夏の日
『お疲れ様〜。めっちゃ早くない?まだ一週間しかたってないよ?…ボロボロだし…大丈夫?』
俺達は、ドン亀で巫女様に報告していた。忙しいだろうに、石黒も同席している。
「ああ…これくらいはな…。」
俺は、好物のカレー南蛮そばを食べながら適当に誤魔化した。稽古不足がバレたように感じて、実は結構恥ずかしい。
「で、神降しは何時やるんだ?」
『まだ準備にひと月程かかるわ。そうね…そのうち御神託があると思うわよ?』
「そうか。」
「神降しの御神事は私と巫女様で行います。お二人には護衛をお願いします。」
石黒は今日も眼鏡を掛けていた。最近はその場に合わせて、数種類の眼鏡を使い分けているようだ。人前に出る仕事なのだから、人に与える印象にも気を使っているのだろう。
俺は自分の無精髭を撫でながら…今更外見に拘るつもりも無いけど、身嗜みには気を付けた方が良いかな…と考えさせられた。
「久し振りに、正装しなきゃな。」
宮川は俺の心を見透かしたかのように、俺の無精髭を見てニヤリと笑う。
「俺は下っ端だから良いんだよ。」
と、カレー南蛮を啜って見せた。
『咲ちゃん?』
咲夜は、先程から近くのテーブルに座り、背中越しに俺達の話を聞いていたのだが、今は振り返り巫女様と目を合わせていた。
「私もお手伝いさせてもらえませんか?」
咲夜は立ち上がって、巫女様に頭を下げる。
「私からもお願い致します。」
店の奥から柳沢も出て来て、咲夜に並び頭を下げた。
『…咲ちゃん。これは大切な御神事です。貴女にその覚悟がありますか?』
「はい。もう迷いは在りません。」
『…分かりました。咲夜さん、柳沢さんと共にお手伝いをお願いします。』
「ありがとうございます!」
二人は大喜びで、奥の厨房へと下がって行った。
皆の視線は、自然と宮川へと注がれる。
「あ?…俺は何もしてないぞ?」
「いやいや…良くやったよ、宮川。」
庭の木々が、サラサラと風に揺られている。
蝉の声が響き渡る、暑い夏の昼下がり。
真っ青な空には、龍神様が俺達を見下ろしていた。




