第9話③~何のためのゲーム~
―――10分後。
剣とみのりが、テトリス日間ランキングのトッププレイヤー・畠田レミのプレイを見ていると、剣はあることに気づいた。
(……やっぱりレミのセンスの源は勘やな。
途切れない集中力と空間認知力が継続の助けになってる反面、大それたテクニックはなく、工夫もなかった。やり方は知ってるけど本質知らず。【ブラックボックス】って所か……)
ブラックボックス、即ち『中身の分からない箱』。
レミの脳内に宿る暗箱が起動し、テトリスを攻略していく。ところが、そのブラックボックスの集中が尻切れトンボのように途切れ、ゲームオーバーの音が鳴り響く。
「……あれぇ~? おかしいな、さっきから調子が上がらない……」
勿論剣達が邪魔した訳では無いが、レミのスコアは845360点。前回から減点された不調である。
「さっきからずっとプレイしていたから、集中力が切れたんや。レミ、一旦休憩しようや」
「工場の外に売店があったわ。あそこでお茶でもしましょうよ!」
「え、うん……」
工場の近くに売店があり、さらにティータイムというのも不釣り合いな雰囲気だが、剣たちはレミを連れて一旦パズル工場を離れた。
剣は売店で買ってきた、チョコレートシロップたっぷりのパフェをレミに手渡した。
「はいよ、俺らからのおごり!」
「え!? 良いの?」
レミは戸惑っていた。いくら同年代の学生とはいえども、見ず知らずの人に奢って貰うとなると流石に遠慮する。
「真剣にテトリスしてるレミちゃん見てたら、応援したくなっちゃって!」
「俺等の気まぐれやと思って食べな。甘いものは頭の休憩に良いんやで」
「わぁ、ありがとう~! あたしチョコレートパフェ大好きなの!!」
と言うとレミは嬉しそうにパフェを頬張った。
「―――昔からやってるの? テトリス」
みのりはレミに興味津々で質問する。
「テトリスというより、パズルゲームそのものが大好きなの。
普通の人には難しそうなパズルを、自分の力で解いていくのがすごく楽しくて!
このゲームワールドでパズルができるって知ってから、ずっとパズルばかりやってるわ」
ゲームへの想いは人それぞれ。レミのパズルゲームに対する好奇心が、知らない間に驚異的なセンスを生み出しているのだ。
「それに……ゲーム上手くなったら、友達出来るかなって思って」
レミは急に浮かない顔をしながら俯いた。
「……どういうことや?」
剣が問いかけると、レミはぽつりぽつりと話し始めた。
「―――あたし、中学の時に結構いじめられててね。
親友って呼べる人も居ないし、不登校にはならなかったけど、あたしにも誇れるものが欲しいと思って……!」
「「………………」」
レミの目から、うっすらと涙が溢れ始めた。
言葉にせずとも、そのいじめが悲痛なものであることを、剣とみのりは真摯に受け止めた。
「………ほんで、そいつらを見返したいと思ってゲームしてんのか?」
剣は一転して真剣な表情になって、レミの心情を伺った。
「そんなんじゃないの! 私は自分の極限を越えたい!! ――自分だってやれば出来るって事を、ゲームを通じて証明したいの!!!」
(…………その時点で圧勝やがな。いじめっ子野郎相手にゃ……!)
この本音を貫いたレミの答えに、剣の魂は何か惹かれるものを感じた……!
「……よし! じゃあ俺も手伝ってやるよ。レミの『スコア100万取ったるわ計画』!!」
「本当!? でもそんな計画名じゃないわよ! 『スコア100万も良いけど百万円は欲しいわ計画』よ!」
ネーミングはどーでもいいでしょうに。
「まあ、それはええとして。レミはさ、テトリスやってて歯がゆかったことはあるか?」
「歯がゆかったこと? んー、ラインを積んでる時にT字に穴が開いてて、T字テトリミノに入れられないことかな?」
「成る程ね。ところで、みのりはレミのテトリス見ててどう思った?」
「私は……最後まで諦めないで欲しいことかな」
「どーゆーこと?」
「テトリミノが完全に下まで落ちてから固定されるまでのタイムラグを利用すれば、もっと粘れるんじゃないかなって」
みのりは時々核心を突いた意見を言う。剣もそれを理解していた。
「せやな。レミは本能の直感でテトリスをしてる所がある。せっかく人並み以上の集中力があるのにもったいない。
――ここは一つ、戦略を立てよう! 俺たちが絶対、100万点取らせてやる!」
「戦略―――!?」




