア(あちゃー…)
アグニフェル(噛んだ)
フィーレア(噛んだわね…)
レクサ(かわいい…)
ザディア(チッ…)
その時はすごく緊張して、思わず噛んで…
「うぅ…もう嫌だぁ〜っ」
恥ずかしさのあまり、私はその場から逃げようと駆け出した…その時。
「あ、クラリス!?」
折角、レクシア様が自己紹介の場を設けてくれたのに、申し訳ないやら恥ずかしいやらで感情がぐちゃぐちゃになって、足がもつれて倒れそうになった…けど。
「…大丈夫か?」
転びかけた私を優しく抱きとめてくれたのは、私とそう変わらない背の頃のザディア姉さんだった。幼いながらも、ザディア姉さんの綺麗な髪や整った顔立ちにカッコいいと思って見つめてしまった。
「…何だよ」
思わず見惚れていると、ザディア姉さんはムスっとした顔をする。
「あ、ありがと…」
「…ふんっ」
何とか絞り出した感謝の言葉に、ザディア姉さんはそっぽ向いてしまう。この時、私はザディア姉さんに嫌われたと思って、途端に目から涙目が溢れ出した。
「うぅ…」
「なっ」
急に泣き出した私に、ザディア姉さんは慌てだした。
「ど、どこか痛いのか?ええっと…」
その反応から、どうやら私の事を嫌っての態度じゃない事が分かった。
(良かった、嫌われてるわけじゃないんだ…)
そう思うと、自然と涙が止まった。
「ザディア、“女の子は”繊細なんだからそうやってツンツンした態度は駄目よ?」
「あ!?私がまるで女に雑な男みたいに言うんじゃねぇッ!?私は女だ!!」
フィーレア姉さんの言葉に、アグニフェル姉さん達も「そうだそうだっ!!」と言ってザディア姉さんのツンツンした態度を批判したけど、ザディア姉さんはフィーレア姉さんが“女の子は”と強調して、まるで自分が男のように言った事が気に食わないらしい。
「あれ、実はザディアは男だった…?」
「おいおいおい…レクシア様が私を作ったんだろ?」
「…そうだっけ?」
「…っ、レクシア様ッ!?何とぼけたこと言ってんだッ!?」
これが、私の大切な思い出…ザディア姉さんと初めて出会った日。




