第14話①~「ターン・アップ!!」~
ゲームを通じて無限大のネットワークを創り出す電脳異世界『ゲームワールドオンライン』。
そんな世界が、時代を仇なす愚かな人間の手によって崩壊させようとしている!!
文明の結晶を壊すのが人間ならば、それを守るのも人間だ!!
今こそ己の魂を武器に変え、ゲームプレイヤーの未来を守り抜けッッ!!
『極限遊戯戦記 ゲーム・ウォーリアー』!!
日本・大阪に住む高校生、桐山剣と河合みのり。
彼らはゲームの頂点に立つ最強の称号≪マスター・オブ・プレイヤー≫を目指すべく、世界中のプレイヤーが集まる超巨大オンラインゲームネットワーク『ゲームワールドオンライン』を旅しながらゲームに挑んでいた。
そんなゲームワールドオンラインでは今、サイバーテロの脅威が迫っていた。
『BLACK HERON』というサイバーテロリスト軍団が、ゲームワールドの秩序を潰し、電脳世界の崩壊に追い込もうとしている。
人間のエゴの為に、居場所を壊そうとする理不尽に敢然と立ち向かう決意をした桐山剣は『ゲームワールドオンライン』のゲームで繋がった仲間を集め、本格的なゲーミングチームを結成。
剣、みのりに加え、WGC公認オフィシャルプレイヤー天野槍一郎。テトリス殿堂入りプレイヤー畠田レミ。そしてゲームジム『ビッグウェーブ』経営者高橋豪樹をメンバーにした『シャッフル・オールスターズ』の誕生だ。
目標は『G−1グランプリ』の出場と同時に、それを利用してテロを企むブラックヘロンを討伐する事。
大会までの一ヶ月間、剣達はレベルアップに特訓を重ねて大会に備えていった。
そして時は光陰矢の如しに進んで、気付けばあっという間に大会前夜。5人は今、ゲームジム『ビッグウェーブ』にて決起集会を行っていた――!
◇◇◇
「いよいよ明日が大会予選か……!」
槍一郎は染々と一言呟いた。
「俺達ここまで良う頑張ったよなぁ……!」
剣も涙声になりつつ染々と感極まった。
「全員、ホンマにエェ具合に成長しとった! ワイもここまで上達したプレイヤーは見たことなかったでぇ……!!」
そして豪樹も号泣全開、涙腺の滝登りだ。
「ねぇ、あたしのカ◯リーメイトどこ?」
「「「冷蔵庫の中」」」
感涙にむせぶ男の空気を止めたのは、畠田レミ。
「レミちゃん、そこで流れ止めちゃダメよ」
ホントにねぇ、みのりちゃん。……とまぁ茶番は置いといて、槍一郎は咳払いしながら話を続ける。
「とにかく! 僕達5人はこの一ヶ月、長短所を補いながらプレイヤーステータスを上げるトレーニングを費やしてきた。全員、大会までに理想の強化基準を遥かに上回ったステータスまで上達している。後は大会のプレッシャーに打ち勝つ気持ちがあれば充分だ! それと……」
「あの『ブラックヘロン《クロサギ》』野郎を潰せる……だろ?」と剣。
「そうだ。あのテロリスト達を潰さない限り、僕達ゲーム戦士の明日もない!
僕らはそれに屈しない為の力を付けてきたといっても、過言じゃないだろう」
「でも一筋縄じゃいかないでしょうね……」
みのりの言う通り。相手はゲームワールドの管理をも震撼させる常識破りのテロリストだ。
こんな脅威が潜んでいるというのに、半ば強制的にG−1グランプリを開催するものだから、その真実を知る剣達が不安になるのも無理は無い。
「多少のイカサマプレイなら実力でも対策は出来るんだが、問題はそれを仕組むタネとか、共犯者を見つけられるかどうかだ。
――奴らはイカサマを仕掛けるための細工から、アリバイ作りまで複数のプレイヤーが関わっている。そこを突く急所的人物を見つけられるか……って所だな」
WGCから引き出した情報を下に、対策案を冷静に提示するのは槍一郎。
「でも大会じゃ関西でも五万を越す参加者がいるのよ? あたし達で見つけられるのかしら――?」
「レミちゃん、その辺は心配は要らない。剣が残した写真が手掛かりとなる」
「俺の写真?」
「ほら、君が以前ブラックヘロンの巣窟にポーカーで近づいてボコボコにした時に撮ったあの写真。挑戦状も添えてWGC本部に密告したやつだよ」
前回『ゴールドラッシュカジノ』に占領していたブラックヘロンの一味のイカサマを見切った剣は、ゲームでも喧嘩でもコテンパンにして写真に撮って管理者とWGC本部に送っていたのだ。
その写真を下に、本部のセキュリティ班によって、鳥の刺繍をしたTシャツを着たブラックヘロンの共犯者・関係者を纏めて確保したとの事。
「ほんで、あの後どうなったん?」
「お手柄……と言いたいとこだが、やりすぎだぞ剣。
あの写真が証拠になって、ブラックヘロンと思われるプレイヤーはある程度捕まえたが、幹部には相当逆鱗に触れたみたいだ」
私情に駆られて大暴れした剣、多少計画とは外れた行動に槍一郎は困惑していた。
「お偉いさんがキレたんなら結構。俺はそれを承知で写真撮ったんやし。
――第一あの写真に俺の名前は入れてないし、顔を知ってる奴ら皆しょっ引いたんなら安心や。だから相手が正体を知られる前に、こっちから叩き潰せるチャンスもあるって訳!」
果たして怪我の功名か、運が良いだけなのか。ともあれ剣が顔バレしてない事を幹部達を含めて、この事実を知る者はいない事は確かだ。
「何や、若気の至りで暴れた割には冷静やないか、剣?」等と豪樹が皮肉交じりに言うが、彼の精神の成長は誰よりも認めていた。
「俺はもうあんなザコ相手に怒りませんよ。怒りの矛先は、親玉に思う存分ぶつけるんですから……!!」
剣はニヤッと不敵に笑みを浮かべた。
「俺達が勝つかどうか、勝負は大会で付ける。もう一度確認しておくぜ。
俺達『シャッフル・オールスターズ』の使命はブラックヘロンを潰すこと!そんでもって――――
このゲームは頂点を目指す第一歩や、粋に楽しもうぜ!!」
剣はそう言うと右の拳を前に差し出す。それと同時に他の4人も拳を出し、互いに甲を触れあう。
シャッフル・オールスターズ、団結の時……!!
「シャッフル、“ターン・アップ”!!」
「「「「おーーーーっっ!!!!」」」」
『ターンアップ』とはトランプの用語で切り札を決めるカードを裏返す時に用いる。
それがいつしか、シャッフルチームの鼓舞する為の掛け声となっていった。
大会に備え、それぞれが英気を養うために解散するなか、みのりは一部疑問を抱いていた。
(確かに皆強くなっているし、私も自信が付くようにはなってきた。ブラックヘロンに太刀打ち出来る準備も万全に備えている筈なのに、胸の奥がズキズキと痛い……!
何か大会で嫌な予感がするようで、堪らなくなる―――!!)
戦いの前ぶれか、ネガティブな事を考える時では無かったが……皮肉なことに、みのりの並みならぬ不安への予感は的中することになるとは。未だ誰も予想だにしていなかった。
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