第13話①~それぞれの強さ~
プレイヤーの強さ、それは力だけが指し示すものではない。
その答えはゲームに対する『魂』だけが知っている!!
そして桐山剣は悪の根源に急接近する!!!
第13話、第1章のラストへゲート・オープン!!!!
桐山剣率いる『シャッフル・オールスターズ』の面々は、ゲームワールドで開催される『G−1グランプリ関西予選』に向けたトレーニングに励んでいた。
あれから三週間の月日が流れた。
「スタート!」
『プレイヤーステータステスト』の特訓中、槍一郎の掛け声と共に剣はヘッドフォンを装着し、フリーセルを開始する。
以前とは比べものにならないほど、超音波や罵詈雑言のノイズに動じることもなく、ただひたすらにカードを捌いていく剣。それだけではなく、進めるペースも格段に速くなっていた。
そして、52枚全てのカードがホームセルに収まった。
「よし、終わりッ! ――何秒や、槍ちゃん?」
苦悶の色も見せず、清々しい表情でフリーセルを終わらせた剣は槍一郎に問いかける。
「……凄いぞ、二分十五秒。新記録だ!」
「ぃよしッッ!!」
剣が歓喜の声を上げる。
「この三週間、一日も休まずに特訓してきた成果がしっかり出ているよ。豪樹さん直伝の『心・技・体』トレーニングのおかげで、以前とは比べものにならないほどだ。集中力も精神の安定も、目に見えて向上している」
豪樹によるトレーニングは、エアロバイクでの有酸素運動に始まり、バランスボールによる体幹強化、ルームランナーでのインターバル走、そして筋力増強のパンプアップなど多岐にわたった。
各々の個性に合わせたメニューをこなしていく中で、剣の精神面は肉体の強化に比例するように、想定以上の成長を見せていた。
「これも槍ちゃんたちのおかげや。改めて礼を言うぜ」
「それは剣自身が掴み取った力だ。もっと自分に誇りを持っていい。それに、礼ならG−1グランプリで優勝してから受け取るよ」
「へへ、違ぇねぇ!」
剣と槍一郎は笑い合いながら、トレーニングルームを後にした。
◇◇◇
「ところで、みのり達の調子はどうや? 槍ちゃん」
「剣に負けず劣らずの成果を出してるよ。
レミも平均以上に集中力があるから、対戦で早期決着をさせる技術も付けたし。豪樹さんは独自で新しい技の特訓もしてる」
槍一郎は、剣にみのり達のステータスデータを見せた。特訓前のデータを比較してみると、剣だけでなく皆がバランス良くステータスが仕上がっているのが分かる。
「へぇ……レミの奴、パズル以外でも良い成果出てるやないか! 集中力なんか格段にアップしてるぜ」
「確かにそうなんだが、気になるのはみのりちゃんの方だ」
「みのりの……?」
槍一郎はみのりのデータを指し示した。
安定したステータスグラフの中で、一際突き抜けた項目が目を引く。
「良く見てみろ。『ハート』の部分だけ、桁外れに数値が高い。僕や剣の比じゃない。オールスターズの中でダントツのトップだ!」
9つのプレイヤーステータスの中で、『ハート』はゲームに対する集中力や精神力を表している。
他のメンバーと比べて、経験も技術も平均的な彼女だが、ただ一つ誰よりも長けているもの――それは、純粋な心。
そして、ゲームをこよなく愛し、誰よりもありのままに楽しんでいるのも、みのりだった。
そのピュアな感情こそが、剣や槍一郎のような強豪プレイヤーとは違った『強さ』の源泉になっているのではないか……と、剣は直感していた。
「……槍ちゃん、みのりのことは大会の後もじっくり見ていこう。もしかしたら、とんでもない大器晩成型かもしれへんで」
「そうだな。ここで焦ることでも無いだろう。見守るのもチームの役目だ」
「そゆこと!!」
「剣く~ん!」
遠くからみのりの呼ぶ声が聞こえた。レミや豪樹も一緒だ。
「槍くんと何か話してたの?」
みのりは無邪気な笑顔で、核心を突くような質問を投げかけてきた。
「うんにゃ。みのりも皆もごっつ強なったなって、槍ちゃんと褒め合ってたんや! な? 槍ちゃん」
「そういうこと。今の調子なら、さらなる伸びしろが期待できるよ」
槍一郎も剣のアドリブに合わせて相槌を打つ。
「そうなのよー! 豪樹さんのおかげで、新しい戦法も身についたし!」
「レミちゃんも素直なえぇ子やからな! 指導のしがいがあったっちゅーもんや!」
以前は豪樹に怯えていたレミも、今ではすっかり打ち解けていた。
「私も、ちょっとは強くなれたのかな? 皆よりはまだ弱いけど……」
「みのり……?」
ご機嫌なレミとは対照的に、みのりが自分の成長に実感を抱けていないことに、剣は気づいた。
「なぁ、俺が言うのもなんやけどさ。みのりには『強い』とか『弱い』っていう言葉は似合わないかもしれへんな。何というか……『優しい』ってのが一番合う気がするわ」
「優しい……?」
「今ははっきり言えへんが、強いだけが最強のゲーム戦士やないことは俺にも分かる。
俺は誰にでも優しく出来るみのりの純粋な心が、オールスターズに必要じゃないかって思うねん。……みのり的にはどうや?」
(優しさか………)
みのりの心のなかにはまだモヤモヤがあったが、何か筋のようなものは伝わった。
「……そうね。私にも私だけの力があるのなら、『優しさ』で頑張ってみるわ!」
「そうや! 優しさも立派な武器になるんやで、みのりちゃん!」
豪樹も力強く頷く。
「――どうやら、皆それぞれの力を得たみたいだね。それじゃ、次の段階に入ろう!」
最後に槍一郎がメンバーに発破をかけた。
「ゲームワールドに入り、実戦を通じて強くなった感覚を掴むんだ。そして最後には――テロリスト集団『ブラックヘロン』の尻尾を掴むぞ!」
槍一郎の一言に、全員の表情が引き締まる。
宿敵の名を前に、彼らの胸中には二つの感情が渦巻いていた。
――『不安』、そして『怒り』が……!




