第18話②~プレイヤー不信~
激戦に備えて、プレイヤー達が控え室にてスタンバイ中。今回は豪樹のいる「㈱(カブ)」ブロックから話は始まります。
(てか、何で㈱ブロックなんて名前つけたんやろうな?)
豪樹さん。作者の悪ふざけにいちいち突っ込んでたらキリが無いですよ。
「――オイ、おっさん!」
「お、おっさんって何や!? ワイはまだ25やぞ!」
豪樹は『おっさん』という言葉に過剰反応しながら振り向いた。そこに立っていたのは、豪樹とは正反対に貧弱な体をした高校生だった。
「良い大人がゲーム如きで何を真剣にやってんだか……気に入らないね」
高校生が豪樹にインテリっぽく喧嘩を売ってきた。
「なんやと? 子供がデカい態度で大人に喧嘩売るたぁ、えぇ度胸しとるな?」
豪樹は、「お前かてワイと同じゲームしとるやないか!」と言いたくなったが、大人として自分の立場が低くなるのを恐れて、思い止まった。
「上等だよ、僕は大人なんて大嫌いなんだ! 年上なだけなのにルールだマナーだ、社会の先頭に立った気取りで威張りやがって! お前みたいなハゲから真っ先に倒してやるからな!!」
「ハゲって、お前な……」
言動にも荒削りな所が目立つ、人間不信……いや、『プレイヤー不信』真っ只中の高校生・鴨川充。
自慢のスキンヘッドまで馬鹿にされた豪樹は、彼の心情を察して閉口した。
親や周囲の大人達から、十分な愛情を注がれなかった故の捻くれなのか……?
◇◇◇
『さぁ只今、株価上昇と見まごうような盛り上がりを見せております、4th STAGE!
いよいよ円高のペースまで来るのか!? ㈱ブロックの100人が出陣致します!!』
今の不況に僅かな夢を乗せた実況と共に、フィールド周囲のゲームパッドルームに選手100人が立ち並んだ。
バーチャルの荒野には100体のゲームキャラが出現。参加者のアバターをデフォルメした多種多様なキャラクターが勢揃いした。
ではゲーム開始前に、今度は豪樹のプレイヤーステータスを確認しよう!!
☆高橋豪樹/プレイヤーレベル:52
[プレイヤーステータス]
・アクション:SS ・シューティング:B++
・ロールプレイ:B ・タクティクス:A+
・スピード:A+ ・ブレイン:B
・ハート:S ・ミュージック:B
・ラック:B+
[プレイヤースキル(必殺技)]
・【プラスパワー200】・【精神統一】
・【ワイドリーチ】・【クリティカルアタッカー】
シャッフルの中でも年長ということもあって、プレイヤーレベルがトップ。『アクション』が最高点のSSという、格ゲーに最も適したステータスだ。
さらにプレイヤースキルは、格ゲーでの攻撃力増加や急所確率を上げるサポートなど数多く習得している。
(このゲームじゃ必ずワイが狙われる。顔も幾らか割れてるやろうしな。その時に何人がボロを出すか、見せて貰うで!)
左手にレバースティック、コマンドボタンに右手を備えて、臨戦態勢を整える豪樹。白熱の大乱闘の幕開けだ!
『READY? ―――GO!!』
『さぁ、㈱ブロックスタート! 100人のプレイヤーが一瞬で一つの塊と化した!!
いきなり鉄拳で挨拶する者、それを倍の肘鉄で食らわす者! どちらも血気盛んなファイターの礼儀作法が飛び散っている!!』
色々と突っ込みたくなる新垣治郎の実況が飛び交うが、ここで基本のコマンドを紹介しよう!
『↓』にレバーを落とし、飛びかかるように『↑』で弾いてキックボタン。【天空直撃スピアーキック】!!
そして、『←』から時計回りに一回転とレバーを回して、パンチ一発! スカイアッパー炸裂!!
さらには『←』でレバーを溜めて『→』で一気に弾いて同時にパンチボタン! 射撃技の【パワーブラスター】!!
ボタン連打にも、コンボにも、技の数だけタクティクスが存在する!!
『ここで注目株の登場であります! 無法の戦禍を不敵に笑う男、大阪の巨大アミューズメントパーク・ギャラクシー内のゲームジムを経営しております、高橋豪樹! バッタバッタと敵をノックアウト! まさに格ゲー強者の貫禄が滲み出ている!!』
熟練されたコントローラー捌き、そして達観した瞬発力を武器に、拳が唸る豪樹。
対戦するプレイヤー達に敬意を込めて、本気でぶつかり合っていく!
(若いもんもやるやないか。正々堂々と力の限り闘ってる姿を見ると、敵ながら感心するわな! ―――さてと……!)
豪樹は攻防を繰り広げるなか、新しいターゲットへ狙いを定めた。先程、彼に喧嘩を吹っ掛けてきた鴨川だ。
「オイ、そこの青びょうたん! 突っ立ってる暇はあらへんぞ、こっちから行くで!!」
先手必勝、豪樹が鴨川のキャラ目掛けて攻撃を仕掛ける! しかし……!
「はっ――豪樹さん、ダメだ!」
控え室にて、槍一郎が何かに気付き、豪樹に呼びかけるが時既に遅し。
――キィィィンッ!
「だぁッッ!?」
まるで豪樹の拳が『盾』を突いたかのように跳ね返された! 鴨川へのダメージは無効となり、そのまま豪樹に反転。代わりに豪樹のHPゲージが減少した。
「ってぇ~!! こりゃ迂闊や、カウンターやがな!!」
鴨川が繰り出したカウンター技【リフレクターバウンド】とは、攻撃を受けるタイミングでパンチとキックボタンを同時押しすることで、敵のダメージをそのまま反射することができるのだ。
「これだから大人は考え方が古いんだ。動き回っても疲れるだけだ!」
すぐさま、鴨川が反撃をかける。豪樹は即座にガードで身を固めるが、時折仕掛けられる投げ技に警戒し、なかなか自分から攻撃ができない。
「やってくれるな、こんちくしょう!!」
バシッ!!
やっと鴨川のキャラに強キックのダメージを入れた豪樹! ―――のはずだったが……!?
「……? HPゲージが、一ミリも減ってへんやと!?」
鴨川がガードの体勢を取ったわけではない。レバーを後ろに倒すガード操作もしていない。明らかに無防備なニュートラル状態で攻撃を受けたはずだが、びくともしていないのだ。
「おかしい、どうも調子が狂うな。ちょっとリーチが甘かったんか?」
確かめるように豪樹は追撃をかける。だが、どんな攻撃パターンを試してもダメージが減らない!
当の鴨川のキャラはガードもせず、ニュートラルのまま平然としている。
「いい加減鬱陶しいな、おっさんは!!」
鴨川は痺れを切らして、一撃の強パンチを繰り出す。
――バシュッッ!!
「っ!!」
鴨川のたった一発のパンチで、まさかの体力ゲージが三分の一も削れてしまった!!
「な、何やて!?」
対戦プレイヤーの強さが平等であるこの試合に、このダメージ。もうここまで来たら、鴨川も隠し立てするつもりは無い。
「おっさんに良いことを教えてやるよ。僕のキャラには絶対に勝てない! ――この『B.H Bat』から作り出した改造コード、【メタルウォール】にはな!!」
(やっぱこのガキ、ブラックヘロンの手先やったか……!!)
最凶のチートプログラム『B.H Bat』が、高橋豪樹に牙を向く!!




