逆転する地獄
「オラァ!」
俺はヨシキの腹に一発喰らわせた。
ヨシキの顔がゆがむ。
さらにもう一発、連発だ! オラ! オラ! オラ!
「あ」
勢いあまって足を滑らせた。
バランスを失った俺の身体はヨシキに向かう。そして――
ゴツっと頭同士が激突した。
「いててて」
くそっ! ヨシキのせいだ。このやろ……。
体勢を整えようとした。けど、なんかおかしい。
なぜ尻餅をついているんだ?
さらに顔を上げてみた。見上げた先には……俺がいた。俺が、頭を抱えて痛がってる。
「は?」
「ハハハ! なにやってんだよリキヤ!」
「だっさ!」
ツレのヒロフミとコウヘイが横で笑ってる。
待て待て待て。おかしい。何が起こっていやがる。
もう一度目の前にいる俺を見る。やはり俺だ。
俺は自分の身体を見る。制服と、ヨシキの靴。
嘘だろ。入れ替わってんのか?
「ヒロフミ! コウヘイ! やべえ! 入れ替わってる!」
「ああ?」
「なにいってんのお前」
「だから、俺と、コイツが入れ替わってんだよ!」
ヒロフミとコウヘイはお互いに顔を見合わせる。
「適当こいて逃げようとすんじゃねえよボケ!」
「うあっ!」
コウヘイが立ち上がって俺に思いっきり蹴りを喰らわせた。こいつ殺す。
「てめえ何しやがる……」
睨みつけ、威嚇。
「ああ? チビカスが何俺らに歯向かってんだ?」
「おーいリキヤ! お前がもたついてっからこいつ調子乗ってるぞ?」
ヒロフミが俺の身体に話しかける。中身はヨシキだ。
ヨシキの野郎、何黙りこくって見てやがんだ。
「ヨシキてめえ! 身体を返せ!」
そう叫んだそのとき、たしかに見た。俺の面が、にやりと笑うところを。
「悪い悪い。ちょっと手加減しすぎたわ。お前ら、ちょっとこいつ抑えとけ」
「仕方ねえな」
「あ? おいこら! やめろ!」
ヒロフミとコウヘイは俺の両腕を掴んだ。もがいたが馬鹿力で動けねえ。それにもやしみてえなヨシキの身体の力が弱すぎる。
俺の身体が近づいてきて、髪の毛をガッと鷲掴みにされた。
「てめえ……」
「何睨んでやがるゴミが。死ねよオラ!」
ヨシキは俺の身体を使って、俺を殴った。何発も何発も。耐えるしかなかった。痛ぇ。こんな屈辱、初めてだ。
その攻撃が止むと、ヨシキは言った。
「なんだその面。まだ殴られ足りねえみたいだな? 明日からも覚悟しとけよ。お前が死ぬまで遊んでやる」
闇のように光のない黒目が、俺をじっと見つめていた。




