太古の叡智
宮川は一通り部屋を写真に収めながら、所々で何かを操作していった。
俺はただその光景を眺めていたが、頭の奥…松果体を刺激される感覚を覚えて、その場にしゃがみ込んだ。
「少し休むといい。俺は慣れたものだが、余り一度に情報を入れるのは良くない。」
「ああ…そのようだな。」
「調べたところ、特に危険はないようだ。防衛システムのようなものは無さそうだし、空調も作動している。俺はもう少し奥を確認してくるよ。」
宮川は奥の扉を開けると、その中へと進んで行った。
「今の時代に世に出すのは良くないよな。使いこなせる奴が、そうそう居るとも思えないが…、アリの様に群がってくる奴等が目に浮かぶぜ。」
奥は長く続く通路になっており、その両側には扉が並んでいた。
宮川はその内の幾つかに手を当てて、中を確認していく。
「一般的な居住区だな。」
そして通路の突き当りの扉を開けると、野球場程の広い空間に繋がっていた。
そこは太陽の様な光に満ち、まるで植物園のように様々な植物が植えられていた。
それぞれが美しく花を咲かせ、鳥が囀ずり、流れる小川には清らかな水が流れ、驚く事に魚や水生生物なども棲息していた。
「タイムカプセルか…。さて、どうしたものか。」
このタイミングで発見した事には、意味があるのだろう。だが、宮川には不安な感情しか湧いてこなかった。
「石黒には報告しなきゃ駄目だよな…。」
手頃な岩を見付けると、そこに腰掛け物思いにふける。
この時代は、人々が霊性を失い争い始めた時期だ。実は兵器に使えるものも残されていた。
人類は長い時をかけて進化して文明を築いたとされている。
しかし実際には、太古の叡智を失い、霊性を失い、退化し続けて来た。現代人は、それすらも理解出来ないほどに下等な生物になっている。
宮川は、「俺の考えることでも無いか…。」と呟くと、ただ懐かしいこの時を楽しむことにしたのであった。




