仇なす者
「これで六つ目だ。」
トマムの山林を回り、鎮石を見付けては壊していった。地図にその位置を示してみると、正確に六角形を描いている。
「六芒星魔法陣か…手が込んでるな。中央に奴等が封じ込めたい御神体があるはずだが…。」
半径三キロ程の魔法陣であった。中央に辿り着くには半日程必要だろう。
「これから向かっても日が暮れちまう。今日はここで野営しよう。」
「今夜はかなり寒くなりそうだぜ。夜には雪が降るかもな。」
紅葉の終わった木々の葉も落ち、季節はもう本格的な冬を迎えようとしている。
見上げる空は鉛色の厚い雲に覆われて、冷たい山風が吹いていた。
辺りがすっかり暗くなり、夕食を終えた俺達は、焚火で沸かしたコーヒーを飲んでいた。インスタントだが、常國では贅沢な品である。
「…宮川…」
「ああ」
『…ヒュンッ…ヒュンッ…』
俺と宮川は横に転がり矢を避けると、懐から短刀を抜いた。
「…気配はひとつ…舐めてるのか?」
『…ヒュン…』
闇に紛れているとはいえ、弓で単独の襲撃などはしないものだ。罠としか考えられない。
俺は、宮川に目で合図をすると、ゆっくりと敵に向かって歩き出す。
『…ヒュン…ヒュン…』
俺は歩幅を不規則に変えながら、ゆっくりとゆっくりと敵に近づいて行く。
『…ヒュン…ヒュン…ヒュン…』
正確に的を射てくる弓矢など、来ると分かっていれば当たるはずがない。
次第に相手の焦りが伝わってくる。
「姿を見せろ。何故俺達を狙う。」
『…ヒュン…ヒュン…ヒュン…』
宮川が気配を消して敵の後ろに回り込む。
『…ドサッ。』
「こいつ…子供じゃねぇか。」
俺達を襲ってきたのは、まだ高校生くらいの女の子であった。




