第13話②~クロサギの巣~
―――シャッフルメンバーは早速、ゲームワールドへ赴き、各エリアにブラックヘロンの一味が拠点を構えていないか探すことにした。
レースゲームの未来都市からパズルゲームの工場まで隅から隅まで探すなか、剣とみのりは、中心地である『プレイヤー・バザール』から遥か南南西の片隅に位置する黄金に輝く賭博場エリアへ向かっていた。
「何だか眩しすぎて目が痛い……。こんな所、私達があまり来ちゃいけない気がするわ、剣くん」
「俺かて来とうはなかったけどさ……こんな人目につかん場所なら、あのテロリスト共が一人二人潜んどるんちゃうかと思ってな」
プレイヤー達の欲を貪り食らう黄金の賭博エリア。その名も―――【ゴールドラッシュ・カジノ―GOLDRUSH CASINO―】!
一攫千金の夢か、あるいは破滅への転落か。すべてはプレイヤーの運と度胸に委ねられた、命懸けの社交場!
更にこのエリアでは、裏社会のマフィア等の取引に使われる噂もあるんだとか……?
◇◇◇
――剣達が向かったのは、カジノ内に設置された『イージーエリア』。
ここでは賭け金に上限が設けられ、パチンコの景品のような対価交換に留められているため、16歳以上なら入ることができる。高校生の剣たちも一応はセーフラインだ。
ちなみに本家本場の『ジャックポットエリア』は、本気の賭けをメインとするため、18歳未満は入場お断りなのだ。
――剣は周りのゲームの様子を見渡しながら、休憩所でみのりとジュースを飲み、標的の出方を見守る。
「ねぇ、剣くん。掛け金で悪い事を仕掛けるんだったら、『ジャックポットエリア』の方が尻尾掴めそうな気がするんだけど……?」
「いや、『ジャックポットエリア』はゲームワールドの中でも特にセキュリティ厳重やし、下手にイカサマ仕掛けりゃ即刑務所行きや。んな所で奴らも変な真似はせぇへんやろ」
「それで、比較的監視の緩いイージーエリアの方が怪しいから、私たちで様子を窺うってことね」
剣とみのりの周りには、パチンコ台やメダルゲーム等に戯れる年配プレイヤー達が多く見られている。
そんな中で特に異彩を放っていたのは、テーブルゲーム・トランプでのエリア。
そこには数人、黒地に鳥の刺繍が入ったTシャツを着た男たちが、テーブルを囲んで【ポーカー】をプレイしていた。みのりはその男たちの様子を見て、わずかながら違和感を抱いていた。
「――ねぇ剣くん。あの男達、何かおかしい事してなかった?」
「みのりも気づいたか。俺もだ」
遠目に疑惑を向けながら、ヒソヒソと相談する剣とみのり。彼らが特に重視していたのは、ディーラー(トランプを配る人)だった。
カードを混ぜるリフルシャッフルの手つきこそ鮮やかだが、カードを配る際、指先が不自然に跳ね、特定のカードを抜き出すような違和感があった。
そして黒いTシャツの男達に配られたカードは、手札を交換せずにストレート、4カードと高い役で勝ち続けた。
「ちくしょう、また負けた!」
黒シャツ男達とは無関係の同席したプレイヤーは、掛け金と共に余裕をも無くして失意のままテーブルを退散した。
「へへへ、ちょろいカモだったな」
「ああいう手合いがバカ正直なほど、いいカモになる。
この『イージーエリア』一帯が、我ら【ブラックヘロン】の庭だとも知らずにな……!」
(―――!!!)
壁に耳あり障子に目あり……!
黒シャツ男の口からサラリとカミングアウトした【ブラックヘロン】の尻尾。それを剣とみのりはしかとその耳で聞き取っていた!!
「バカはお前らだ。公共の面前で『ブラックヘロン』の言葉を使うなと言っただろう」
話したディーラーまでも組織の事を知っていた。つまりこの連中、黒い服同士が結託してプレイヤーたちの掛け金を搾り取っていたのだ。
「でもあんちゃんこそ、公式のディーラーを偽ってブラックヘロンに加入しておきながら、あのジャックポットエリアを占領出来てねぇじゃねぇか」
ブラックヘロン一員がディーラーにちょっかいを出す。
「それほどあそこは手堅いって事だ。だがいずれは制して我が組織の資金源と化せば、ゲームワールド全体を手中に収めるのも夢じゃない!」
「あのG−1グランプリも組織のリーダー達が仕留めれば俺達の天下だしな。ククク……!」
「ゲームは勝つことが全てだ! どんな手を使ってもだ。ルールだとか規則に従う愚かなプレイヤー共を、我が組織に服従させてやるのだ!!」
そんな一員たちの会話も、地獄耳の剣には丸聞こえだった。ゲームを使ってプレイヤーたちの居場所を奪うブラックヘロンたちに、もう我慢の限界が来ていた。
「あの野郎……ッッ!!」
「剣くん、なにする気なの?」
「なに、ちょいと俺もゲームをやりとうなった。やってる間にみのりはアレを用意しといてくれ」
「……分かったわ。気をつけて」
そう言うと剣はブラックヘロンのいるテーブルへと向かった。
さぁいよいよ、ブラックヘロンの巣窟へ。急接近だ―――!




