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【16KPV感謝】魔女の姉の身の回りの世話をしていたら、いつの間にか近衛騎士団長に抜擢されていました。  作者: 夜刀神遼
episode.03 〝剣神〟の故郷 編

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第23話―離れ離れ(ヴァイ、ラグナ、アリオス視点)

 ――さて、どうしたものか。


 僕は誰もいなくなった山道で一人立ち尽くしたまま、ここからどう動くべきかを考える。

 改めて魔力を広げて反応が無いか探知してみるも、かなり濃密な魔力に邪魔をされ、やはり上手く見通せない。入り口まで戻れば合流できるかもしれないと考えたが、“龍の幻界”の影響下ということもあり、正直どうなるかも解らない。

 このまま立ち止まっていても仕方ないとかぶりを振り、僕はこのまま進もうと決めた。

 他の三人――アリオス、ラグナ殿、ラテン殿の事だ――がどうなったのかが気がかりだが、戦える者ばかりだ、おそらく大丈夫だろう。……姉さんは止まることなく進んでいる、これだけは言い切れる。ならば、姉さんに合わせる方が、合流できる可能性は高い。アリオス達も合わせてくれる――そう信じて、僕は再び歩き始める。

 にしても――


「いやに静か、ですね……」


 人の気配はもちろん、魔物も何もいない。ただ両脇で木々が生い茂り、一つの道を成しているだけだ。【初等火魔法】:〚火炎フレイム〛を指先に灯し、それを僕は明かりの代わりとして進んでいく。


 ―――――――――――――――――――――


「……ふむ。どうしたものか……」


 腕を組みながら、私――ラグナは思考に耽る。

 完全に皆と離れてしまった。この濃密の魔力の霧のせいで、魔力探知も意味を為していない。

 正直、これは予想外だった。というのも、私が以前倒した古龍は、山頂までいく際、同じように魔力の霧は出ていたものの、ここまで濃密な魔力ではなく、周囲を見渡せる程度のソレだった。

 だが、今言った所でそれは栓無き事だ。今考えるべきは、はぐれた四人と合流するためにどう動くかだ。

 他の皆はどうなったか。私が一人になった事から察するに、彼らも一人一人となっているはずだ。祖父上は大丈夫だろう。ヴァイ殿も聡明な御仁だ、恐らく問題はない。アリオス殿は……ヴァイ殿の行動を察して行動するはずだ。最も注意するべきはレイティア殿か。

 彼女は……まあ、進むだろう。解らないが、何故か断言できる気がする。……解らないが。

 ならば、ヴァイ殿はレイティア殿と合流する為に進むだろう。とすれば、戻るよりも進む方が合流できる可能性が高い。

 先ずは、周囲に何か生体反応があるかの再確認だろう。そう考え、私は自分の身体を雷光と化す。


「〚雷醒らいせい〛」


 私は地面に片膝と片腕を着け、雷を地面に流す。生物の身体には微弱な電気が流れている。もし周囲にいるならば、雷を流せば、或いは生体反応があるやもしれない。このような魔力が濃密な場所では、魔力を介する事なく探知できるこちらの方が理に適っている。

 眼を閉じ、周囲の反応を探る。左右には……反応無し。後方……同じく反応無し。


「……!」


 前方――反応、あり。


 しかし反応としては一つだ。それに、結構離れている。近づきも遠のきもせず、ただその地点で動かずにじっとしているようだ。状況的に、ヴァイ殿達の内の誰か一人とは考え難い。恐らく――敵。

 私は腰の絶龍刀あいぼうに手を掛け、いつでも抜ける状態で進んでいく。


―――――――――――――――――――――


「――さて……」


 どうしよっか、という俺の――アリオスの言葉は、代わりのため息となって虚空に消えていく。

 何となくこうなると思ってはいたけど、悪い予感というのはいつも当たるものだ。皆と離れ離れになった今、考えるべきは――


「……どう動こっかなぁ……」


 勿論、そんな俺の呟きに答える声は無い。魔力の霧の中で、植物の葉同士が擦れる音のみが響く。

 何度か試してはいるものの、やはり魔力探知が使い物にならない。


「……あ。そうだ」


 ふと、俺は思い出し、右手を前に突き出し、一つの権能を行使する。


「喰らい尽くせ――〚暴食グラトニア〛」


 言葉と同時に、突き出した俺の右手に黒き渦が出現し、空間を満たす魔力を文字通り喰らい尽くしていく。すると少しずつ、それでも着実に霧が晴れていく。こんなことならはぐれる前にやってたら良かったな――そんな事を考えていると。


「おぉ……。マジか……」


 視界が少し明瞭になったのは一瞬のことで、喰ったそばからまた魔力が空間を満たしていく。

 満たされた先から魔力を喰らう。喰らった先から魔力が満たされる。その繰り返しだ。

 それに、何だか変な違和感が俺の中を支配する。が、その正体が何なのかまでは解らない。


「……キリがないか」


 とめどなく満たされ続ける魔力と戦うこと数分、俺は諦めて右手の渦を消した。

 流石にこのまま止まって喰らい続けても意味がない。魔力が薄まった瞬間に魔力探知を発動してみたものの、探知できたのは自分とさほど距離は離れていない周辺だけだった。ならば、次俺が目指すべきは、皆との合流だ。そう考え、俺は眼を閉じて思考する。


 ――ラテン殿は大丈夫。ここの元当主だろうし、多分誰よりも蒼月島ここの事を把握している。


「……ならこの場合どうするべきか先に教えといてくれよ……」


 愚痴を零すも、やはりそれに答える声は無い。

 一つ咳払いをして、俺は脱線した思考を元に戻す。


 ――一番の不確定かつ不安な要素はレイティアさんか。残り二人、思考を読みやすいのはヴァイ君。


 ――彼の性格上、先ず来た道を引き返すという選択肢を出すだろう。けど、こういう未知の場所では、彼はすぐには行動しない。他にどんな要素を考える?いや――


「レイティアさん……」


 無意識に、考えていることが口から漏れる。


 ――いや、一番解りやすいのはレイティアさんだ。彼女なら、進む。間違いなく。


 ――なら、他の二人もそれに合わせるはずだ。


「……よし」


 行動の目処は立った。あとは、動くだけだ。


「〚召喚魔法サモン万変剣ムルティクリオス〛」


 念の為、俺は愛剣を召喚し、周囲に気を配りながら進んでいく――。

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