それすらも愛。ーただ眺めていたいだけだったのにー ④
気がつけばもう4月(^_^;)バレンタインの話だったのにホワイトデーも終わってしまったあぁぁ笑。
きっとチェラード先生は皆に平等にお返し渡したんだろなぁ。
「んだよ?じっと見やがって。」
ウィスキーボンボンを食べ尽くしたフィロンは、上目遣いで僕を見ながら、次は小瓶に詰められた球体のチョコレートをつまんで自らの口にぽいぽいと入れていく。
「ああ?俺の言った言葉が あまりに的を射すぎて 心に刺さったかよ?」
ふふん、と笑うフィロンに僕は、いやと首を振る。
「それ。」
僕はにっこりと笑った。
それ、とはフィロンが食べ尽くそうとしている小瓶に入った球体の表面がツヤツヤしたチョコレートの事だ。
「それは教え子達がくれたものではなくて僕がつくったんだよね。美味しそうにたべてくれて何よりだよー。ストックもあるから持ってこようか?」
「は?なっ!?なんだと!?げほっ!」
さっきまで美味しそうにたべていたくせに、何故か彼はおえぇーっとチョコレートを吐き出そうとする。
「おまえが...作ったなんてなんで早く言わねぇんだ!食っちまっただろうがあぁぁ!やべえ!チェラードが作ったなんて!何入ってるかわかんねーもん食っちまった!!うげえぇ...!」
「心外だなぁ。何も入ってないよ?ちょっと愛情入れただけで♡」
「ひいっ!?なっ!何入れやがった!!」
「さぁて、僕もそろそろ研究室に戻ろうかな♡じゃあね。フィロン君♡」
「ちょっ!?待て!!待て!貴様ああぁぁ!!」
喉元を押さえ、片手を伸ばすフィロンにウィンクを飛ばして僕は広間から自身の研究室につながる廊下へと向かう。
パタンと広間の扉を閉めたら、魔法による防音が聞き、僕に解毒剤を作れと吠える傭兵の声は一瞬で聞こえなくなった。
ふふふ。
自嘲なのか自分にもわからない笑いが心の底に湧き上がる。
「僕も歴史の一部かぁ。」
自身の人生は自分が主役だと言い張る勇気を持って生きている人はどれくらいいるのだろう。
逃げているつもりはなかった。
羨望は受ける。
能力も。王族との結びつきも。
それによって成し遂げた功績も。
ただ、自分が誰かのどこかの大切なものになれる気なんてしない。
歴史はいつも自分の周りで蠢いて通り過ぎて。
それはまるで風景画が瞬足で流れて行くのを眺めているように思っていた。
「あっ!所長!あれ?何か嬉しいことありましたか?」
研究室を開けると助手の女性が僕の顔を見てそんなことを言う。
「あ、学園の生徒たちに沢山チョコもらったからかな。」
「そうかもね。もちろん君からのチョコも嬉しかったよ♡」
「あははは。はい、はい。良かったです。あ、所長、王室から登城要請がきていましたよ。急ぎみたいで今日中にとのことです。」
僕は研究室の自分の机の上に積まれた書類を眺めた。
「ああ、わかったよ。じゃあチョコのお礼に今夜夕食でもどうかな?♡」
「所長。話聞いてました?ですから第一王子から登城要請が来てるんですってば!夕食行ってる場合じゃないんですっ」
さっきまでニコニコしていた助手がジト目でこちらを見ながら僕に紅茶を淹れてくれる。
スプーンで静かにかき混ぜるとダージリンの薄く透き通った赤茶色に白が溶けていく。
ー歴史は傍観者なんて作んねぇのよ。
「そうなのかもだね。」
「へ?何かいいました?」
「いや、なんでもないよ?
じゃあここの書類に目を通してからアルのとこに行きますかぁ。」
大きな渦が。
全てを巻き込んでいく。
誰1人傍観者になることを許さない。
絶対に...
許さない。
それすらも愛。ーただ眺めていたいだけだったのにー 完




