審神者
まだ薄暗い早朝の札幌。俺は宮川と石黒を拾うために道庁前に来ていた。
「ほう…愛車の軽トラはどうしたんだ?」
「お前が荷台に乗るなら、それでも良いんだぜ?」
トヨタのダブルピックに二人を乗せると、ダム湖の畔にある女神様の祠へと向かう。
「何か手掛かりが見つかると良いのですが。」
石黒は珍しく眼鏡をかけていた。普段はコンタクトを入れているのだろうか。眼鏡ひとつで、随分と親しみやすい雰囲気になるものだ。
「そう言えば、家のカミさんが今朝な、…沢に変な石がある…って言ってたぜ?」
俺は、出掛けに妻から告げられた事を二人に伝えた。今朝、夢に見たのだそうだ。
「ふぅん、太陽の巫女がね…しかし、沢って言っても沢山あるからなぁ…。」
「俺が思い浮かぶ沢なら一つしか無いよ。後で案内するさ。」
小さなダムが見えてくると、そこから先は細い砂利道が祠まで続いている。たった一年整備していないだけでも、林道は所々抉れていて水が流れていた。
「これでも倒木とかは片付けてるんだがな。」
抉れた箇所を乗り越える度に、車は大きく跳ね上がる。とても乗用車や軽トラで走れる道ではない。
「着いたぜ。」
御神託を受けてから七年…か。
何度も此処を訪れ、祈りを捧げて来た。だが、家族以外を連れて来たのは、今日が初めてであった。
枯れ葉の積もった階段を上り、人の背丈程の鳥居を潜る。
俺は先立って、祭壇に供物をしてから祈りを捧げると、白衣に着替えた石黒と宮川の後ろに控える。
山間に祝詞が響き、周囲の静けさが増してくると、どんどんと体感温度が下がっていく。
そして、祝詞をとなえながらの二人の審神者は、二時間ほど続いたのだった。




