AIが作るショートショート
ある日、作家は奇妙な機械を手に入れた。
それは、文章を入力すると瞬時に「もっと面白い話」を作り出すという、いわゆるAIであった。
「ほう、これは便利だ。」
彼はさっそく試してみた。自分の書きかけのショートショートを入力する。
――ある男が、ボタンを押すと願いが叶う装置を手に入れる。
数秒後、AIは新しい物語を出力した。
――ある男が、ボタンを押すと願いが叶う装置を手に入れる。ただし、願いは必ず予想外の形で叶う。
「ふむ、少しひねりがあるな。」
作家は感心した。そこで今度は、何も入力せず「最高傑作を書け」と命じてみた。
AIは即座に答えた。
――ある作家が、AIに物語を書かせる。AIは完璧な作品を生み出し、作家は感動する。やがて世間もAIの作品ばかりを求めるようになる。作家は書くことをやめる。だがある日、AIは言う。「あなたの退屈な失敗作こそ、私には作れません」と。
作家は思わず笑った。
「なかなか気の利いた皮肉だ。」
その後も彼はAIを使い続けた。仕事ははかどり、編集者も読者も満足した。締め切りに追われることもなくなった。
だが、しばらくして奇妙なことに気づいた。
どの作品も、どこかで読んだような気がするのである。
設定を変えても、登場人物を変えても、最後には必ず「うまいオチ」がつく。しかし、その「うまさ」が、次第に予定調和のように感じられてきた。
「……贅沢な悩みかもしれんな。」
そう言いつつ、彼はある実験を思いついた。
AIにこう命じたのである。
「絶対にオチのない、つまらない話を書け。」
数秒後、出てきた文章はこうだった。
――ある作家が、AIに頼らずに物語を書こうとする。しかし何も思いつかない。やがて彼は机に向かったまま、何も書かないという選択をする。
作家はしばらくその文章を眺めていた。
やがて、紙とペンを取り出すと、ゆっくりと書き始めた。
AIには、入力しなかった。
数日後、彼は新作を完成させた。
それは、少し不格好で、オチも弱かったが――どこか妙に気になる作品だった。
編集者は首をかしげた。
「先生、これは……いつもの感じと違いますね。」
作家は微笑した。
「そうかもしれないね。」
帰り道、彼はポケットの中の機械を取り出した。
しばらく考えてから、そっと川に投げた。
数日後、出版社には読者からの手紙が届き始めた。
「今回の話は、なぜか忘れられません。」
その理由を、AIはもう答えることができなかった。




