↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者とお見合い~お相手は、本屋で見かけた強面の勇者!?~  作者: 夏生たえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/36

22話 激甘彼氏とお泊りデート

それからの一週間。

驚くほどあっという間に過ぎていった。


仕事は忙しかったけれど、毎日届く孝也さんのメッセージに癒された。


帰り道、もしかしたらまた会える?

と期待して辺りをきょろきょろ。


残念ながら、そんな運命的なことは起こらず、待ちに待った週末を迎えた。


****


ベッドの上に服を広げて、うーんと腕を組む。


がっつり荷物を持っていっても迷惑だろうし……。

こういう時、みんなどうしてるの?


「最悪足りないものは、あちらで買い足せばいいか!」


そうよ、服や化粧品なんて何とでもなる。


それより……心の準備の方が重要だわ。


きっと、今日、私は本当の意味で大人になる。


生理は終わった。


初めてだけど……上手くできるかな?


少しは勉強しておくべきかと思って、漫画アプリで「大人な漫画」を試し読みしてみたけれど……

なんと一コマ目から過激爆発……。


危うく鼻血が出そうになったけど、何とか堪えた。


あんなふうに、「溶けちゃいそう」になるの?


「こんなの初めて!」ってどんな感じ?


「もう何も考えられない!」ほどのことが、本当に起こるの?


やっとファーストキスを経験したばかりの私には、

その先の「営み」が、ものすごく高い壁のように感じられた。


それに、漫画とリアルは違うんだろうし……。

かといって、リアルなR18動画を見る勇気はない。


毎日、ぐるぐると頭で考えてばかり。


結局、たいした予備知識もないままに、孝也さんの家へと向かうことになった。


うちまで迎えに来ると言ってくれたけど、丁重にお断りして、孝也さんの家の最寄り駅で待ち合わせ。


到着したのは、住みたい街として人気のエリア。

ネットや雑誌で見たことはあるけれど、実際に訪れるのはこれが初めて。


改札の向こうに、嬉しそうな顔で手を上げる孝也さんの姿を見つけた。


「電車は混んでなかった?」


「全然。初めから座れたよ」


「お昼ごはんを食べてから、家に行こう」


さらりと放たれた「家」という言葉に、ビクッと反応してしまった。


心のどこかで、「する」ことだけが目目当てなの?


と問いかけてしまった。


あー、私のバカ!

せっかくの幸せな時間を、自分自身で台無しにしちゃってる。


孝也さんのことを信頼していないような気がして、罪悪感まで湧いてきた。


ダメだ!

別のことを考えよう!


私は、一旦頭の中を無にした。


孝也さんは、お泊まりセットの入ったバッグをスマートに受け取ると、開いた方の手を差し出した。


必死に笑みを作って、その手を握った。


****


昼食を済ませても、孝也さんはすぐに家に向かうことはなかった。


街を案内するかのように、あちこちを見て回る。


私の緊張は、緩やかに解けて普段通りに笑えるようになった。


もしかしたら、孝也さんは私の心を見透かしているのかもしれない。


ごめんね。

一瞬でも不安になって。

もう、大丈夫だよ。


繋いだ手にきゅっと力を込める。


すると孝也さんも、優しく握り返してくれた。


アーケード街を歩いていると、雑貨屋さんの前で孝也さんは足を止めた。


食器やカトラリーをじっと見ている。


「孝也さんは、お料理をするんですか?」


「全然。できなくはないけど、いつも外食ばかり」


「じゃあ、夕食は何か作りましょうか?」


「ええ!て、手料理!?すごくうれしい!……あ、でも、うちに何もないな」


孝也さんは、残念そうに苦笑いを浮かべた。


「じゃあ、スーパーに寄って行きましょうか?」


「うーん……、それが、食器とかも最低限しかなくて」


なるほど。

そこからだったんだ。


孝也さんは目をキラキラと輝かせて、「一緒に選んでくれる?」と聞いてきた。


「もちろん。お手伝いしますよ!」


そう返した瞬間、繋いだ手がくいっと引っ張られ、孝也さんの胸に引き寄せられた。


「一穂さんの好みの食器を揃えたい」


そう言うと、つないでいた私の手に、そっと口づけを落とす。


「これからの二人の生活のために」


私を見つめる目が、甘く揺れる。


多くの人が行き交う街の中。

私たちの周りだけが、時間が止まったような感覚。


孝也さんがゆっくりと顔を近づけてくる。


ま、まさか、こんなところでキス!?


ど、どうしよう!


困り果てた私は、目をぎゅっとつぶった。


「そろそろ、家に行こう」


耳もとでそう声が聞こえて、目を開けた。


ふっと笑った孝也さんは、私の肩に腕を回して歩き出した。


今日の孝也さんは、大胆だ。


心臓をバクバクさせていると、いつの間にか、閑静な住宅地に足を踏み入れていた。


****


「おお……」


予想外の事態が起こると、人間は変な声を出してしまうらしい。


目の前には、おしゃれな低層マンション。


ロビーの向こうに見える中庭に、噴水が見えた。


どう見ても、賃貸ではなさそう。


もしかして……持ち家なんですか?

と聞きたかったけれど……さすがに、そういうことを聞くのは早いよね?


ロビーですれ違った、幸せそうな家族。

子供までもがブランドの服に身を包んでいる。


私は気理に押されつつ、孝也さんの後をついて行った。


「どうぞ」と言われて、玄関に足を踏み入れた。


どう見ても、子育て世帯が暮らすレベルの広さ。


「三部屋あるけど、使ってるのは寝室と書斎だけなんだ」


口から出たのは、「素敵ですね」と月並みな言葉。


廊下の先のリビングは、私のアパートの三倍はある。


けれど、あまり生活感がなかった。


使われた形跡のないキッチン。

リビングには、ダイニングテーブルと椅子、ソファーがぽつんとあるだけ。


こんなに広くて贅沢なのに、「寂しい部屋」と思ってしまった。


「地元に帰りたくなくて、両親にこっちに来てもらうために買ったんだ。でも、こんな都会じゃ落ち着かないって、一回来ただけ」


そう言った孝也さんの横顔は、少し寂しそうだった。


「一穂さんが来てくれて、うれしい」


孝也さんはそう言うと、ゆっくりと顔を近づける。

重なり合う唇。


固まった私の体に、孝也さんの腕が回された。


求められる嬉しさと不安。


腰に回された孝也さんの腕に力が入り、グッと体が密着する。


初めての時よりも、濃厚で丁寧な口づけ。


ゾクゾクとした快感が、襲い掛かる。


唇が離れたわずかな隙に、深く息を吸った。


「可愛い」


孝也さんは、親指で私の唇をそっとなぞると、もう一度、唇を重ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。