第9話④~テトリス突破・ブラックボックス流~
休憩を終えた三人は再び工場の中に入り、テトリスエリアへ向かった。
「―――えぇか? 俺が教えた戦略を、まずはテトリスのレベルが低いうちにマスターするんや」
「そのまま本番でやっちゃうの?」
「その方が体に染み込むだろ。それとレベルが上がりゃ、ムズぅなって戦略もやり辛くなるしな。その時ゃまた俺がフォローしたる」
剣はレミのプレイを見守るコーチポジション。その横にはピュアに応援する後見人役に打って出た。
「レミちゃん大丈夫? 声掛けられると気が散るんじゃない?」みのりはレミに心配の一声。
「落ちるのが遅い時なら大丈夫。静かにしたいときにはこっちから言うわ」
等とみのりを気遣いつつ、マイペースを一貫するプレイを宣言するレミ。それを聞いてみのりは一安心。
「……よし、準備は良いか?」
「――OK! いつでもいける!!」
剣の一声に、レミの覚悟で返す。レミの片手には100円ワンコイン、それを指で弾いて投入口にストンと入る。
強者ムーブ漂う演出に筐体も反応したか。スピーカーから奏でるゲームサラウンド音が、スタートボタンを押すと共に響き渡った!
「ゲームスタート!!」
テトリスのスタートはロシア民謡のトロイカの音楽と共に始まる。電子音からでも寒さが伝わる哀調から、雪の代わりに無機質なテトリミノが降り注ぐ。
高所からテトリミノを素早く落とすとその分スコア加算されるが、長期戦が予想される100万点スコアチャレンジで焦ることは無いだろう。
「とりあえず、まずは自己流でテトリス消しやってみて」
剣は横から指示し、レミは何も言わずに頷いて了解した。
するとどうだ。積み木のように細やかに綺麗に四段積み重ねて残すは縦四段直列!!
ブロックは若干残ったが、僅か7秒で四段消滅、テトリス消し!!
「やっぱり早い……!!」
みのりはこの早業に思わず溜息。
「あんまり焦んなよ。ゲームは始まったばかりや」
「分かってる!」
レミは画面に集中しながら応答した。
◇◇◇
――3分後。
テトリスレベルも徐々に上がる中、レミの積み重ねた段に、先程難しいと語っていたT型の空白が、入れづらい隙間を作って出来上がっている。
「……そろそろやるぞ。戦略その1!」
「よーし!!」
そう言うとレミは、スティックレバーを動かさずニュートラルに。落ちるスピードに合わせてゆっくりT字隙間にT字テトリミノを入れようとする。
まずはT字テトリミノを左回転させ『T』から『ト』の形で入れる。
そして隙間に入れるテトリミノが、地に付いた瞬間――!!
「―――今や!!」
剣の号令と共にレミはテトリミノを回転させる!
すると、無理矢理捩じ込むようにすっぽりと隙間T字にテトリミノが入った!! ダブル消し確定だ!!
「出来たッッ!!!」
「よしッッ、これが戦略その1!『T―SPIN』や!!」
★【T‐SPIN―ティースピン―】
テトリミノをそのまま落としただけでは入らないような隙間に、テトリミノを落としてから回転させ、うまくねじ込むテクニック(通称「回転入れ」)を、T字形のテトリミノで行うことを指す。
T-SPINと同時にラインを揃えると「T-SPIN Single(1列)」「T-SPIN Double(2列)」となり通常よりも高い得点が得られる。
―G-バイブル『テトリス努力積み重ね攻略法』より引用―
「そういう事だったのね! 落ちたテトリミノが完全に落ちて、固定される時間を利用して無理やり入れる!
さっき貴方が言ってた『タイムラグを利用する』意味がわかったわ!!」
みのりのアドバイスが役立った! そう思うと彼女も照れている。
「おおっと、よそ見するなよ。まだ気を緩む時ちゃうま」
「あっ、いけない」
◇◇◇
―――更に10分後。
さっきより格段にテトリミノが落ちる速度が速くなったが、それでもレミは冷静に対処していく。
ぶっつけ本番でやった『T-SPIN』を、この後も箇所で何度も見せていった。
(……やっぱりアイツはパズルに天性の才能がある。俺でも分かる。無理矢理だが、本番でやらせたT-SPINを直ぐに自分のものにしやがった! これがブラックボックスの成せる技か……!?)
剣はレミのファインプレイに武者震いをしながら、その強さを実感した。
しかし、レベルが上がり落ちる速度が上がると共にレミの焦りが、剣とみのりにも伝わった。
「剣くん、テトリミノの積み方が乱れてきてるよ」
「俺もそう思うてた! レミ、一回落ち着いて体制立て直せ! 戦略その2! 『ハーフピラミッド戦法』の用意だ!!」
(――『ハーフピラミッド戦法』!!)
レミは無言ながら剣の指示に行動で示す。積もったテトリミノを集中して、一段一段ずつ消したあと即座に左側にテトリミノを寄せ落とし、ピラミッドを右半分残した三角形の型に積み重ねた。
そして段の少ない所から四角く積めていく。空白は若干広げて2マス分、穴のように空いている!!
上段ギリギリまで積み重なった!!
「よしっ! 一気に行けェェェェ!!」
と剣が言うと一気にレミは右にテトリミノを寄せてシングル、ダブルと徐々に消していった!!
しかも2マス分の空白で、どんなテトリミノでも入る為止めどなく消していく!!
「これが戦略その2、『ハーフピラミッド戦法』!
左側にピラミッドを半分にしたような三角形を作るように積み上げて、2マス分の空白を作った後一気に段を下げる戦法や!!」
「でも何で左側なの?」
みのりは剣が提案した戦法に疑問を持っていた。
「落ちてきたテトリミノをスムーズに落とすには、人間の感覚から右側が一番やり易いんや。
右に待機していれば変な位置にテトリミノを置いても、最低限カバー出来るって訳」
「成る程!」
「二人とも、こっから静かに見てて! 集中するわ!!」
「おっと、チャレンジャーの指示が入ったで」
「静かに見守りましょ」
レミも本気モードに入った。剣達は潔く無言でレミの奮闘を見守る。
――100万点スコアまで、残り30万点!!




