第16話④~それぞれのゲームへの感情~
桐山剣は2nd STAGEを終えて、少し疲れ果てた様子で控え室に戻った。
「さて……アイツら、俺のプレイ見てくれたんかな?」
剣はみのり達シャッフルオールスターズのメンバーを探したが、控え室のどこにもいない。既に各ブロックにおいて、ゲームの準備に向かった後のようだ。
「――おう! お疲れさん、剣」
代わりにただ一人、既にプレイ済みの高橋豪樹だけが彼を迎え入れた。
「いや~豪樹さん、中々凄かったですわ2nd。でも楽しかった!!」
ゲームを終えた剣は、いつもよりも晴れやかな笑顔を見せる。強敵に敗れはしたが、清々しい達成感に満ちていた。
「えぇやん、えぇやん! 楽しめたならワイからは何も言うこと無しや。それよか丁度あっちのモニターで、みのりちゃんの番やっとるで」
「おぉッ!? よっしゃ、早速見てこよ~っと!!」
みのりの観戦ができると知り、先程までの疲れが一気に吹き飛んだ剣は、一目散にモニターへ駆け寄った。
「ホンマ仲間思いやな〜、剣のあんちゃん! シャッフルのリーダーにゃ十二分な心意気やで。ワハハハハ!!」
◇◇◇
控え室にある数多くのモニターの中から、みのりのいるΩ(オメガ)ブロックの映像を探す剣。
「……あ、もうやってる!」 モニターの中では、ちょうどみのりの出番が回ってきたところで、今まさに激戦の最中であった。 現在のみのりの得点は72,540点。残り2機の状態でマザーボイジャーと対峙している。
「よぉしッッ、みのり行けェェェェ!!」
周囲の迷惑も顧みず、大音量で応援する剣。そんな彼のエールが届くはずもなく、フィールド内のみのりは冷静沈着に光弾を避けてマザーボイジャーに迫るが、中々エネルギーコアに攻撃が届かない。
「大丈夫、落ち着け落ち着け!!
――せやからそこを掻い潜って……あぁアカンアカンアカン! 後ろから来てるぞ!! 落ち着けェェェェ!!!」
今一番落ち着いて欲しいのはアンタです、剣さん。
「ちょっとあんた、うるさいよ。モニターの音が聞こえな――」
見かねた他のプレイヤーが注意しようとするが、剣の耳には入らない。
「そこ来てるって後ろや!! 後ろやって、危ない危ない危ないって!! あッ……! ――ああああ、やられたァ……」
戦闘機の他にやられたのは、剣の大声で鼓膜を震わされた周囲のプレイヤーたちの方だった。
埒が明かないと第三者が諦めて離れていく中、みのりの瞳にはまだ諦めの色はなかった。非力ながらも必死に食らいつこうとする闘志が、画面越しに剣にも伝わってくる。
――さぁ3機目!
マザーボイジャーの元にすぐさま辿り着いたみのりは、無闇に攻め寄らず、敵の光弾を避けることに専念する。まだ動きに焦りはない。
一瞬、マザーボイジャーの攻撃が止んだ!
(――今だっ!!)
みのりはエネルギーコアにカーソルを合わせ、ミサイルを投下した。
――ドカァァァァァァン!!
マザーボイジャー、撃破!!
「よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉし!! 良いぞみのりぃぃぃぃぃぃッッ!!!!」
剣は理性が吹き飛び、幼子のように無邪気にはしゃぎ叫んだ。耳を塞いでいる他のプレイヤーたちなど、今の彼には目に入らない。
仲間が一生懸命に頑張っている姿を見るのは、何よりも嬉しいものだ。それ故に、ゲームが苦手だったみのりの成長を目の当たりにした剣の喜びは、ひとしおだった。
――ボカァァァァァァン!!
「……あら??」
しかし、喜びも束の間。3機目が爆破される音が響いた。 マザーボイジャーを撃破した直後、集中力を使い果たしたのか、流れてきた光弾に接触してしまったようだ。
河合みのり、スコア94,250点。94ポイントが加算され、彼女の2nd STAGEが終了した。
◇◇◇
「ひぇぇぇ、疲れたぁ……!」
みのりは疲れきった顔で控え室に戻ってきた。他のプレイヤーからも、所々で温かい拍手が送られる。
「みのりぃぃぃ、良く頑張ったなぁ!! 知らないうちに強くなっちゃって、このこの〜!」
剣はみのりに近づいて軽くじゃれついた。
「えへへ……、でもマザーボイジャー倒すので精一杯だったわ」
「何言うてんねん、十分やないか! どんなゲームでも一生懸命やってりゃ、俺は嬉しいよ」
剣もいつの間にか、リーダーらしいことを言うようになったものだ。
「――あ、居たいた剣くん! みのりちゃんも!!」
ちょうどレミもゲームを終え、剣たちと合流する。
「そっか。レミちゃんは私と同じ時間に出番だったのね」
「で、結果はどうやった?」
「えーと、102,340点! でもマザーボイジャーは倒せなかったわ。前のスペシャルポイントでの1UPと高得点で、なんとか稼げた感じ」
「ええやんか、ちゃんと全力出したんやろ?」
「もちろんよ、当たり前じゃない! テトリスでも他のゲームでも、諦めないのがあたしの取り柄よ!」
「せやった、悪い悪い! 中途半端なことせえへんかったら俺も文句は言わへん。良ぅやった!」
剣は優しくレミに拍手を送り、続けてみのりもレミをハグで称えた。微笑ましい光景である。
「剣、いつの間にかリーダーの風格が出てきて、ちょっと生意気やな!」
「豪樹さんの言う通り! でもこれくらいドンと構えてくれた方が、あたしも頼もしいわ」
豪樹とレミが囃し立て、チームが和気藹々となる場面だが、肝心の一人が足りない。
「あとは……槍くんだけね」
オールスターズで2ndをまだ終えていないのは、槍一郎ただ一人。
みのりの心には、仲間内で微かに感じていた不安がよぎっていた。
◇◇◇
『さぁ、Σ(シグマ)ブロックからWGC公認オフィシャルプレイヤーの登場です! 迅速の槍、天野槍一郎(16)!!』
しかし、不思議なことに槍一郎への歓声が少ないことに剣は気づいた。パラパラとした、どこか気の無い拍手。オフィシャルとしての知名度からすれば期待が集まるはずだが、無名に近い剣の時の方が、よほど歓声が大きかった。
(………………)
だが、剣はこの反応に驚かなかった。
槍一郎のプレイを大会で見るのはこれが初めてだが、友人になってからのこの一ヶ月で、剣は既に何かを感じ取っていた。
『ゲームスタート!!』
16bitのオーケストラサウンドが槍一郎の出撃を彩るが、どこか空虚で何かが足りない。やはり原因は、観客の熱量の低さだった。
しかし、それに屈することなく槍一郎は淡々とゲームを進める。
動きも攻撃も、スペシャルポイントの獲得も完璧だ。しかし、見ている者の心には響かない。
まるで事務的な流れ作業のようなプレイに、心躍らせる者はいなかった。
(アイツには実力も才能もある。だが仲間同士でこんな事は思いたくないが……あのプレイは、俺は気に入らねぇ! まるでやりたくない宿題を済ますような、芯の無いプレイは嫌や!!)
剣の苦々しい顔を見て、みのりは確信した。槍一郎のプレイに抱いていた違和感は、特訓を共にしてきたメンバー全員が既に察していたものだった。
"槍一郎の魂に、『覇気』が無い"――と。
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次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




