第十一話 懸念
破壊の女神であるザディアが撤収した後、ゲイル達は会議を再開させた。
「…これで分かっただろ、クラリス」
アグニフェルにそう言われ、クラリスは暗い顔をして小さく頷いた。まだ完全には受け入れられないようだが、理解はしているようだ。
「さっき、ザディアが寄越した手紙の内容を簡単に説明すると、今から1ヶ月後にここに向けて魔族や魔物の大軍を引き連れて攻め込むらしい…ったく、面倒な事をしてくれるな」
「…お前にやるよ」
「…」
そう言って、アグニフェルはクラリスに手紙を渡した。
「取り敢えず、重要なのは向こうの戦力だ。ガルド達は魔族領に乗り込んで魔王と対峙したんだろ?向こうの主力はなんだと予想する」
「主力………分かんねぇ、俺はあんま戦った奴のこと覚えてねぇんだ…」
「…主力は僕達が封印した、魔王:ガイアスかな?あの人は頭がいいというか、狡猾というか…何より敵にしたら面倒だから」
脳筋思考のガルドに代わって、ゲイルが予想を立てる。
「…封印?魔王は討伐したのでは?」
「不安を拭うために、魔王は討伐したってことにされてるけど…魔王:ガイアスは殺しても一定時間経過すると復活するから、仕方なく封印する事になったんだ。この事は僕ら勇者パーティー以外では女神様達しか知らないから…それに、魔族領の結界を破壊できるならあの女神様はきっとガイアスに使った封印も破壊できるだろうからね」
騎士団総師団長であるセンチュリオンの疑問に、ゲイルは苦笑いを浮かべながら答えた。
「となると、こちらもそれ相応の作戦を立てないと駄目だな…作戦会議は明日にして、今回はもうお開きにした方がいいかと、アグニフェル様、レクサ様」
「それもそうだな」
「…そうですね」
剣の女神であるレクサは、クラリスがやはり気になるのか、心配そうに横目でチラチラと視線を送っていた。
「…もう終わったなら、私は帰るわ」
クラリスは俯いたまま、会議室から力なく出て行った。
魔族領:玉座の間にて…
「…おい、お前ら弱すぎだろ、それに傷が癒えるまでどれだけ時間かけてんだ」
ザディアはそう言って、キッと鋭い視線でベネリネ達を見下ろしていた。
「まぁまぁ、そんなにカリカリしなくても良いんじゃない?」
左右で白と淡い青色に別れた髪に執事服を着た女性…ガイアスは、玉座に腰掛けながら顎に手を乗せてそう宥める。
「あ?てめぇは口出しすんな…誰がお前の封印を解いてやったと思ってるんだ」
「えぇ…私が必要だからって、君が勝手に封印を解いたんでしょ?別に私は頼んでないよ〜?」
小馬鹿にしたような口調に、ザディアは機嫌を悪くする。
「そんなにイライラしない…一応、恩は感じてるから少し手を貸してあげてるんじゃん。まぁ、君が私との約束を守っている限りは…ね?」
「ふん…魔王なのに世界を欲しがらずに、たった一人の“エルフ”を手に入れようとか…お前、一体何がしたいんだ?」
「別に?ただ、欲しいんだよ…私のツガイに相応しい彼が…ふふっ♪」
ガイアスは高揚した表情を浮かべて、楽しそうに目を細めた。




