表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【16KPV感謝】魔女の姉の身の回りの世話をしていたら、いつの間にか近衛騎士団長に抜擢されていました。  作者: 夜刀神遼
episode.03 〝剣神〟の故郷 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/166

第21話―“鬼神虹雷の術”

 言葉と同時に、僕は再び彼女へ向けて漆黒の魔剣を振い始める。

 左からの中段斬り。右袈裟。返す刃で左の逆袈裟。繋げて上からの斬り下ろし。

 かつて見ないような僕の怒涛の連撃に、ラグナ殿はその表情を驚愕に染めながらも、何とか受け止めていく。


「ッ……!絶龍刀、極致其の伍――」


 僕の連撃の最中さなか、彼女は体勢を崩した状態ながらも刀を逆手に持ち替え、バク転の要領で回りながら、下から刀を突き出してそのまま斬り上げる。


「――“登龍穿とうりゅうせん”……ッ!!」

「ッ……!」


 さながら天へと昇る龍が如き剣閃が僕の鼻先を掠める。咄嗟に反応して避けるが、それでも周囲に鮮血が軽く散り、氷の地面を赤く濡らす。気にせずすぐに地を蹴ると、今度はラグナ殿も僕と同時に振りかぶる。

 同タイミングでの右袈裟。互いに受け流し、左腰からの横薙ぎ。ラグナ殿は斬り上げにて僕の剣を受け流し、またも同タイミングで斬り下ろす。火花を散らしながら漆黒と銀灰色が衝突し、鍔迫り合いとなる。


「……懐かしいな」


 互いに譲らないまま、力を緩めずにラグナ殿が呟く。


「貴殿との初顔合わせの時も、こうして斬り結んだものだ」

「……フフッ、そんなこともありましたね」


 僕が近衛騎士団魔法科の団長の任を拝命し、彼女や団員との初顔合わせの際、皆に団長としての力を示す為、彼女との手合わせをしたことがあった。あの頃は手も足も出なかったが――


「――ですが、あの頃とは違いますよ?」

「ああ、今まさに実感しているところさ」


 笑いながら言うと、彼女も苦笑で応える。

 絶えずギリギリと鳴り続ける金属音。当時はまともに斬り合うことすら敵わなかった。

 僕達はどちらともなく互いにバックステップで距離を取り合うと、ラグナ殿は愛刀《絶龍刀》を納刀し、僕は漆黒の魔剣(アビスレイジ)を頭上に掲げる。


「――万物蝕むは、深淵より出づる滅びの闇。第一楽章、月夜にかな影淵えいえん

「――龍舞うそらに、轟くは雷光。唸れ、響け、其が為すは神絶つ赫怒かくどの刃なり」


 互いに、極致の詠唱。僕は、辿り着いた極致の頂、“裏極致”のソレ。


「影淵剣が極致、焉裏えんり其の壱――」

「絶龍刀……、極致奥義――」


 ラグナ殿は眼を閉じ、左足を引き、腰を下げる。その左手は左腰の鞘に、右手は柄に。神速の抜刀、居合の構え。

 僕の魔剣が剣身の漆黒よりもなお黒い闇を纏い、彼女の左腰辺りが、紅雷に包まれる。

 空気が張り詰める。周りの景色の色の一切が消える。モノクロとなったこの世界に聞こえるのは、互いの呼吸音だけ。

 そして、遂にその時が来る。

 地を蹴ったのは、全く同じタイミング。


「――“烈焉滅刃れつえんめつは”ッッ!!」

「――“天舞テンブ尊絶ツ赫龍(ミコトタツカクリュウ)”ッッ!!!」


 互いの極致が放たれた、その瞬間。


「…………っ!?」


 彼女の魔力が、爆発的に解放される。それと同時に、彼女の姿に、変化が起こる。


「ッ!セアアァァッッッ!!!」

「ハアアァァァッッッ!!!!」


 滅びの闇と怒れる龍が交錯する中、彼女のその額に、綺麗な虹色の角が二本。それ即ち――“鬼神虹雷の術(リミットブレイク)”の、発動。


「流石ですね、ラグナ殿……!!」


身魔防護制限解除リミットブレイク”によって解放された魔力の衝突により、そこかしこで魔力爆発が起こる。

 互いの本気の一撃がぶつかり合った、その結果――。


「くっ……!?」「むっ……!?」


 互いの愛剣が手から弾かれ、それぞれの背後で突き刺さる。

 僕達は剣が衝突した瞬間の状態のままで硬直しており、眼前の彼女の顔を見てみると、何とも間の抜けたような顔をしていた。……恐らく、僕も同じような顔を浮かべていたことだろう。

 僕達は示し合わせるともなく、この仕合の余韻に浸りながら戦闘体勢を解除する。


「……一皮剥けましたね」


 互いの魔力を視ると、未だに“身魔防護制限解除リミットブレイク”状態は維持されたままで、ラグナ殿に関しては二本の角が煌々と輝いているのもあって、かなり判りやすい。時間経過によって解除されるため、今しばらくはこの赤氷の世界にいた方がいいだろう。


「正直、実感は湧かないがな」


 そう言いながら苦笑するラグナ殿。彼女の笑顔に、僕も自然と笑みが溢れる。


「さて、興が乗りすぎたな。“コレ”が落ち着いたら戻ろう」

「ええ」


 彼女の言葉に頷き、僕は氷の地面にドサッと倒れる。……冷たい。が、かなり本気になった戦闘の影響で火照った身体には、丁度いいかも知れない。

 その思考が僕の表情に出ていたのか、彼女も僕の隣で仰向けに倒れる。


「気持ちいいな、これは」

「でしょう?最初は思ったよりも冷たくてびっくりしますけどね」

「フッ、同感だ」


 そんな他愛もない話をしながら、僕達は“身魔防護制限解除リミットブレイク”の効果が切れるのを待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ