【幕間SS】11話に続くサイドストーリー①:長谷川孝也
11話に続くサイドストーリーです。
「真剣に付き合いたいと思ってる」
一穂さんの年齢なら、その意味が分かっているはず。
その上で、俺でいいと言ってくれたんだ。
彼女の前で、情けない姿まで見せたのに。
三十五歳にもなって、こんなに浮足立つような気持ちになるとは、思いもしなかった。
未だに信じられない。
まさか、「勇者」が俺だったなんて……。
目つきが悪くても、漫画が好きでも、ありのままの俺を好きになってくれた。
今までの彼女とは全く違う。
――最初の彼女は大学の先輩。
思い付きで作ったスケジュール管理アプリで収益を上げると、向こうから声をかけられた。
初めての彼女。
浮かれた俺は、彼女の言いなりだった。
「アプリ開発で起業しなよ」
そう言って行動を制限する彼女。
せっかくできた友達とは疎遠になり、俺の傍には彼女しかいなくなった。
次第に俺の心が病んでいくと、「そんなに根暗だと思わなかった。面倒見切れない」と去っていった。
「システムエンジニアなんですか?将来安泰ですね」
「二十代で係長なんて、すごいですね!」
レッテルだけを見て寄ってきた彼女たちは、素の俺が見えた途端、去っていった。
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少し寂しそうに笑う一穂さんを見送り、俺は実家へと車を走らせた。
信号待ちの合間、さっきまで一穂さんが座っていた助手席に目を向ける。
俺が初めての彼氏。
あんなに隙だらけで、よく今まで……。
もしかしたら、隙を見せたのは俺だけ?
さすがにうぬぼれが過ぎる。
彼女の周りにいた男の目が、節穴だったのだろう。
「一緒に帰ることができたらよかったのに……」
予約を変更できないかと問い合わせたけれど、ダメだった。
「次に会うまで一週間。長すぎるだろ……」
一時間と経っていないのに、もう会いたい。
ずっとそばにいたい。
結婚まで、何か月待てばいい?
すでにお互いの両親と顔を合わせてるんだから、色々すっ飛ばしてもいいんじゃないか?
待て待て。
俺が初めての彼氏なんだ。
恋人同士の時間も、大事にしなきゃだめだろう。
理性が持つかな……。
いきなり襲い掛かることがないよう、気を付けよう。
絶対に、一穂さんを離すものか。




