第14話②~『G-1グランプリ予選』開幕!!~
「―――準備は済ませたか?」
「あぁ万全だ、ボス」
時刻は深夜2時、草木も眠る丑三つ時。
ログインプレイヤーはまばらになり、過疎エリアのサーバーが深い眠りにつくほどに静まり返った「ゲームワールド・オンライン」。
サービス開始から約半世紀、絶え間ないアップデートを繰り返す地球規模のVRMMO。その鉄壁のセキュリティを以てしても、プレイヤーの底知れぬ悪意と小賢しい知略は、網の目を容易く潜り抜ける。
人類が創り出した電脳空間の深淵に溶け込み、巨大タイトルに革命という名の破壊を画策する影があった。
――超次元ゲーム時代に仇なす者たち、秘密結社『ブラックヘロン』の暗躍が始まろうとしていた。
「よし……手筈通り、G−1グランプリの各競技に『BH bat.《ビーエイチ・バッチ》』を仕込むよう工作員に伝えろ」
「了解」
ボスから幹部へ、そして現場の工作員たちへ、冷徹な遠隔指令が飛ぶ。
「もはや悠長に構えている暇はない。仕掛けるなら今だ。賭博での資金源が断たれた以上、力ずくで奪うまで……」
「あの写真の件ですか」
「あの忌々しい……≪剣の魂≫とかいう小僧のせいで、我々の計画は根底から狂った! どこの馬の骨とも分からぬ下等人民如きが……!!」
先日、桐山剣が単身乗り込み、『ゴールドラッシュカジノ』を独占していたブラックヘロンの不正を暴いたことで、幹部の一人がWGCに逮捕された。
組織の心臓部とも言える資金源が、完全に断たれた瞬間だった。
「通報したのは学生だという情報は得ています。ただの英雄気取りか、それとも……」
「そんなことはどうでもいい! 我々の邪魔をする俗物は、ゲームワールド諸とも塵に帰せ! 下らぬ遊びにうつつを抜かす愚民どもを、一人残らずだ!!」
「……かしこまりました。ではバッチと共に『例のもの』も用意いたします」
「頼んだぞ――!!」
幹部は傲慢なボスの命令に従い、プレイギアのグループ通話機能を開いた。
「――ブラックヘロン一同に告ぐ! ボスの権限に基づき、G−1予選当日に【D−Z計画】を発動せよ――!!」
◇◇◇
大会当日――!
ゲームワールド最大級を誇る巨大闘技場『デュエルフィールド』。無数のゲートから、数万を超すプレイヤーたちが雪崩のように押し寄せてきた。
イベントコード『G−1グランプリ予選』。現実世界からダイブした猛者たちは地区ごとに振り分けられ、各ルームにて今か今かと開幕の時を待ち構えていた。
そして、あの5人もまた、熱狂の渦へと転送された――!
「なあ槍ちゃん……眩しいな。何もかもがさ」
剣は闘技場の強烈な照明に目を細め、地平まで続くかのような参加者の群れを仰ぎ見た。
「ああ。だがこの光景こそが、僕の闘争心に火をつける……!」
槍一郎が不敵に微笑むと、他の三人もそれぞれの高揚を口にした。
「やっば、あたしもう心臓バクバク! 始まってもないのに!!」
「このお祭り感覚、久々やなぁ! 腕が鳴るわい!」
「不安もあるけど……私、本当に公式大会に出てるんだ。夢みたい!!」
全参加者の興奮と緊張が、地鳴りのような喧騒となって渦巻く。その時、闘技場の照明がスッと落ち、一機のホバージェットが頭上を掠めた。
「――そろそろ始まるぞ」
『――全国のプレイヤー諸君! G−1グランプリへようこそ!!』
ホバージェットから響き渡る咆哮。大音量のサラウンドシステムがその声を増幅させ、会場の熱気は一気に沸点へと達する!
『今年でG−1グランプリも記念すべき50回目! 各地区予選だけで約5万人、日本全国では実に50万人以上の修羅が集結しました!!
これはもはや遊戯の枠を越えた、極限のサバイバル! 己の腕を試すなどという生易しい次元ではない、桁外れの怪物たちがここに集っている!!
あらゆるジャンルを超越し、「最強」の二文字を渇望する幾千のゲーム戦士たちよ!!
この予選という名の地獄を勝ち抜き、本選へのプラチナチケットを掴み取れッッッ!!!』
魂を揺さぶる叫び、そして絶妙なワードセンス! 実況歴20年を誇るベテランの号砲に、数万のプレイヤーが総立ちとなった。
『進行及びメイン実況は私、WGC所属アナウンサー、新垣治郎が務めさせていただきます!!』
新垣は数多くの伝説的マッチを彩ってきた、群を抜いた熱血実況者。
別名『ゲーム実況界の古舘伊知郎』。その登場に、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
司会の進行により、主催のWGC代表による挨拶が行われた後、スタッフから予選ルールがアナウンスされた。
★G-1グランプリ予選ルール★
① 参加者は100人ずつのブロックにランダムで振り分けられる。
② ゲーム種目は全9種。2日間(1日目5種目、2日目4種目)の合計獲得ポイントを競う。
③ 1日目終了時に集計を行い、順位が上位半分に満たない場合はその時点で脱落。
④ 不正行為、ルール違反は即失格。今後の大会への出場停止処分を下す。
⑤ 全種目終了後、各地区の獲得ポイント上位100名が本選への出場権を獲得する。
◇◇◇
「成る程ね……」
剣は少し苦い顔をしながら説明を聞き終えた。
特訓を積んだとはいえ、初出場のプレッシャーがじわじわと肩にのしかかる。
「まだ自信が持ててないようやな、剣」
豪樹がその内心を見透かしたように声をかけた。
「……正直、そうっすね。こんな大勢と競うのは初めてやし」
弱気が顔を出しそうになったその時、メンバーたちの声が飛ぶ。
「しっかりしろ、剣らしくないぞ!」
「そーよ! あたしたちがいるじゃないの!!」
そして、みのりが彼の肩を優しく、だが力強く叩いた。
「不安なのは剣くんだけじゃないよ。私も初めてだもん。でも、これだけは忘れないで。貴方は一人で戦ってるんじゃないってこと。騎士のように強く、剣の魂を掲げた剣くんなら誰にも負けない! 私たちがそれを証明しましょう!!」
みのりの言葉に、剣の瞳にいつもの鋭い輝きが戻った。
「やれやれ、俺としたことが気負いすぎたわ。ほなリクエストにお応えして、テッペン狙わせてもらおうやないか!」
「そうだ、それでこそ剣だ!」
リーダーとしての意志を示すべく、剣は改めてメンバーたちへ向き直る。
「槍さんや皆が導いてくれた道や。本選通過なんて小さな目標やなく、チーム揃って上位を独占したるぞ!!」
「「「「もちろん!!」」」」
『シャッフル』というチームの旗の下、絆を確かめ合う5人。
だが、熱狂する群衆の中には、どす黒い殺意を宿した瞳で彼らを射抜こうとする者たちが潜んでいた。当然、それを知る由もないシャッフル・オールスターズ。
G-1グランプリ関西予選は、予測不能な怒涛の渦と共に、荒れ狂う戦場と化す。
その破壊の序章が今、幕を開けた――!
『―――さぁ、闘いへの儀式は終わった! これよりG-1グランプリ予選の開始を宣言する!! 運命のダイスは投げられた! では早速始めようではないか!!』
大会開催のセレモニーが終わり、再び実況・新垣治郎の咆哮が鼓膜を震わせる。
その掛け声と同時に、闘技場の中心から巨大な対戦フィールドがせり上がり、眩い光を放ち始めた!!
『予選・1st STAGEのゲームは……これだァァァァァッッ!!!!』
さぁ第2章の始まりだ!!
ここから怒濤のゲームバトルが始まる!!!
予選1stSTAGEのゲームは『剣と剣とのぶつかり合い』!?
次回、第15話!!
お楽しみに!!!




