第124話 ≪エルケ
2年ぶりなので どこまで書いたかわからなくなってました笑。エルケとアリシアの子供時代の話の続きからですね。この時はまだレオン殿下は眼鏡もしていない天使ちゃんです。見た目だけは...笑
「あんな...」
ウトウトしかけていたところに 急に近くから呟きが聞こえて、びくりと顔を上げるとわたしのすぐそばに立っていた王宮執事のような服装をした少しばかり白髪混じりの男性が感極まった表情をしていた。
「あんなに柔らかな...、そして幸せそうなご尊顔のレオンハルト殿下は初めてです...っ。」
涙が溢れるんじゃないかと思うほど目を潤ませて声を絞り出すように言うその男に周りの王宮仕えの女性達も目を伏せながらうんうんと泣きそうな表情で嬉しそうに頷いている。
そうなんだ?
あんな豪華な王宮に住んでいると それが当たり前になって幸せなどわからなくなるのだろうか?
「あの菓子を作ったパティシエに王華才勲章を授けてくださるよう国王様にご進言せねばならぬ」とスケジュール帳らしい冊子に高速でメモしようとする執事男に周りの女性達もうんうんうんと頷いた。
いや、うんうんうんじゃない。
王華才勲章とは何かは知らないけど、勲章はわかる。アリシア嬢が喜んだ物事一つ一つにいちいち勲章をあげてたら、この国の人間ほとんどが勲章持ちになってしまう気がする。
止めたほうがいいのだろうが、とりあえず面倒くさいので、周りの大人達を呆れた目で見ていると、ハッとした顔でわたしを見た執事男が慌ててメモ書きに2重線をひいているような仕草をし、周りの王宮使用人の女性達も誤魔化すように目線を斜め上にしながら口元を手で隠した。
レオンハルト第三王子殿下はそんな周りの状況など、まったく気にも止めずひたすらアリシア嬢を真っ赤な顔で見つめたり、かと思うと耐えきれない表情で目を逸らしたりしていたが、意を決したのか、一度両目を閉じて再び開き、やや前のめりにアリシア嬢を見た。
「ガ、ガーラント公爵令嬢...え、えっと 僕、いや私っは、そなたに見せたい物があって。」
レオンハルト殿下がそこまで言うと 遠くからバサバサバサッと何かが空を飛んでくる音がした。後ろ上空を見上げると、鳥...?いや、違う。あれは....本だ。
沢山の本が空中を飛び、こちらへとやってくる。レオンハルト殿下が少し嬉しそうな顔でその本たちを見ているから、おそらく殿下が魔法でこちらへと飛ばしたのだろう。
先程言っていたアリシア嬢に見せたいものはあの本たち?
それにしても 今 殿下は無詠唱だった。
無詠唱であれだけの数の本を 遠くから魔法で引き寄せるなんて...。
規格外の王族が使う魔法に驚いていると、本が一斉にレオンハルト殿下とアリシア嬢の元に集まり落ちてきた。
ギャアギャア!ギャアギャア!!
ピーッ!
「!!」
あまりの量の本がバサバサと落ちてくるのを見て庭園の鳥たちが驚き 翼をばたつかせて鳴き出し、興奮しだした。
「ギャアギャアギャアーー!!」
あぶないっ!
興奮しすぎた大きな白い鳥が 目を赤く威嚇の色に変え羽ばたき、よりにもよってアリシア嬢の背後にすごいスピードで飛んでくる。
キイイィン......
一瞬だった。
レオンハルト殿下の周りに咲いていた氷塊の花たちが、一瞬にして青白く光る無数の氷の矢に変わり、一斉にアリシア嬢の周りを通り過ぎて背後の白い鳥を突き刺したのだ。
白い鳥は氷の矢に射抜かれその姿を氷の彫像のように姿を変えてしまっていた。




