第20話―久しぶりの
「――セアッ!!」
ラグナ殿の家へ戻ると、僕達は互いの愛剣を手に握り早速仕合っていた。ラグナ殿もずっと魔力を練っているだけで余程身体がウズウズしていたのだろう、その動きがいつもよりも数段激しい。
「ハッ!」
僕の突きを身体を捻って躱すと、その回転を利用して彼女も突きを放つ。同じ分だけバックステップで距離を取って躱し、再び突進する。その瞬間――
「――〚劫炎獄熱波〛ッッ!!」
「クッ、絶龍刀が極致其の肆、“絶龍”ッ!!」
【火魔法】、その最高等魔法を一度に十個ほど放つが、すぐに龍が如き剣閃がその全てを消し去る。しかし、その時には僕は彼女の前まで詰めており、漆黒の愛剣を逆手に持ち替え、大きく振り被っていた。その魔力も、傍から見ると消えていただろう。
「影淵剣、極致其の漆――」
突如、彼女の影が大きくなる。振り被った魔剣を、僕は彼女ではなく、その大きくなった影を目掛けて振り下ろす。
「――“穿影・落日ノ翳”ッ!!」
その切先は、彼女の左肩口に当たる部分の影を捉える。
「クッ……!?」
突き刺した場所と寸分違わず、彼女の肩口から鮮血が噴き出る。それでもなんとか、その場所から避けようとするが――
「動けない……っ!?」
「影淵剣、極致其の弐、“獄淵”ッ!!」
「くっ、〚極醒・虹雷〛!!」
漆黒の獄焔を纏った魔剣を、彼女の首へと振るうが、しかし自身を雷と化すことで避けられてしまう。
「さすが、ですね。これも避けられてしまうとは」
「それはこちらのセリフだ。動きを封じられる上に、影と身体を繋ぐ技など初耳だったから驚いたよ」
そして、互いの出方を窺うように睨み合いが続く。
〚極醒・虹雷〛を使われた以上、物理系の魔法――系統属性魔法、そして【雷魔法】などは通用しない。
そう思いながら、僕はラグナ殿へと空いている左手を向ける。
何を言わずとも、彼女を取り囲むように小さめの魔法陣が幾つも形成される。その数――数千。
系統属性魔法【水】、最高等魔法、〚激流轟穿弾〛。
向けた左手を握りしめると、同時に魔法陣の数だけ水弾が放たれる。が、その全ては当たることなく不発に終わる。
――消えた!?
「――極致其の壱、“雷龍閃斬”ッッ!!」
刹那のうちに、彼女は僕の背後へと移動していた。僕が完全に認識するよりも速く、刀が振り抜かれる――
「ッ、〚幻身顕現〛!!」
ギリギリの所で、僕は自身の幻想体を生み出し、身代わりにして距離を取り、体勢を整えようと試みるが、しかし僕の考えを読んでいたのか、ニヤリと笑いながらピタリとついてくる。
「……っ、〚劫炎獄熱波〛!!」
「なっ……」
苦し紛れに至近距離で【火魔法】をぶっ放すと流石に予想外だったのか、当たるまいと彼女は瞬時に距離を取る。
「影淵剣、極致其の伍――」「絶龍刀、極致其の漆――」
今度は、同時の突進。漆黒の魔剣に纏わりつく闇に対し、彼女の刀身が――消えた。少し驚くが、気にせず彼我の距離を一瞬にして駆け抜ける。二振りの魔剣が衝突する、その瞬間。
「――“淵葬閻舞”ッ!!」「――“龍流・朧衝”ッッ!!」
消えた刀身が顕れると、龍が喰らい尽くすかの如き刀が、僕の頭上から振り下ろされる。
闇と龍の交錯。しかし拮抗したのは一瞬で、すぐに互いを弾き返し、距離が開く。
再びの睨み合い。それから暫しの沈黙を破ったのは、ラグナ殿だった。
「ヴァイ殿」
「何でしょうか?」
「改めて、貴殿の“鬼神虹雷の術”……“身魔防護制限解除”を見せていただきたい。良いだろうか?」
「なるほど……」
恐らく、自身でも苦労しているのだろう。元々彼女は、剣術に精通はしているものの、魔力操作は苦手な方だ。見本といっても、僕も実戦でぶっつけ本番でやっただけなので、少し不安は残る所ではある。だが――
「……解りました。やってみましょう」
「かたじけない、恩に着る」
「ヴァン殿、いますか?」
彼女の言葉に頷き、僕はヴァン殿を呼ぶ。
「ああ、いるよ」
僕達の仕合を見ていたのか、すぐに後ろから返事が聞こえる。
「お願いします」
「任せたまえ。『冷血ノ王』、〚血界〛」
全てを語らずとも彼は僕の意図を察してくれたようで、すぐに赤氷の世界が創造される。
それを見届けた僕は眼を閉じ、自身の魔力に眼を向ける。
「すー……フゥー……」
一度、魔力を完全に波の無い状態にする。さながら、凪いだ海のように。そして、そこから、爆発させるかの如く、全力で魔力を解放する。その瞬間、僕の中をかつてないような全能感が満たすが、それと同時に圧倒的な魔力に身体が悲鳴を上げ始める。増えた魔力の一部で【光魔法】〚自動回復〛を発動し、無理やり黙らせる。何とか成功したようだ。
「……これが、私の、目指すべき姿」
爆発的なまでの僕の魔力に当てられて興奮しているのか、その瞳孔が開いたままになっている。
「さあ、では――」
「ッ!?」
僕は空いていた距離を刹那のうちに縮めながら、続ける。
「――第二回戦です」




