第15話 勇者とばれました
男爵領に来て56日目
追加の買い取り品、隠した場所に取りに行くと言って街を出た翌日。
商業ギルドの荷馬車ごと入れる倉庫内、荷台を見て固まる3人、眼をパチクリしています。
御者台から一振りの剣をだして
『以上です』
固まったままなので復帰を待つ間、手持ち無沙汰で、つい剣を鞘から抜いちゃいました。
刀身が虹色に輝く勇者の剣。
剣が喋ります。
「よく寝たわ~」
「私を抜いたって事は、あなたが当代の勇者なのね~」
慌てて鞘に戻します。
3人の様子を見たら、さらに凝固する3人。
『この剣以外は買い取りお願いします』
立ち去ろうとしたら。
いち早く凝固から復帰した商業ギルドマスターの爺さん
「若造待て、ちょっと待て、待ってて」
振り向くとカンテイニンさんと目が合い
「ユウどの、その剣、勇者の剣ですよね、抜きましたよね、剣が"当代の勇者"って言いましたよね」
あ~余計なことしてしまった
『見なかった、聞かなかった事にして下さい』
スキル-威圧中を発動して脅します、声の低くして
『呪いを掛けました、オイラが勇者だと喋ると死にますよ、よ、ヨ、ヨ、ヨ、ヨ・・・』
倉庫を出ました。
つい、呪いって言っちゃいましたが、そんなスキルは持ってません、オイラの事を勇者と喋ろうとすると胸が苦しくなる暗示を掛けときました。
薬屋の部屋に戻り
喋る剣、鞘から抜くと部屋を明るく照らします
『眩しいから、輝くの止めてくれますか』
「これが標準仕様なのに、しょうがないわね~」
輝きが治まりました
「さっきは酷いじゃない、久しぶりに目覚めさせておきながら~」
『すみません』
「妹が居ないようだけど~」
『妹?』
「挨拶をしてなかったわね、勇者の剣は姉妹剣なのよ、私は、勇者の剣(姉)、よろしくね~」
「で、妹は~」
『国王さまにお渡ししました』
「あら酷い、当代の勇者に身も心も差し上げると言ってたのに、捨てられちゃったのね、私も捨てるの~」
『捨てられたとか、捨てるとか言わないで下さい』
「なら、わたしは捨てないでくれるの~」
『輝くのを止めて、普通の剣に偽装、無闇に喋らない、人の姿に成らないと誓うなら捨てませんよ』
勇者の剣、喋るし、人の姿に慣れるんです。
「分かったわ、できれば夜は鞘から抜いてね~」
一旦、鞘に収めました。
勇者の剣(姉)をスキル-収納に仕舞い込み、昨日、お風呂に入らなかったので共有浴場へ
共有浴場
格安宿屋の宿泊客では無くなったので、今は小銀貨5枚です。
お湯に浸かり、昨日の冷や汗を流し
『あ~、ごくらく、ごくらく』
物思いにふけります、爺さん、オイラが勇者と喋ろうとして暗示で息苦しくなり死んだりしないよね、本当に呪いに成っちゃうよ。
大金貨7枚か、前に東門の守衛隊長さんに家の話されたけど、家買っても1人生活は寂しいな。
ソード騎士さんの新婚生活話が頭をよぎり
『お嫁さん欲しいな』
「なんだなんだ、しみじみと」
『あ!東門の守衛隊長さん』
「嫁が欲しいのか」
『あれ!声に出てました』
「お薦めは牧場の娘だけど、ユウは掃除洗濯に料理まで出来るから商業ギルドの受付嬢も捨てがたい」
「あの胸は捨てがたい」
『ですよね~、大きいオッパイ、鷲づかみが夢なんですって、何を言わせるんですか』
「黒髪ロングも捨てがたい」
『烏の濡れ羽色にちょっとキツメな眼差し、細い腰回り魅力的ですよね、女王さまに踏みつけて貰いたいですって、何を言わせるんですか』
「あはははーーー、腹痛ていよ、ユウは面白いな」
『笑わないで下さいよ、つい本音が』
「本音か、誰を嫁にしたいんだ」
目を瞑って、思い浮かんだのは牧場の娘さんでも、受付嬢のお2人でも無く聖女さん
【嬉しいですは、ユウのお嫁さん】
聖女さんの喜びの声が脳内と、脳裏には頬へ手を当て悶える聖女さんの姿、風呂に入ってるのに身震いしまいた。
「ユウ、身震いしてるぞ、誰が思い浮かんだんだ」
『守衛隊長さんは面識が無い人ですよ』
会ったこと事は無いだろうけど、きっと聖女さんの容姿は知ってるだろうから。
「そうか、あの3人でも駄目なのか」
小声で
「聖女さまを思い浮かべたのかな、容姿、全てだもんな、教会に飾られてる似姿、美化されてないって話しだからな」
『3人でも駄目ってなんですか、オイラには釣り合わないでしょう』
「(勇者さまには)確かに釣り合わんな」
小声で
「勇者さまには聖女さまだよな、駄目だ商業ギルドマスター街の女性陣では適わないよ」
「1人で駄目なら3人を愛人・妾、それだ、爺さんに話してみるか」
「街中で評判だぞ大金貨7枚」
話を変えられた
『え!なんで知ってるんですか、買い取りってさっきですよ』
「商業ギルド職員は、数日前から知ってて口止めもされないから広まるんだ」
オイラに気軽に話しかけてくれる人は居ないから、寂しい、オイラの交友関係狭くない
『知らなかったのは当事者のオイラだけだったんですね』
あ~凹む~
「大金貨7枚、家買って、お妾さん囲って、この街に居続けてくれ、じゃあ、お先」
『守衛隊長さん、お妾さんって、お嫁さんが欲しいんですよ』
何を言い出すやら、訳の分からない守衛隊長さんです。
まったり湯船に浸かり、受付嬢さんのオッパイと烏の濡れ羽色を想像し、聖女さんと比べちゃいました
【わたくしの方が大きいわよ、金髪は嫌いなの?】
聖女さんの叫びが脳内に木霊、風呂に入ってるのに再度身震いしました。
「オイラも出よう」
途中、格安宿屋1階の食堂で飯を食べ、薬屋の部屋に戻り部屋でまったり。
睡魔が襲って来たので、勇者の剣(姉)を鞘から抜いて、机の上に置きベットへ
もぞもぞ、もぞもぞ
『ん!』
少女が目の前に、アイアンクロー
「痛い、痛い痛い、痛いです~」
オイラの胸に剣がポトリ、刺さったらどうすんですか。
勇者の剣(姉)を鞘へ戻しながら
『当面、鞘から抜きません』
「ごめんなさい、鞘に戻さないで、偶には・」
パチンと鞘へ
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商業ギルドマスターの爺さんとカンテイニンさんにホサさん3人、倉庫での会話
「びびったわい、心臓が止まるかと思ったぞ」
「わたしは、恥ずかしながら、少し・・・」
「ホサは気を失ってるぞ」
両肩を掴まみ、揺すって
「ホサさん、大丈夫ですか」
「カ、カンテイニンさま」
「よかった、気がつきましたか」
「若造が、ゆうしゃ・・・」
「ク、ク、ク・ル・シ・イ、、、、胸が・・・・」
「どうしたんですか、男爵領のギルドマスター」
「ハァ・ハァ・ハァ・・・、む、むね、胸が苦しくて死ぬかと思ったぞ、ハァ・ハァ・ハァ」
「今、ユウどのがゆうしゃ・・・」
「む、む、胸が、く、く、くる、苦しい、い、い、息が・・・」
「どうされました、カンテイニンさま」
「ハァ・ハァ・ハァ・・・、胸が苦しくて、死ぬかと思いました、ハァ・ハァ・ハァ」
「先程の、ユウさんの呪いって言ったのは本当なんですね」
青ざめるホサさん。
「安易に、口にすると死ぬぞ、ホサ」
「本当ですよ、ホサさん」
「試しに喋るのではなく何かに書いてみるか、カンテイニン」
「止めときます、死にたくはないです」
「なんて事しやがるんだ、若造」
商業ギルドマスターの爺さん、倉庫に並べられた品を見て。
「この宝にも驚いたぞ」
「この状況でお宝の話しが出来る男爵領のギルドマスターは凄いですね」
「カンテイニンさま、高価な物ばかりで持参した買い取り金では足りそうにありません」
「ホサも、この状況でお宝の話しですか」
「カンテイニンさま、仕事ですから」
「確かに、そうですね」
「最後の盗賊被害、辺境伯領からの商隊の品で一番高価な香炉が買い取り品に無かったので、まだ残りが有るとは思ったのですが此れ程とは」
「ユウさんは、高価な物は買い取りに出して無かったんですね」
「男爵領のギルドマスターは、ユウどのに信用されて無いようですね」
「盗賊、高価な物は王都に送っていると思っていたが、ホサ、買い取り金はどのくらいになる」
爺さん、信用されて無いって話は無視です。
「勇者の剣を除いて、少なくと大金貨10枚」
「カンテイニン、買い取り金の残りは」
「大金貨3枚です」
「今、ワシが出せる額と合わせて大金貨5枚、どうだホサ」
「少な過ぎかと、わたし、買い取りの説明出来ないです」
「無い袖は振れまい」
「カンテイニンさま、わたしは、この場に居なかった事にして下さい」
それを聞いた爺さんは
「ホサ、この程度で良心が痛む様では出世できんぞ」
「ユウさまを騙すのは無理です、あの睨みに呪いを受け査定の1/2で買い取るって」
「わたしも同意見です、先程も言いましたがユウどのに信用されてませんよね」
お怒りのカンテイニンさん。
「ユウさま、高価な品を別に纏めてましたから、おおよその買い取り額、分かっておられると思いますよ」
「本当か、若造は物の価値に疎いと思っていたが、正直に金が無いと話すか」
爺さん、重ねて、信用されて無いって話は無視です。
「そうして下さい、商業ギルド全体の信用問題になります」
お怒り度が増したカンテイニンさん。
「カンテイニンに信用問題と言われるとな、不足分は分割で頼むか、あと、勇者の剣の事も誰にも話すなよ」
「あの威圧に呪いを受けて話せますか、命は大事です」
お怒り度が増し増しのカンテイニンさん。
カンテイニンさん、男爵領ギルドの副マスターに、不当な買い取りをするなと念を押して王都へ帰りました。
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商業ギルドの副マスターさんとマスターの爺さんの会話
「マスター、出せるのは大金貨4枚までです」
「そうか、1枚は残して置くか、勝手言ってすまんな」
「では、元の所有者からの買い戻し要請の対応を開始します」
「各担当に振り分けるを頼む」
「このお宝が大銀貨6枚って、宜しいのですか」
副マスターは、爺さんがユウさまを誤魔化す気なのかなと思ってます。
「無い袖は振れまい」
「買い取り品を減らすのが良いかと思います」
「買い戻し要求も既に来ているし、置いていった物を返すのもな」
「では、売却後にお支払いしましょう」
「そこまでせんでも」
「お支払いしましょう、商業ギルドの品位が疑われます」
「実は、カンテイニンにも商業ギルド全体の信用問題って言われてるんだ」
「駄目じゃ無いですかマスター」
副マスター小声で
「駄目だこの人、本当に金を払わない、これで、金払いが普通なら、王都のマスターにも慣れただろうに」
糞爺から腐れ糞爺に副マスターさんのお陰で成らずすんだ爺さんでした。
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