第17話⑤~迸った電流~
控え室で様子を見ていたみのりは、試合が一段落したのを確認して、ようやく胸をなでおろした。
「はぁ、レミちゃん大丈夫そうで良かったわ。――そうだ、皆にこの事を伝えないと!」
みのりは直ぐさまプレイギアを手に取り、メンバーへ連絡を入れた。
最初に応答があったのは、インターバルに入ったばかりのレミだった。「もしもし? ―――あ、みのりちゃん! そっちの様子どうだった?」
『聞いてレミちゃん! さっきのゲーム、貴方50人くらいのプレイヤーに集中攻撃されてたのよ!!』
「ご、50人!? 冗談じゃないわ、ランダムに攻撃が来るんじゃなかったの!? ……まさか」
ここでようやくレミは、自分がブラックヘロンに嵌められていることに気がついた。
『今、豪樹さんが管理室で細工されてないか調べてるわ。何かわかるまで、レミちゃんはゲームに集中して!』
みのりは努めて冷静に指示を送る。
「うん、分かった! ブラックヘロンなんか、あたしがまとめて片付けちゃ――」
――バチィィィィッッ!!!
みのりの耳元で、高圧電流が弾けるような音が無線越しに響いた。
『……レミちゃん? レミちゃん、何があったの!? レミちゃん!!』
みのりの叫び声が空虚に流れるなか、レミは右腕を強く押さえ、激痛に悶絶していた。
「……片付ける、だと? 身の程を知れ、小娘」
右手にスタンガンを握った男が、冷酷な視線でレミを見下ろしていた。ブラックヘロンの刺客、鳩山照雄だ。
「あんた―――ッッ!!!」
レミは苦虫を噛み潰したような表情で鳩山を睨み付ける。
「たかがテトリスで殿堂入りして浮かれているようだが……俺はそういうガキが反吐が出るほど嫌いでね。世の中の厳しさを、その身に刻んでやろう」
鳩山の濁った瞳には、隠しきれない殺意が宿っていた。
◇◇◇
一方、通信を強制的に断たれたみのりは、戦慄していた。
「どうしよう。もしかしてレミちゃん、見つかっちゃったんじゃ……?」
狼狽えるみのりのプレイギアに、再び着信が入る。
「もしもし――!?」
『あ、みのりちゃんか? ワイや!』
豪樹からだった。
『今、管理室で不審な奴を追っとる! 応援が欲しいんや! 槍一郎か剣は動けるか!?』
みのりは咄嗟にモニターを確認した。槍一郎はまだ対局の真っ最中。だが、剣の画面はリザルト画面に切り替わっている。
「今、剣くんの試合が終わったみたい! すぐに伝えます!!」
『おう、頼むで!!』
通話を切ると同時に、剣が控え室に戻ってきた。
「あ~、やっぱりキツかったわ。10人生き残りとか厳しすぎだっての」
納得いかない様子で小言を垂れる剣に、みのりが駆け寄る。
「剣くん! ブラックヘロンらしき人を豪樹さんが見つけたって。早く行ってあげて!!」
「…………へ!?」
◇◇◇
そして、デュエルフィールド会場。
『幾千のプレイヤーの頂点、No.1を目指すためには決勝の100人に残らねばなりません!
全ブロック融合準備機構、開始! 準決勝に進んだプレイヤー諸君、頂点への道を駆け上がれ!!』
シャッフルオールスターズ、準決勝進出は槍一郎とレミの二人。
『……GO!!』
―――バチッ!
(痛ッ!?)
『おっとどうしたレミ!? 右手を押さえている! 疲労が溜まっているのか!?』
実況の新垣が叫ぶ。レミは先程鳩山に浴びせられたスタンガンの衝撃が右手に残っており、指先が思うように動かない。
さらに最悪なことに、システムを掌握したブラックヘロンの刺客たちが、執拗にレミへとターゲットを絞っていく。
(ヤバい……痺れて、右手がほとんど動かない……!)
テトリミノの回転を司る右手の不調は致命的だ。だが、猛攻は待ってくれない。
「……ゲームに現を抜かす愚か者に、引導を渡してやる」
鳩山が操作する端末が、レミの筐体へと殺人的な負荷を送り込む。
次の瞬間、レミの指先に、先程とは比較にならないほどの激痛が走った。
――バリバリバリバリィッッ!!
「きゃあああああああああッッ!!!!」




