戦後
「お父さん、田中のばあちゃんがジャガイモくれたよ。」
「お?美味そうな芋だな。」
振り向くと、顔見知りの老婆が手を振って見送ってくれている。頭を下げけお礼をすると、ニコニコと笑って家に入って行った。
この辺りは農家が多く、常國を去る人が少なかった。田舎の人の繋がりは、即席のコミュニティなどよりも余程有効に機能している。
今年の農作業は、販売する事よりも地産地消を目的とし、町民総出で自然農をしていた。
開戦から一年、物資の不足は相変わらずだが、大量生産大量消費の以前よりも人間的な生活だとも言える。
石黒は常國の地政学的な利点を利用した外交を進めて、周辺国の微妙なパワーバランスの上に國家の舵取りをしていた。
ロシア軍は既に國内から撤退して、占領されていた地域も解放されている。避難して難民生活を送っていた人々も、自分の家に戻っているだろう。
「ねえ、水道はいつ使える様になるんだろうね。」
修はシロと遊びながらも俺に振り返り、如何にも不思議そうにそう尋ねた。
「そうだな…復旧の優先順位が高い割には、進んでないんだよな。」
恐らく、石黒が何か企んでいるのだろう。滞っていた石油の輸入も来月から再開されるらしいが、何を対価に輸入するのだろうか。不思議に思うことばかりだ。あいつのやる事は全く理解は出来ないが、何故かいつもうまく行っている。
「去年みたく、浄水器を使うしかないか…。まあ、なんとかなるさ。」
飲水以外は雪を溶かして使えるし、それでも駄目なら水のある所に移動すれば良い。
無ければ無いなりに、知恵を絞り、知識を求め、人を頼る。それが人の生きる力となるはずだ。
強い國を作るには、確かに必要な要素かもしれない。
食糧が無ければ奪えばいい、水が無ければ奪えばいいという思考からは、國家の礎となる人間は育だちはしない。




