宿命
「…ぐっ…」
「…気がついたか…」
俺は少女をテントに移し、傷の手当てをした。外は今年初めての冷たい雪が降っている。
勿論、抵抗出来ないように拘束もしている。
少女は切られた右手に目をやると、年相応な表情で目に涙を浮かべた。
「応急処置だが、麻酔をした。…何故俺達を殺しに来た。」
「お前たち…お前たちが母さんを殺したからだ!!」
「…」
その少女は、手首を失い拘束されていてさえも、その目で俺を射殺そうとしていた。
「お前の母親とは、術を掛けた者か?」
「そうだ!!母さんはこの地を守ろうと結界を張っていた!!それを…それをお前達が!!」
その時、宮川がテントを開け覗き込んできた。
「…外で少し話をしないか。」
俺達は少女の口に猿ぐつわを噛ませると、雪のちらつく焚火を囲んで座った。
「…あいつの母親は、呪い返しを受けて命を落としたのだろう。相手が俺じゃ無ければ死ぬ事は無かったのにな。」
「…」
「俺達は『守り人』だ。だが、あいつらに取っては、俺達が悪人なのさ。それも、母親を殺した敵だ。」
「…」
「それが俺の役目であり、お前の道だ。それは、これからも永遠と続く。」
「…」
「何とかしたいよな…。」
「…そうだな。」
「…」
「…」
「今日は俺のテントで寝ろよ。後は…俺がやっておくからさ。」
「…馬鹿言ってんじゃねぇよ。」
俺はこの時の決断を、誰かのせいにはしたくなかった。そして、決して後悔をしたくはなかった。
雪は冷たい風に乗って、刺すように強く吹き付ける。
夜明けにはまだ早く、焚火の炎だけが辺りを悲しく照らしていた。




