オレンジ
「初めまして、角田といいます。早速ですが、お二人とも登山経験はあるんですか?」
「夏の山ならあるよ。でも、素人だと思って欲しい。」
「…俺は無い。」
俺達は、羊蹄山のガイドを依頼するために真狩に来ていた。
「正直言うと、今回は止めた方が良いですよ。もう冬山経験が無ければ山頂までは登れません。それに、九合目の湧水も、時期的に枯れているはずですから。」
「やっぱりそうか。」
「角田さんは、羊蹄山には何度も登られているそうですが、最近山頂付近に何か変化はありましたか?」
「直近で二カ月程前に登頂しましたが、これと言ってはありませんでしたね。僕の知る限りでも、そう言った話を聞いたことはないですよ。」
「そうですか…いや、お忙しい中お時間頂き、ありがとう御座いました。」
「お役に立てずに、申し訳ありません。」
ヒゲ面の角田さんは、如何にも山の男といった風貌で、シャツやズボンに帽子から靴下まで、身に着けているもの全てがオレンジ色のオジサンだった。そんな角田さんが登るなと言うのだから、今は諦めるしかない。
俺達は軽トラに乗り込み、手詰まりに思える今の状況を分析していた。
「角田さん、圧が凄かったな。あの風貌でまだ四十代だってよ…詐欺だぜ。」
「ああ…特に足を組んで見せ付けていた、あの靴下。破れて補修してあったが…当て布までオレンジだったぜ?ヤバ過ぎだろ。」
「俺達も、まだまだだな…出直すしかないさ。」
こうして俺達は、ニセコの調査にひとつの区切りを付けたのだった。




