人柱
「大層な術を使うじゃねえか。あの祠がそんなに大事なのか?」
宮川の足元には、黒装束の片足が転がっていた。
「ぐっ…化物め…」
片足を失い倒れているその男は、既に片目も潰されて胸からも血を流し、ヒューッヒューッと喉を鳴らしている。
「大人しく隠れていれば、もう少し長生き出来ただろうに…。」
「祠を穢せば…必ず…天罰が下る…ぞ…」
男は『ヒュッ!』と宮川に向けて何かを投げたが、それを最後に動かなくなった。
「ふん、下らない呪いだぜ。」
宮川は、地に落ちたそれを踏み潰すと。祠に向けて駆けていった。
「おいおい…随分と無茶したみたいだな。」
「ははは…ザマァねぇよ。…よいしょっと。」
祠の中にある髪の毛…これは何を意味するのだろう。呪術の類であろうか。俺には全く分からなかった。
「これ、どうするよ。」
「祠はな、神様をお招きする場所なんだ。それは奴等も同じさ。」
「奴等の神に由来する物ってことか?…お供え物?…人柱か。」
「そんなところだろな。髪は女性の象徴だろ?ちゃんと供養してやらなきゃな。」
奴等は奴等の信じる神があるのだ。そして、俺達は奴等の聖域を穢す悪でしかない。ただ立ち位置が違うだけで殺し合っている。
「お前は少し離れていてくれ。神力は感じられないが、強い念が残っているからな。」
宮川は祠から髪を取り出すと、祠と鳥居を壊して火を放った。
そして、祝詞をあげながら、祠に供えられていた髪の毛をお焚き上げした。
俺は離れた岩場に座って、その炎を見ていた。
高く高く昇って行く細い煙と共に、人柱にされた女性の魂が天に還れますように…と、祈りを捧げながら。




