ロシアの条件
「あいつは頼りになりそうだな。」
「ああ、政治家向きではないが、骨のある奴だ。外交官としては信頼出来る。何より、伊藤貫先生のファン仲間だからな。」
「伊藤先生…北海道に来てくれないだろうか。」
「馬鹿言うんじゃないぜ!こんな戦いに、先生を巻き込もうとするんじゃねえよ。」
宮川はヒラヒラと手を振り、「冗談だよ」とおどけてみせる。
石黒が水面下で行っている、ロシアとの交渉。
こちらが提示出来る手札は少なくはないが、ロシアが要求してきたのは新政府の立ち上げだった。
ロシアは北海道を中国領土とする事に反対である。現在はウクライナ戦争で援助を受けた借りがある事と、戦争によって衰退した国力の為に同盟関係にあるが、覇権を広げたい中国は、当然ロシアの領土も狙っている。敵国として見た中国が、この北の要の北海道を支配する事は、今後の軍事防衛に大きなリスクとなる。
中国も同じ理由で、ロシア領土となる事は避けたい。
今回の北海道侵攻の真の目的は、北海道を日本から切り取り、ロシアと中国が強い影響力を及ぼせる緩衝地帯にする事であった。
覇権を広げたい中国は、既に沖縄を手に入れた。かなり広範囲の領海を得たために、北海道は実行支配しているロシアの意向に譲歩する可能性がある。
「現政治体制の解体、札幌を中心とした主要都市の掌握。自衛隊を治安維持部隊として再編成し、新政府に組み込む事。その上で新政府としてロシア軍に投降する事。」
「もう既に、日本國の北海道としての扱いじゃないよな。」
「ここだけじゃ無いだろう?本土でも似たようなものさ。」
「だが、本土には天皇陛下がいらっしゃる。そして統理をはじめとした、しっかりとした新政府を用意してあるからな。手探りの俺達とは歴史が違うよ。」
俺は、取っておきのタバコをリュックから取り出すと、少し迷った挙句に火を着けた。
「まあ、何れにせよ俺達は影だ…光に寄り添って動くだけさ。」
窓を開けると、潮風が心地よく吹き込んできた。
車が少ないせいだろうか、澄んだ夜空に綺麗な月が浮かんでいる。
窓辺に寄りかかりタバコを吹かしていると、雲が流れて龍神様が姿を現してくれた。
「…龍神様…いつも、ありがとう御座います…どうか、よろしくお導き下さい…」
すると、ふわりと月明かりが瞬いた様に感じた。
俺は…この困難な道の先が、平和な世に繋がります様に…と祈るのであった。




