2話 再会
物語の中なら、勇者に出会った主人公は、
1,一緒に冒険に出る。
2,恋に落ちる。
だろう。
けれど、現実はそうじゃない。
いや、物語の中だったとしても、あの迫力ではとても近寄れないだろう。
降ってわいたお見合い話を、一瞬忘れさせてくれたこの出来事。
翌日には、きれいさっぱり忘れてしまった。
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師も走るほど忙しい十二月。
あっという間に一人ぼっちのクリスマスが過ぎて、連休がやってきた。
部屋の大掃除もそこそこに、連休初日、最終の新幹線に飛び乗る。
猛スピードで走る新幹線の中で、書店おすすめの小説を読み終えた時、
私は、実家近くの駅に到着した。
深夜にもかかわらず、迎えに来てくれた弟の祐樹が、改札の向こうで手を上げた。
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「母さん、張り切ってるよ」
運転しながら、ニヤニヤと話し始める五つ年下の弟。
高校生の時から付き合っている彼女と、来年結婚することが決まっている。
もうすぐ既婚者になる彼は、恋愛や結婚に関して、私より格上。
他人事だと思って、楽しんでいるらしい。
「それにしても、どうして急に、お見合いなんて言い出したの?」
「パート先に新しく入った人と、意気投合したらしい。いい年した子供が、未だに独身だって」
「仕事先で話題にされるなんて……嫌だな」
「姉さんのことだけじゃなく、僕のことも話してるよ。だから、あのスーパーには寄らないようにしてるんだ」
「正解ね。あれが噂の娘さん?なんて思われるのは、御免だわ」
「あはは。まあ、母さんはおせちを作らなくて済むから、ラッキーと思ってるみたいだよ」
「なんだ!それが狙いだったのね」
元日から、ホテルの料亭でお見合いなんておかしいと思った。
少しばかり軽くなった心で、実家の門をくぐった。
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「なんで私だけ着物なの」
「時々やってないと、着付け方を忘れちゃうのよ」
「だったら自分で着ればいいのに……」
「結婚式のときは着るわよ」
母はこの日のため、新しく買ったというワンピースの裾を揺らして、軽やかに歩いていく。
その後ろを歩く父は、少し緊張した顔をしていた。
――「まあ、そんなに急がなくても」
帰省した翌朝。
母と見合いについて話をしていると、父がそう漏らしたことを思い出す。
二十九歳になっても、私を嫁に出したくないらしい。
大切に思ってくれているんだと、嬉しくなった。
とはいえ、甘えてばかりはいられない。
お見合い相手は、長谷川 孝也さん。
三十五歳のシステムエンジニア。
婚姻歴なし。
国立大を卒業後、大手企業に就職。
電話で話していた通り、ちゃんとした人らしい。
頭良さそうだな。
マチアプの時みたいに、話が弾まなかったらどうしよう……。
ぎゅっと絞められた帯の苦しさのせいなのか、それとも、緊張のせいなのか……息苦しさを感じる。
予約された個室に入ると、先方はすでに席に座っていた。
「あけましておめでとう、長谷川さん!」
母はパート仲間にそう挨拶すると、世間話を始めてしまった。
相手方のお父様が困ったように、「どうぞ、どうぞ」と勧めてくれたおかげで、着席することができた。
腰を落ち着けたその時、お見合い相手が目に入った。
「ひっ!」
走馬灯のように、記憶が戻ってきた。
あの殺し屋……いや、勇者!
目の前に座る男性は、まぎれもなく大人買いしていた、あの男性だった




